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2020.12.25

野田サトル『ゴールデンカムイ』第24巻 海賊の理想 そして全ては札幌を目指す

 アニメ第三期も完結し、そして原作の方もクライマックスに突入した感のある『ゴールデンカムイ』。刺青人皮も残すところあと4枚――脱獄囚の中でも屈指の大物・海賊房太郎、そして謎の連続猟奇殺人鬼を巡り、各勢力の思惑が入り乱れるのですが……

 前巻のラストの圧巻のドラマに続く、一つの別れから始まるこの第24巻。この巻の物語は、石狩川を下る蒸気船と、連続殺人鬼が跳梁する札幌を中心に、それぞれ展開していくことになります。

 雨竜川で対決した平太師匠が残した砂金を手がかりに、刺青脱獄囚の一人・海賊房太郎を追う杉元一行。外輪式蒸気船で移動中に、偶然船の金品を狙ってきた房太郎一味と遭遇した杉元は、成り行きから派手な立ち回りを繰り広げることになります。
 房太郎と顔見知りの白石の縁もあり、一時は丸く収まったかに見えた両者ですが、杉元が自分を追っていたことを某太郎が悟ったことで乱戦再開。その中で房太郎のホームグラウンドに引きずり込まれた杉元は、苦戦を強いられることに……(ここで救援に現れた白石が――というシーンには爆笑)。

 しかしこの海賊房太郎、これまでのひたすら逃げ隠れしていたり、あるいは欲望のままに暴走していた脱獄囚たちとは異なり、「自分の国を作る」という大きな理想を持っている――と語る男。その言葉がどこまで真実かはまだわかりませんが、むしろ土方に近い立場の人物といえるでしょう。

 そしてその根幹にあるのが、かつて疱瘡で家族と故郷を失った過去にあるという点では、家族を結核で失った杉元と極めて親しい存在であります。
 繰り返しになりますが、彼の言葉がどこまで真実かは別として、金塊争奪戦に加わる確たる理由を持つ房太郎は、争奪戦に加わる理由が揺らいでいるようにも感じられる杉元の在り方を、もう一度問い直す役割もあるのではないか――そうも感じます。


 そしてこの巻の終盤では、鶴見から先遣隊の命を受けた菊田と宇佐美の異色コンビが連続娼婦殺人事件の調査に当たることになります。が、そこで宇佐美が繰り広げる捜査方法が、こう、とんでもなさすぎるというか――一種のプロファイリングといえばその通りなのですが、まさに菊田の言葉通り、とんだ○○探偵というしかありません。

 それにしても、前巻で我々をドン引きさせた宇佐美の台詞――彼の異常性を表すものとのみ思ったそれが、まさか本当に役立つとは。
 そしてその直後に出現した殺人鬼とのバトルもそれに輪をかけたナニっぷりで、久々にもうやだこの漫画という感じというか、またアニメになった時に地上波で放送できないエピソードができたというか……

 などと思っていれば、その直後に炸裂するのは、異常に個性派揃いの鶴見一派の中では地味だった、菊田のとんでもない秘密。正直なところ、物語もこの時点で何故登場することになったのか、という印象もあったのですが――いやはや、ここまでやるとは。
 そんな中で再会した有古との「絆」もグッとくるところですが、何はともあれ、またまた物語の先が読めなくなってきました。

 そしてもう一人、子供たちの行方不明事件の犯人と目される謎の飴売りの存在も見え隠れし、ほとんど全ての勢力が札幌に向かうこととなった本作。札幌で待つものは何か――各勢力が入り乱れた決戦待ったなしであります


 しかし尾形、変装が凄すぎて最後の最後まで誰だかわからなかった……(そしてその内容が異常に皮肉が効いているのがまた)


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