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2020.12.17

『半妖の夜叉姫』 第11話「人喰い沼の呪い」

 周囲の人も獣も鳥も犠牲になっているという人喰い沼。そこに潜む何者かを退治に向かったとわとせつなは、両親が沼の犠牲になっている兄妹と知り合う。沼に毒蛟という妖怪が棲み着いていると聞かされ、退治に向かう二人だが、その前に現れたのは毒蛟だけではなかった……

 冒頭、野外にバイオリンやカセットコンロを持ち込んでピクニックとしゃれ込む三人娘ですが、ホットケーキを喉に詰めそうになったもろはが水を求めて向かった先は、見るからにヤバそうな濁った水の沼。沼に向かうところを辛うじてとわに止められたもろはですが、しかし沼の水が盛り上がり、上空を飛ぶ鳥を呑み込む姿を目の当たりにすることに……

 と、久々に登場した琥珀(普通の着物なのが新鮮)と翡翠から、あの沼が人喰い沼と聞かされたとわとせつな。ピクニックに行けるような近さにそんな魔所があるとは、さすが戦国時代恐ろしい――というのはともかく、さっそく退治に向かった二人は、そこで沼に向かおうとする幼い兄と、止めようとする妹を目撃することになります。
 前回から何となく肉親の愛に敏感になっているせつなは兄を止めるのですが――話を聞けば、この近くに住んでいる二人は、沼に親を奪われているとのこと。琵琶が好きだった父は、沼の近くで奏でている時に呑まれたようですが――それは絶対父親が悪い、などとはもちろん言わずに、とわとせつなは、沼に潜むという妖怪・毒蛟退治に向かうことになります。

 しかしその名の通り毒を吐く毒蛟の毒を喰らい、二人ともダウン――とはならず、何故かとわは平気。それではとわが攻撃を、と思えば、次の瞬間、竜巻のように盛り上がった沼の水が毒蛟を覆ったではありませんか。これこそは真の沼の主・沼渡――そして沼渡の放つ水の毒気に、今度はとわがダウンしてせつなは平気という状況になります。
 要するに、姉妹でそれぞれ別々の毒の耐性を持っているようなのですが――それならばとわが毒蛟を、せつなが沼渡を攻撃すれば良いと思いますが、水の体の沼渡にはせつなも苦戦を強いられます。

 と、そこで彼女が見つけたのは、先に兄妹から聞いていた、かつて沼の妖怪を封じるために植えられたという草の群生。どちらの毒の耐性もないために早々にそこでダウンしていたもろはもお構いなしに草に攻撃をぶち込んだせつなは、そのまま草を巻き込んだ竜巻で沼渡を消滅させ、残った毒蛟もとわの敵ではないのでした。


 と、ほとんど全く本筋に絡まない今回のエピソード。強いて言えば、ほんの少し記憶が残ったっぽいせつなが、兄妹を前にそれっぽく振る舞う辺りが前回までの流れを感じさせるくらいで、ストーリー的にも絵的にもローカロリーの印象でした。

 ただ、ラストで妖怪を倒して「イエーイ」ととわともろはが脳天気にハイタッチした後に、とわから同様に振られたせつなが思わず途中まで返しかけたシーンは非常に楽しく、まあこの三人は何だかんだでバランスがいいし、わちゃわちゃ楽しそうにしていて良いなあと再確認いたしました。
(今回はほとんど活躍しなかったもろはも、ギャグ&やられ役(と冥加の解説の聞き手)担当という貴重な役回りがあるわけで……)


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