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2020.12.05

賀来ゆうじ『地獄楽』第12巻 最後の戦いに「人」を駆り立てる「想い」

 地獄と極楽の渾沌と化した島での死闘もいよいよクライマックス、暴走した神獣・盤古と、死罪人&山田浅ェ門混成チームの死闘がついに決着となります。しかしそこで明らかになるのは恐るべき真実――自分たちの生還どころではなく、本土を、この世界を救うための最後の戦いが始まります。

 瀕死の天仙・朱槿が一体化したことで暴走し、周囲を花に変えながら動き出した神獣・盤古。盤古を倒す唯一の手段――五つの丹田の同時破壊のため、先発上陸組の死罪人と浅ェ門、追加上陸組の浅ェ門は呉越同舟手を組んで五組のチームを編成し、戦いを開始することになります。

 それぞれの丹田を守るクローン天仙たちと戦いつつ、丹田に肉薄する猛者たち。しかし画眉丸と佐切の前には、彼に異常な執着を示す次代の画眉丸・シジャが出現、体内の花が活性化して本領を発揮できない画眉丸を圧倒することに……


 と、画眉丸との殺しあいに拘るヤンデレ・シジャとの死闘も、この巻の冒頭で決着。前巻ラスト、妻が実在すること、そして彼女とのある約束を思い出した画眉丸に既に敵はなく、一時はあれだけ押されたシジャを逆に圧倒することになります。
 正直なところ、自分たちの命はおろか人類の存亡までかかったこの局面で暴走するシジャには辟易していたところに、彼の秘めた(読者にはほとんど秘めていませんでしたが)想いが、意外な形で示される結末には、言葉を失いました。

 ここで、さらにこの先でも示されるのは、画眉丸たちを突き動かしてきた様々な「想い」の形であります。
 利己主義の塊のような死罪人たちの、あるいは武士の掟を体現するような浅ェ門たちの――それぞれの中に微かに、しかし確かに存在してきた「想い」。その名前を明言するのは野暮というものでしょうが――しかし、それこそが獣や化物と人間を分かつもの、というのは間違いないでしょう。

 この島で生き残ってきた中で、あるいは最もそうした存在に近く感じられた男が最期に見せた行動もまた、その「想い」を体現するものであったのですから。


 しかし同時にその「想い」は――シジャがそうであったように――時に「人」を暴走させ、他者を顧みない狂気とも呼べるような行動に走らせることもあります。

 盤古との戦いが決着し、全てが終わったかに見えたとき、生き残りの天仙・桂花が語る真実――それは最初の天仙の一人であり、天仙のリーダーであった蓮の恐るべき真意であります。
 この島を魔境に変え、人間たちを実験台にしてまで仙丹を生み出そうとしてきた蓮の真の目的とは、そしてその正体とは……。いやはや○○が既に○○○いるというのは予想していましたが、まさか蓮が、とは考えもしませんでした。

 とはいえ、「人」として蓮が抱くこの「想い」は、世界を滅ぼしかねないものであります。そしてそれを阻もうにも、真の力を発揮した蓮の前には、浅ェ門最強というべき殊現の力(蓮すら一時はたじろがせたほどのある意味究極のマイペースぶりは凄まじかったのですが)すら上回るのであります。
 不吉な予言まで飛び出して、全てが滅びに向かうとしか思えぬ世界に未来はあるのか?


 しかし、人間は決して一人ではありません。たとえ一人一人では及ばなくても、その力を合わせれば、その力を受け継いでいけば――猛者たちが集い、ついに最後の最後の戦いが始まる、という最高に盛り上がる場面で、次巻に続くことになります。

(が、この後の展開は……)


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