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2021.01.11

『明治開化 新十郎探偵帖』 第4回「リンカーンの影」

 行方不明になった因果を追って、林肯会なる政治団体を訪れた虎之介と梨江。そこで因果の姿を見つけたものの、違和感を感じた虎之介は一人潜入し、そのまま行方不明となってしまう。今度は新十郎が会を訪れるが、現れた代表の世良田は新十郎の洋行時代の親友だった。親友との再会を喜ぶ新十郎だが……

 二週間ぶりの放送となった今回は、『安吾捕物帖』の第3話「魔教の怪」を原作としたエピソード。といってもこれまで以上に原作からは要素を拾う程度で、新十郎の過去に繋がるオリジナルエピソードが描かれます。

 冒頭、他の洋行帰りの若者たちとともに、大久保利通に招かれた新十郎。大久保に対しても慇懃無礼な態度を崩さず、明治の世になってから人々は堕落したと言葉をぶつける新十郎ですが――しかし大久保は、それは人々が急に自由になりすぎたからであって、日本に必要なのは自由などではなく秩序だと返すのでした。

 一方、行方不明になった花迺屋因果を探しに、林肯会なる団体を訪れた虎之介と梨江。梨江は新十郎に捜査を頼んだものの大久保との件で断られ、二人で調べに来たのであります。会の所在地は、梨江の存じ寄りの資産家・山賀の屋敷だったのですが――現れたのは、会の筆頭参事を名乗る佐々木という男。
 佐々木から会がリンカーンの思想に賛同した者たちの修行の場であると説明を受け、その中に因果が加わっているのを見つけたにした二人ですが、虎之介はその説明に納得せず、梨江が止めるのにもムキになって振り切って単身会に潜入し――そして彼も消えてしまったのであります。

 もう一度会に乗り込むという梨江を放ってもおけず、今度は同行することになった新十郎の前に現れた会の主宰・世良田摩喜太郎。彼こそは、新十郎がアメリカ留学時代の親友・橋本慶太朗――かつて共に夢を語った親友が、日本で「人民の、人民による、人民のための政治」を実現するために活動していることを知って喜ぶ新十郎ですが、そこで見たあるものがきっかけで、彼の中に疑念が生まれ……


 天王会なる新興宗教団体で起きた連続猟奇殺人を描いた、怪奇色濃厚で、『安吾捕物帖』ではある意味一番派手な内容だったエピソード「魔教の怪」。その原作のどぎつさを、本作は自由民権運動の先駆というべき団体を題材とすることでなくし、別の色彩を与えたと言えるでしょう。

 そして原作で天王会を牛耳っていた世良田を、新十郎の旧友に設定したのは(後述の通り実は本作が最初ではないのですが)本作ならではの巧みなアレンジと言えるでしょう。
 確かに原作でも洋行帰りで、ある意味もう一人の新十郎とも言える存在であったにもかかわらず、作中ではほとんど接点のなかった世良田(原作では新十郎はイギリス、世良田はフランスに留学)を、このように結びつけてドラマを展開するというのは納得できる着眼点です。

 そして新十郎と世良田の再会が、哀しいドラマを生むのですが――ここでは新十郎演じる福士蒼汰と、世良田を演じた浅利陽介の演技合戦とも言うべき力演が大きな見所。特に世良田は、留学時代の、そして林肯会での明るく理想に燃える姿と、対照的にその後の展開で見せる表情が、強く印象に残るのです。
 そしてそれを受けて西郷のもとに乗り込み、ほとんど初めて激情を露わにする新十郎の姿もまた圧巻で、時代ミステリというより、明治を舞台とした時代劇として、良いものを見せていただいた、という気持ちです。

 ただ、個人的には、その時の西郷のリアクション、その後の勝の言葉は正直なところなくてよかった(無言で新十郎を受け止めて欲しかった……)という印象は否めません。
 もう一つ、今回描かれた犯罪があまりに雑だったのも残念なところですが――これは原作の時点でミステリとしては苦しい出来だったので仕方ない(?)ところかもしれません。

 しかし今回ついに登場し、新十郎とは(そして西郷や勝とも)対極の立場にあることが示された大久保。時代背景的にも彼がこの後大きな動きを見せるはずですが――それがこの物語に、新十郎の生き方にどのような影響を及ぼすことになるのか。物語はここが折り返し、この先の展開が楽しみです。


 さて、本作に十年先行して同じ原作(+同じ作者の『復員殺人事件』!)を題材にした作品といえば、『UN-GO 因果論』。本作同様に原作を大きくアレンジして、非常に尖った物語を展開しつつ、新十郎と世良田の関係性がキーとなる物語であります。
 アニメだけでなく小説版もまた名作であるこの『UN-GO 因果論』についても、これを機に触れてみてほしい――と、心から思う次第です。


関連サイト
公式サイト

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『明治開化 新十郎探偵帖』 第3回「万引き一家」

「UN-GO」 第0話「因果論」
「UN-GO 因果論」(その一) 「日本人街の殺人」
「UN-GO 因果論」(その二) 「因果論」

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