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2020.12.20

『明治開化 新十郎探偵帖』 第2回「死神人力車」

 豪商・神田の屋敷に人力車で届けられた大きな行李。その中には神田の妻・ヒサの死体が入っていた。その日ヒサが浅草の芝居小屋・飛龍座を訪れていたことから、飛龍座の座付作家が逮捕されたものの、今度は人力車に乗ったまま行方不明となった神田の死体が見つかり、死神人力車の噂が流れることに……

 第2話の今回は、原作『明治開化 安吾捕物帖』の第4話『ああ無情』をベースとした物語であります。

 前回、加納邸の仮装舞踏会にも参加していた豪商の神田――その屋敷に、人力車によって大きな行李が届けられたのがことの起こり。開けてみればその中に入っていたのは何と絞殺された神田の妻のヒサ!
 ヒサは昼間に浅草の芝居小屋・飛龍座で女奇術師・夢の助の舞台を見ていたのが目撃された後、女中のヤスの目をくらまして消えたことから、ヒサの情夫であった飛龍座の座付作家が逮捕されるのですが――彼が犯行を否認する中、今度は警察からと称する人力車に乗ったまま行方不明になった神田が、やはり絞殺体となって発見されたのであります。

 どちらの事件も人力車が犯行に使われたことから町中に流れる「死神人力車」の噂。人力車を使う者が減っていく中、神田を乗せた謎の車夫に人力車を奪われた男から、ある証言を引き出した新十郎は……


 豪商の妻の死体が詰められた行李が人力車で屋敷に届けられ、そしてその後行方不明となった豪商本人も死体となって発見されるという事件の内容、事件に浅草の芝居小屋が深く関わるという点は原作そのままながら、細部は前回以上にアレンジが加えられた今回。
 そもそも被害者自体、原作では別の人間だったのが、こちらでは前回登場した神田となっているのがまず面白い点であります(その関係で、梨江から神田とヒサの情報が語られるというのも巧い)。

 何よりも大きな違いの一つは、人力車が大きくクローズアップされている点でしょう。原作では最初の犯行に使われたに過ぎなかった人力車――それがこちらでは次の犯行にも登場し、そのために人力車そのものが人々の恐怖の象徴となるほどの影響を与えるのですから。
 いささか大げさに思えるほどのその騒動が、実は――というのはこのドラマ版ならではの要素で、なるほどこれはこれで、前回同様にこのドラマの方向性を示すものとして、大いに面白いアレンジだと思います。
(が、今回の犯人が何故そこまでのことをするに至ったかという点は説得力が薄かった、というのも正直な印象であります)

 そしてもう一つ大きな違いは犯人の背景であります。原作の方は、実は犯人と被害者、さらには関係者たちには、悪因縁とも言いたくなるような、意外で、まさに「ああ無情」というべき繋りがあったのですが――本作はそこが随分こじんまりとした、ドメスティックなものとなってしまったなあ、という印象があります。
 原作では、彼らがある意味新十郎の裏返しの存在となっている点が興味深かったのですが……(まあそこは原作でも突っ込んではいないのですが)

 この辺り、嫌らしい言い方をすれば、前回同様普通の時代劇的な方向に舵を切ったという印象は否めないのですが――それで今回面白くなかったかといえばそういうわけではもちろんなく、出演者の好演(ヒサ役の青木さやかはやりすぎ感があるものの、夢の助役の真飛聖は凛とした存在感が素晴らしい)や背景となるこの時代の風物の丁寧な描写もあって、十二分に楽しめるエピソードになっていたと感じます。


 ただ一つ、原作では下手の横好き的な安楽椅子探偵だった勝海舟が、今回は早々にそうした要素は控えめになり、むしろ「美しい真実」のために裏で手を回す立場となったのは、こう、なんというか……

 そんなこともあって(?)同じエピソードを原作としている『UN-GO』の「無情のうた」(これがまた驚くほどの名作)も是非ご覧いただきたい――と思ってしまうのです。


関連サイト
公式サイト

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「UN-GO」 第02話「無情のうた」

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