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2021.01.04

『半妖の夜叉姫』 第13話「戦国おいしい法師」

 徳の高い僧侶や神主を襲っては喰らう妖怪・饕餮の出現に、とわ・せつな・翡翠は、ある法師の護衛を琥珀から頼まれる。その法師とは翡翠の父・弥勒――自分の無力さを痛感して千日行に入っている父に対し、戦いから逃げていると苛立ちを隠せない翡翠だが、弥勒を狙って饕餮が現れ……

 1クール目ラストの回となった今回は、これまでなかなか正面切って登場してこなかった親世代の一番手として弥勒が登場するエピソードであります。風穴を武器に、犬夜叉やかごめ、そして珊瑚とともに戦い抜いた彼も、今や人の親ですが……

 各地に出没しては特の高い聖職者を襲い、食らう巨大な妖怪・饕餮。四凶の一人であり虹色真珠を持つ饕餮に対し、琥珀ら妖怪退治屋は、手分けして聖職者たちの護衛に当たることになります。そんな中で、翡翠が担当することになったのは、実の父である弥勒――そんな彼にくっついて、とわとせつなは、弥勒の修行地に向かうことになります。

 さて、その弥勒は二年ほど前から千日行に入っている状況――かつてある妖怪との戦いで自分の無力さを痛感した弥勒は、風穴なしでも戦えるように、千日行で神通力を得ようと修行していたというのであります。
 しかしそんな父の姿は、日々妖怪退治を続けている翡翠にとっては逃げに映るらしく――さらに昔っからのがめつさも恥ずかしいらしく――どうにも含むところがあるというか斜に構えているというか、まあ思春期の息子さん的な雰囲気が漂います。その辺りの感覚は、親子仲が非常に良さそうなとわや、そもそも親子仲というものが存在しなかったせつなにはピンとこないようですが……

 そしてそんなところに来襲したのが饕餮。三蔵法師並みの味(って食べたことあるんか)を求めて弥勒のもとに現れたというのは、やはり弥勒もそれなりの徳を積んでいるということなのかもしれませんが、しかしそれで食われてはたまったものではありません。弥勒を守るべく饕餮に挑む翡翠、そしてとわとせつなですが、しかしさすがは四凶の一人だけあって――そして大喰らいということもあって(?)、饕餮の吸い込みはかなりの吸引力。三人がかり+弥勒でも抗するのがやっとの有様です。

 弥勒の機転で、妖怪退治の毒を吸い込みに合わせてばらまくことで饕餮にダメージを与えることに成功しますが――って、これはどう考えても自分が風穴を使っているときに毒に散々てこずった経験からでしょう――饕餮に毒が効くと知ったせつなは、自分の封印を解いて欲しいと願い出ます。
 実は今の今までせつなのことを気付いていなかった弥勒ですが、何はともあれ今は非常時と、彼女の封印を解けば――姿はほとんど人間のままながら、顔には模様が入り、そして手には鋭い爪を生やすせつな。そしてその手から発する強力な毒を饕餮の口中に正面から貫手でぶち込み、せつなは饕餮を見事撃退するのでした。
(しかし黒雲に乗って退散する饕餮に「逃がすか!」と符を放っておいて、次の瞬間「逃したか」となる弥勒……)

 何はともあれ、戦いの中で父親のことを少し見直したらしい翡翠は実家の母のもとにも顔を出して、まずは丸く収まった感じであります。


 というわけで満を持して(?)の弥勒登場回である今回。これまで登場しなかった理由として、風穴に代わる力を得るために千日行に入っていた、というのは、まず納得できるものでしょう。
 しかし弥勒の昔の言動を知っている身からすれば、美人が二人も現れたら――とちょっとハラハラしましたが、妻子が出来て丸くなったか(そもそも子供の頃から知っている友人の子供だからか)、全くそういう面はなくなっていたのには、安心したというか月日の流れを感じたというかでした。

 ちなみに今回、ラストには珊瑚も登場。あまり変わっていなかった弥勒以上に、昔と全く変わらない美貌をみせていただきましたが、しかし彼女似の双子の娘は今回一人しか登場せず――単なる話の流れなのか何か理由があるのか、気になります。(珊瑚が手を合わせていた慰霊塔の存在も)

 そして珊瑚は変わらない一方で、変わってしまったのは、弥勒の声優。辻谷耕史氏の逝去に伴い、やむなく保村真氏に変更となったわけですが――これがほとんど違和感なく、年齢を重ねて落ち着いた弥勒と言われれば納得がいくものでありました。もちろん寂しくはありますが……


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