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2021.01.17

「コミック乱ツインズ」2021年2月号(その二)

 新年最初の刊行となった「コミック乱ツインズ」2月号の紹介の後編であります。今回はそれぞれある意味一線を越えたというべき二つの作品を紹介いたします。

『暁の犬』(高瀬理恵&鳥羽亮)
 唐津藩のお家騒動の走狗として人斬りを続ける中、ついに父を斬った秘剣「二胴」の遣い手と思しき相手と遭遇した佐内。いまだにその剛剣に対する恐怖心を拭えぬまま、彼が根岸とともに狙うことになった、二胴の遣い手候補の一人・稲垣との対決が今回描かれることになります。

 稲垣と馴染みの女・おまつとが逢瀬を終えた後を狙い、襲撃を仕掛ける二人。しかし闇討ちを仕掛けようにも、稲垣の傍らにはまだおまつが――というところで、いきなり根岸がトンチみたいなアドリブを仕掛けたおかげで、惨劇の幕が上がることになります。
 根岸が単身稲垣に勝負を挑む一方で、(稲垣が二胴の遣い手ではなかったことを確かめた上で)逃げたおまつを追う佐内。自分たちの顔を見たおまつを追い詰めた佐内は、そこで……

 殺し屋ものではある意味定番ともいえる、殺しの場を第三者に目撃されてしまうという展開。それに対してどのように振る舞うかによって、その殺し屋のプロフェッショナリズムと人間性が問われることになるわけですが――だとすれば、ここで佐内が取った行動を何と評すべきか。

 詳細は伏せますが、ここで描かれたのは、完全に一線を越えた――それも結果ではなく動機において――というべき行動。それは彼が単なる殺し屋ではなく剣士、いや剣鬼であることの証明というべきでしょうか。
 本作ではこれまで幾度か、佐内の精神性の奇妙さに驚かされることがありましたが――しかし今回はこれまでとは比較にならないほどのインパクトがあったと感じます。

 しかし凶行は凶行を呼びます。度重なる犠牲者に業を煮やした相手方が見せる不穏な動き――それは佐内の、読者の予測もつかぬ展開に繋がることになるのでしょう。とりあえず、立ち位置に根岸さんが立ち位置的に危ないと思います(身も蓋もない予想)。


『カムヤライド』(久正人)
 一線を越えたといえば、こちらも前回からまさに時代ものとしての一線を越えた感のある本作。高速で飛翔する国津神に対して、未だ傷の癒えぬカムヤライドが得た新たな力、それは――言って良いのかな、いや言っても未見の人には絶対信じてもらえないような、そんなスーパーマシンであります。
 その底知れぬパワーで一瞬のうちに人質(?)となっていたノツチ師匠を奪還し、あとは国津神との決戦あるのみ。果たして勝負の行方は……

 というわけで、本当に想像を絶するパワーアップ編の後編ともいうべき今回。見開き連続8ページという豪快なビジュアルでスタートした国津神との超高速バトルは、その先も我が目を疑うというか、古代ものというジャンルへの挑戦というか、とにかく本作以外では絶対に絶対に見られないような異次元展開の連発であります。

 しかしシビれるのは、これだけ無茶苦茶をやりながらも、前回同様、パワーアップ編であると同時に、カムヤライド誕生編とも言うべき内容となっていることでしょう。
 カムヤライドが国津神を封印する、あの必殺ムーブ。そのロジックと、誕生の瞬間とは――過去のエピソードと現在のエピソードが交錯する(そしてなんかさらにとんでもない技が飛び出す)クライマックスには、ただただ快哉をあげるしかありません。

 しかし残念なのは、ここまで盛り上がっておいて、次号は休載の模様であることですが……


 というわけでその次号3月号は、『軍鶏侍』と『はんなり半次郎』が掲載。そのほか、これまで何度か作品が掲載されてきた鶴岡孝雄の特別読切『隠居武者』が掲載とのことです。


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