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2020.12.14

富士原昌幸『スーパーロボット大戦OGサーガ 龍虎王伝奇』 伝説の超機人、「現実」世界に吼える

 2003年の雑誌連載開始から幾度かの中断を経て、実に14年後に描き下ろしを含めて完結した、中華伝奇ロボットアクション漫画――スーパーロボット大戦シリーズの主人公機の一つである龍虎王の過去の戦いを描くスピンオフ作品であります。

 日本と清国の緊張が高まる明治時代、発掘が進められているという超機人の調査を命じられ、大陸に渡った大日本帝国陸軍情報部の大尉・稲郷隆馬。古代中国で作られた機械人形という、ほとんどホラ話としか思えぬ超機人ですが――しかし確かに実在し、大英帝国のグリムズ男爵の手によって発掘が進められていたのでした。
 超機人が眠る蚩尤塚を代々守ってきた一族の末裔・文麗を男爵の手から救い出した隆馬ですが、男爵は発掘した二体の超機人・雀王機と武王機を起動。窮地に陥った二人の前に、地中から龍王機と虎王機が出現――これに乗り込んだ二人は、二身合体した龍虎王・虎龍王を駆り、伝説の四神同士の戦いを繰り広げることになります。

 辛くもこの戦いに勝利した隆馬と文麗ですが、その前に現れたのは、世界中の紛争の背後に暗躍する組織・バラルのエージェント・孫光龍。
 伝説の妖魔たちを象った妖機人たちを配下に持ち、さらに超機人の中でも最上位に位置する四霊の一体・応龍皇を操る光龍との対峙の末に、二人はかつて地上で繰り広げられた機人大戦の存在を知るのですが……

 という第一部に続き、時は流れて第二部の舞台となるのは第二次世界大戦前夜の昭和初期――バラルに一族を滅ぼされた隆馬と文麗の孫・飛麗は、バラルと戦うために結成され、グリムズ家や名門ブランシュタイン家も参加する超国家組織・オーダーと出会い、その一員として潜水母艦・魁龍に搭乗することになります。

 オーダーの擁する巨大ロボットたる鋼機人・轟龍のパイロットとなり、謎めいた艦長の下、仲間たちとともに、次々と襲い来るバラルの妖機人たちと戦い続ける飛麗。
 戦いの果てに明らかになるオーダーとバラルの目的――そしてバラル四仙の一人・泰北が操る四罪の超機人、さらに再び現れた孫光龍が潜む四霊の一体にしてバラルの拠点・霊亀皇との決戦に臨む飛麗と仲間たちの運命は……


 というわけで、数十年に及ぶ稲郷家と蚩尤塚の一族、さらにはグリムズ家やブランシュタイン家と、バラルとの戦いを描いた本作。内容的にはゲームの『スーパーロボット大戦α』シリーズ及び『スーパーロボット大戦OG』シリーズに登場した龍虎王の由来を語る物語であり、そしてゲームに登場したキャラクターの先祖たちの姿を描く物語であります。
 その意味ではまさしくゲームのスピンオフなのですが、しかしここで登場する超機人たち――古代中国神話に登場する神や妖魔、神獣の類をモチーフとした巨大ロボットたちの存在は実に魅力的で、背景となっている神話の「真実」たる機人大戦の内容も含め、ゲームとは独立した巨大ロボット伝奇として楽しむことも出来ます。

 また、第一部がかなりシンプルなストーリーだったのに対して、第二部はキャラクターの背負う因果因縁が複雑となり、よりユニークな物語が展開。。さらに人が造った超機人というべき鋼機人(四神をモチーフとして四体登場)が、能力的には及ばずながらも、懸命に妖機人たちに挑む姿は、圧倒的な力を誇る龍虎王のバトルとは違った魅力があります。


 その一方で、単行本全3巻というボリューム上の制約もあってか、キャラクター造形は些か掘り下げが少なく、特に飛麗の内面があまり描かれていないのは――終盤の展開を考えても――食い足りないところではあります。
 そして何よりも、本作の特徴の一つである、未来の物語ではなく(その未来に分岐していく)現実世界の過去を舞台にしているにもかかわらず、その点がほとんど設定上に留まり、あまり物語の中で有機的に活かされていなかったのは、個人的には何よりも残念に感じられます。

 もちろん本作はそういう物語ではないことは重々承知ですが、この辺りは大いに勿体ないという印象があります(特に第二部は冒頭以外ほとんど海上で物語が展開してしまうため、現実との距離感が大きく……)。
 結局のところ、面白い部分も大きいけれども勿体ない部分も大きい、古代伝奇としては面白いけれども近代伝奇としては――と個人的には感じることとなった本作。もちろんこういう視点で本作を見ている人間はまずいないわけですが……

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