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2021.01.21

『半妖の夜叉姫』 第15話「月蝕、運命の惜別」

 とわとせつなが生まれた晩、かごめの前に現れた理玖。彼はかつて犬の大将と麒麟丸が破壊した妖霊星が再び地球に迫っていると告げる。一方、麒麟丸の姉・是露は、かつて四魂の玉が麒麟丸を倒すのは人間でも妖怪でもない者と予言したことから、とわたちを狙っていた果たして犬夜叉の、殺生丸の行動は……

 前回、とわとせつなが生まれ育った森を焼いた犯人が判明しましたが、今回判明するのはそれどころではなく、夜叉姫たちの生まれた前後に何が起きたのか、その真実が一気に語られるという超重要回であります。

 とわとせつなが生まれるという晩(ここで、今まで伏せられていたのは何だったのか、というくらいあっさりと、二人の母がやはりりんであったという事実が判明)――お産の場に向かおうとするかごめを呼び止めた理玖。
 彼が語るのは、五百年前に地球に迫った妖霊星の再来――その時、地球に落ちてきた破片は、犬の大将と麒麟丸によって破壊されたというのですが、今は二人はおらず、代わりに殺生丸と犬夜叉に破片を破壊して欲しいとかごめに頼むのでした。

 一方、同じことを麒麟丸の姉であり、かつて犬の大将に袖にされたという因縁のある是露から聞かされた殺生丸。そこから何かを感じ取ったものか、殺生丸は子を産んだばかりのりんに理由も告げず、以前語られたように「剛臆の試し」だと双子を連れ去ってしまうのでした。
 もっともりんの方は、殺生丸と邪見のことを疑うことなく、信じ切っているようですが――さすがに彼女の目は正しく、真実は双子を狙う者から守るため、邪見が作った結界の森の中で二人を育てようとしていたのであります。(まあ、確かに邪見は子供をあやすのが得意そうな声をしている)

 双子を狙う者――それは麒麟丸と是露。眠りについていたはずがいつの間にか起こされた麒麟丸は、かつて四魂の玉から、人間でも妖怪でもなく、時空を超える存在から滅ぼされると予言されていたのであります(消滅した後まで迷惑だな!)。
 そう、妖怪の殺生丸と人間のりんの子であるとわとせつな、そして半妖である犬夜叉と時を超えてきたかごめの子であるもろは――彼女たちと麒麟丸の宿縁は、この時から存在していたのであります。

 その後、犬夜叉と協力して妖霊星の破片を破壊したかと思えば、犬夜叉を襲撃するという麒麟丸に同行する殺生丸。そして殺生丸は犬夜叉から奪った黒真珠――この世とあの世の境に繋がるというの中に犬夜叉とかごめを封じ込るのですが、その直前にかごめは八右衛門にもろはを託して逃がしたのです。
 しかしもろははどこへと思いきや、これが何と妖狼族――鋼牙の元へ! なるほど、『犬夜叉』では戦力外になってフェードアウトしたとはいえやはり実力者、そして何よりもかつてかごめに惚れた彼であれば、娘の育ての親にはうってつけでしょう。もろはの裏表のない性格も、納得であります(そして何よりも、彼の存在が忘れ去られてなかったのが嬉しい)。

 もっともその後、とわとせつなはご存じのとおり(殺生丸黙認の下?)離ればなれになり、もろはは借金まみれになっていたりするわけですが――何はともあれ、物語はここから現在に繋がっていくことになります。


 というわけで、過去の出来事の大半が一気に語られた今回。何よりもこれまでファンを散々やきもきさせてきた犬夜叉とかごめの行方が、ついに語られたわけであります。
 以前、二人に麒麟丸と殺生丸が迫る場面が描かれましたが、真実を見てみれば、まあ殺生丸が結果として二人を守った感はアリアリで、自分の娘たちも何だかんだ言ってちゃんと保護していたことも考えれば、やっぱり殺生丸様は頼りになるなあ、という印象であります。
(そのわりには、森に火をつけるのを黙認していたのはやはり謎ですが――もしかすると麒麟丸を倒すために、あえて娘に時空を超えさせようとしたのではないかしらん)

 もちろん、りんが時代樹の中にいる理由や、その後様子がおかしい麒麟丸、殺生丸が虹色真珠を「是露の涙」と語った理由、そして何よりも理玖の正体など、まだ謎は数々あるのですが――後半戦に向けて、だいぶすっきりしてきたと言えるでしょう。
 が、その一方であまりすっきりしないのは、これらが明かされたのが、理玖から視聴者(?)に対してのみということで――何だか総集編のような形でいきなり語られるのではなく、物語の中でとわやせつなたちが知るような展開にはできなかったのかな、とちょっと不思議に感じます。

 まさか、語り手がいかにも怪しい理玖だけに、フェイクが混ぜられているとまではいかないとは思いますが……


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