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2021.01.07

青木朋『天上恋歌 金の皇女と火の薬師』第2巻 皇女の危機と帝姫の悲哀

 北宋の徽宗皇帝の時代を舞台に、金の皇女と宋の花火職人の恋(?)を描く歴史漫画待望の続巻であります。一時は険悪な関係だった宋の帝姫・円珠とアイラが仲直りしたかに見えたのも束の間、彼女から送られた鉢植えが原因で、集団食中毒を起こしてしまった金の使節団一行。果たして円珠の真意は……

 親善大使として(そして彼女の知らぬところでは宋の皇子・康王との政略結婚のために)宋の都を訪れる途中、花火職人の青年・白凜之に助けられた金の皇女・アイラ。
 凜之に一目惚れしたアイラの行動に振り回される周囲の人々ですが――そんな中で兄とアイラの結婚を快く思わない円珠は、彼女に対して様々な嫌がらせを仕掛けてくるのでした。

 しかし持ち前のバイタリティと明るさでその嫌がらせを軽々と凌いだアイラは円珠を許し、彼女と和解したかに見えたのですが――しかし円珠がアロエと言って贈った鉢植えは実は毒のある水仙。しかも誤ってそれを料理に使ってしまったことで、アイラを除く使節団は食中毒に倒れることに……


 と、思わぬ窮地に陥ってしまったアイラ一行。幸い、医術にも通じた凜之が駆けつけてくれたおかげで皆事なきを得た、と思いきや――この巻の冒頭で展開するのは、何と遼の刺客団との大乱戦であります。
 幸い(?)食中毒は遼の仕業ではなかったものの、しかし何故かこの機に乗じて襲撃してきた刺客の群れに、アイラと凜之たちは大ピンチ。何しろ最も頼りになるアイラの兄・ウジュ(そう、あのウジュ)も食中毒でフラフラなのですから。

 そんな状況でもそれぞれの特技で何とか凌ぐアイラと凜之の姿がちょっと楽しいのですが――しかしそれでも追い詰められて危うし、というところに、これまた歴史に名高いあの人物が! というのもまた盛り上がるところであります(しかもこの漫画ならではのアレンジされたキャラクターなのも愉快)。


 しかし、この事態の行方以上に気になってしまうのは、やはり円珠の真意でしょう。決してこの事態そのものは彼女の意図したところではなかったとはいえ、しかし彼女の仕出かしたことが引き金となったのは間違いのないところであり――しかも、彼女も一度は反省したかに見えたのですから……

 とアイラも読者も首を傾げていたところに、彼女の想いが、そしてその背後にあるものが描かれることになるのですが――これがもう、ただただ納得というか、これを読んだだけで彼女を見る目が変わってしまうという、そんな内容なのには唸らされます。
 そして、そんな彼女に対するアイラのリアクションがまた、グッとくるのであります。正直なところ、ちょっと良い子過ぎるかな、という印象は否めないのですが――それでも彼女の真っ直ぐな姿勢は、がんじがらめの現実を前にした人間にとっての、一つの希望といっては大袈裟でしょうか。


 しかし、そんなアイラにとっても思い通りにならないのが凜之との関係であります。何しろ金の側も宋の側も彼女の恋に大反対――そして何よりも、凜之自身が全く彼女に興味を示していないのですから。

 ところがこの巻の後半では、そんな彼もまた、宋と金、そして遼の三国の間を渦巻く思惑の中に、巻き込まれることとなります。
 周囲に何が起きようとも、相変わらずマイペースで職人としての仕事を続ける凜之。しかしその彼が何よりも愛する火薬の一部が、いつの間にか行方不明になっていることを、彼は気付いてしまったのであります。

 仲間たちとともに調査を始めた彼は、その行方を突き止めたのですが、しかしその背後に思いもよらぬ存在がいたことから、またも彼は危機に陥ることに……
 と、こちらも本人の思惑とは全く無関係に、思わぬ大きな動きの渦中に身を置くことになってしまった凜之。彼のようなタイプにとって、それはアイラに想いを寄せられるのと同じくらい迷惑な話だと思われるのですが――しかしその中でまたもやアイラと関わることになったのは、これはもう運命というものなのでしょう。

 はたしてこの彼の運命がどこに向かうのか(そしてこの巻の途中で描かれた彼への栄転の辞令の真実も含めて)、ある意味アイラの恋の行方以上に気になってしまうのであります。


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