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2020.12.10

『半妖の夜叉姫』 第10話「金と銀の虹色真珠」

 近隣を騒がす妖怪退治を引き受けた夜叉姫たちの前に現れた妖怪、それは生まれた時に二人が一体で生まれ、どちらかが相手を殺す定めを持つ禍一族の金禍と銀禍だった。二人にそれぞれの虹色真珠を奪われ、後を追うとわとせつなだが、たどり着いた先では、兄弟と一族の頭領・女禍が激しく争っていて……

 前回同様、三人娘の妖怪退治物語という趣向の今回。相手になるのも四凶ではないため、本筋とはあまり関わらないように見える内容ですが――少しだけ、せつなに変化の兆しが現れることとなります。

 今回も屍屋の依頼を受けて、妖怪退治に向かった三人。その先で彼女たちが目撃したのは、空からやって来て、炎と雷で激しく争い、周囲に多大な被害を出すはた迷惑な二体の妖怪――なのですが、蛇に似たその体は尾に近づくにつれてしっかりと絡み合い、一体となっていたのであります。
 これこそは、生まれた時から二頭で生まれ、どちらかがどちらかを殺し、食らって成長するという凄惨な定めを持つ禍一族の金禍と銀禍――互いに相手を殺しきれぬまま成長した二人は、こうして今も激しい死闘を繰り広げていたのであります。

 しかし、いきなりの兄弟喧嘩に驚くとわとせつなが、かつて一族の宝だったという(!)金色真珠と銀色真珠を持っていることを知った二人は一時撤退、とわとせつなが油断している隙に彼女たちに取り憑き、その体で戦い始めたのであります。
 最悪の事態は、せつなが仕込んでおいた妖怪避けの薬で避けられたものの、結局真珠は奪われてしまった二人。一方、奪った方は意気揚々として一族の長・女禍(?ではなく禍)に真珠を献上しようとするのですが、女禍は真珠だけでなく、二人の生命力ごと奪おうとするではありませんか。囚われの身となり、女王様の触手責めの餌食となる弟を前に、金禍は……


 というわけで、金禍は弟のために女禍に反抗、しかし歯が立たず追い詰められたところにとわとせつなが到着し(もろはは雑に置き去り)、二人は金禍と思わぬ同盟を組んで、女禍に立ち向かうことに――と、定番通りの展開となるのですが、ここで引き離されながらも互いを求めて手を伸ばす兄と弟に、とわとせつなが自分たちそれぞれの姿を重ね合わせるのが、今回のハイライトであります。

 幼い頃は二人で身を寄せ合って暮らしながらも、山火事がきっかけで引き離されたとわとせつな。その時に妹の手を話してしまったことを今に至るまでのトラウマとして抱えているとわは当然としても、過去の記憶を失っているせつなが――? と思いきや、ここでようやく彼女がかつての別れの模様を朧げにでも思い出したというのは、大きな前進と言えるかもしれません。
(とはいえ、その時の模様は再会後にとわが散々語っているのではないかという気がするので、いまさらその時別れた相手がとわだった、とハッと気付くのも違和感がありますが――とわが罪悪感で語っていなかったか、せつなが聞き流していたか?)

 何はともあれ、思うところあって自分一人で女禍の相手を買って出たせつなは、金禍の火炎バフの力を借りて圧勝。しかしその間に既に深手を負っていた銀禍と、弟を庇ってやはり深手を負った金禍は、真珠を残して息を引き取り――という結末を迎えることとなります。金禍と銀禍、それなりに面白い設定のキャラだけに、二人それぞれに生き残ってほしいところでしたが――ちょっともったいないようにも思います。

 ちなみに上記のとおりかつて女禍が手にしていたという金色真珠と銀色真珠ですが、女禍の台詞によれば、おそらく殺生丸に奪われたのでしょう。何かしら理由があるのかもしれませんが、殺生丸の場合、あまり考えていないこともあり得るのが……
 また、明言はされていないものの、そのネーミングや四凶同様虹色真珠を持っていたことから、大陸から日本に渡ってきたものと思われる女禍。ただ(これは四凶もそうですが)、ほとんど創世神である元ネタに比べるとあまりにもその力は小さく――『犬夜叉』が既存の神話伝説をほとんど用いず、作品自身の物語世界を作り出していたことも考えると、ちょっとひっかかるところがないでもありません。


関連サイト
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