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2021.01.29

『半妖の夜叉姫』 第16話「もろはの刃」

 三年前、師である妖狼族の凱風に課せられた試練を突破しながらも、15両で屍屋に売り飛ばされたもろは。いま再び自分の前に現れ、対決を迫る凱風とただ一人戦うもろはだが、師の力の前に圧倒されるばかり。最後の手段で紅夜叉になろうとするもろはだが、それが二人の秘められた過去を蘇らせて……

 前回、両親の手を離れて妖狼族に預けられたことが判明したもろはですが、その師匠となったのは、妖狼族の凱風――頬に刻まれた三本の傷も勇ましい女傑であります。しかし今回はアバンタイトルで対峙する師弟二人。どうやらこの二人の間には色々とあったようであります。

 というわけで、本編は三年前から始まり、凱風の下で修行を積んできたもろはが、師に命じられて蠱毒の坩堝なる地に向かうことになります。そこで繰り広げられているのは、一人の生贄を巡る五人の兄弟子の争い――ではなく、妖怪(というかほとんど怪獣)たちが最強を目指して殺し合う地獄のような戦い。そこで見事勝ち残ってみせよという師の無茶振りを、何とか機転で突破したもろはですが、出てきてみれば師は待ってはおらず、屍屋で賭け双六に興じていたではありませんか(しかも負けてる)。

 そして師から倶利伽羅丸を譲られた一方で、屍屋に15両で売り飛ばされてしまったもろは。実は師は呪われた鉄鼠の鎧なるアイテムを身に着けており、やがて自分の命を奪うその鎧を外すための金が必要だったのであります(あと、双六の負けた分)。そんな事情があるとも知らず、いきなり売り飛ばされるというハードな目に遭わされたもろはは、凱風とは師弟の縁を切り、それ以来賞金稼ぎとして借金返済の毎日だったのです。

 そしていま、自分の前に再び現れ、戦いを挑んできた(元)師匠に対し、これまでの借りを返す好機とばかりに、とわとせつなの助太刀も断って立ち向かうもろはですが――しかしやはり凱風は強い。実に強い。紅龍波も天空の矢衾も全く通用せず、それどころか懐に飛び込まれて浮かされ、為すすべもなく空中コンボを叩き込まれる始末であります。
 ならば最後の手段とばかりに紅を塗り、国崩しの紅夜叉になろうとするもろはですが、しかし凱風はそれを制止します。実は紅夜叉の状態は、もろはの父である犬夜叉の妖怪化と同じ状態――身体に流れる妖怪の血の顕現であり、使いすぎれば自我を失ってただ暴走を繰り広げるだけになってしまう、いわば怒りのスーパーモードだったのであります。

 まだもろはが子供の頃、妖狼族の宿敵・極楽鳥(そういえばいましたね……)の群れに襲われた際、紅夜叉となったものの見境がなくなり、凱風の頬を傷つけていたもろは――そう、凱風の頬の傷は、実はもろはによるものだったのであります。そしてそれだけでなく鉄鼠の鎧も、極楽鳥たちを前に窮地に陥った凱風が、やむなく(あっさり口車に乗ったとも言う)纏ったもの――そしてその鉄鼠の鎧を外す鍵を四凶・渾沌に奪われ、彼女はもろはとの戦いを強いられていたのです。
 そして最後の試練として、自らの最大の拳である奥義・凱風快晴を放つ凱風。それをもろははそれを紅龍波で相殺、見事に新必殺技・紅の爆流破を完成させるのですが――凱風は師弟の殺し合いを見物に現れた渾沌もろともこれを受けようとするも逃げられ、ただ一人、技の直撃を食らって命を落とすのでした。

 かくて師を失い、再び天涯孤独の身となったもろは。いや、そんな彼女にも、いまは仲間たちが――かたや厳しく、かたや優しくそれぞれの言葉で彼女を励ますとわとせつなが確かにそ傍らにいることを描き、今回は幕となります。


 謎といえば謎だったもろはの借金生活の真実が、定番中の定番ともいえる師弟対決と絡めて描かれた今回。その師である凱風は、前回チラッと登場した以外、ほとんど唐突に現れたキャラクターでしたが、なかなかの強キャラである上に、決して完全な存在ではない――というよりかなりダメ妖怪的な描写でもあったのが、かえって味のある展開になっていたと感じます。

 ただ、頬の傷の因縁など、もう少し溜めて描いた方がもりあがったことは間違いない話で、やはり今回登場して今回退場というのは勿体なさすぎた――という印象は否めません。退場の仕方が、なんだかあまり格好良くない上に後味が悪いのも……


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