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2021.01.22

高橋留美子『MAO』第7巻 最後の弟子 そして運命を狂わされた者たちの戦い

 平安と大正を結び、謎が謎呼ぶ伝奇ホラー『MAO』も、はや7巻目。摩緒を生贄とする残酷な後継者争いの代表として選ばれた五人の弟子の最後の一人が、ついに登場することになります。そして明らかになる木の華紋と水の真砂の因縁、そして――と、物語はさらに複雑怪奇な様相を呈することになります。

 かつて呪禁道・御降家の宗家争いの生贄として選ばれ、五人の兄弟子たちによって命を狙われる運命にあった摩緒。しかし猫鬼の呪いを受けた上、師匠の娘・紗那殺害の疑いをかけられた彼は、大正の世まで生き続け、謎を追うことになります。
 そして猫鬼の復活と時を合わせるように、彼の周囲に現れた兄弟子たち。火の百火、木の華紋、水の不知火、金の白眉――百火と華紋は後継者争いに興味を持たず、摩緒とひとまず和解した一方で、不知火と白眉は手を組み、摩緒の身を執拗に狙うことになります。

 さらに不知火の側で暗躍する謎の女・幽羅子が、何故か死んだはずの紗那の顔を持つことから、千々に乱れる摩緒の心。さらに人が土と化す奇怪な事件の連続に、土の陰陽術の陰を見た摩緒は……


 というわけで、次々と提示される謎が全ては解かれぬまま、因果因縁は深まるばかりの本作。この巻では、予想どおり最後の術者、土系の術の遣い手が現れるのですが――これまで同様、そこにも一ひねりも二ひねりもある展開が用意されているのであります。

 そしてそれと合わせて描かれるのは、これまで語られてこなかった摩緒の過去。平安時代、捨童子(孤児)として怪しげな術者にこき使われた末、同じ境遇の兄貴分・大五に迎えられ、御降家に入った摩緒――そしてそこで紗那と出会うことになった摩緒ですが、大五と紗那は慕い合う仲だったのです。
 紗那に惹かれつつも、大五と彼女の仲を祝福していた摩緒。しかしあの呪われた後継者選びの儀式が全てを狂わせ――と、土の術者がが現れるまで、新たな情報と謎の数々の提示に、こちらも振り回されっぱなし(もちろん褒め言葉であります)なのであります。


 しかし、あの儀式に運命を狂わされた者たちは、それだけではありません。善悪の境なく、己の術を利用して飄々と生きるやに見えた華紋――彼もまた、この後継者争いの最中、愛する者と引き離されていたのですから。
 そして、その愛する者とは――と、その秘められた過去を受けてこの巻の後半で展開するのは、新たに築かれた不知火の社を舞台としての、華紋・摩緒と不知火の激突。

 なるほど、万事拘らぬように見えた華紋の行動の陰にはこんな真実が――と、菜花ならずともその見かけによらぬ内面に驚かされますが、彼が初めてその激情を露わにするシーンは、この巻のクライマックスといってよいでしょう。
 そしてさらにそこで奇怪な黒い邪気をまとい幽羅子が出現、そしてその黒い邪気こそは――と、物語は一息ついたかに見えて、またもや新たな謎が語られ、この巻は終わることになります。


 いやはや、本当にまだ解かれぬ謎を列挙するだけで相当な数に上りそうな本作ですが、もちろんそれこそが最大の魅力。そしてそこに、湿度の高い人々の情念が絡み合い、物語が動いていく様は、まさしく作者ならではの妙味といえます。
 唯一、この巻の菜花はほとんど横恋慕要員のようになっているのが気になるところではありますが――もちろん、まだまだ彼女が果たすべき役割はあるのでしょう。

 全ての謎が解かれ、全ての因縁が解かれるその時まで――本作の向かう先を楽しみにしているところであります。

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