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2021.01.08

士貴智志『どろろと百鬼丸伝』第4巻 彼女のもう一つの顔、もう一つの結末

 新たなるどろろと百鬼丸の物語、第4巻で描かれるのは、一人で孤児を育てる少女・みおの物語。百鬼丸にとっては運命の女性であった彼女を、本作は思わぬアレンジで以て描き出すことになります。そしてその結末は……(内容の核心に触れますのでご注意下さい)

 ばんもんでの多宝丸、そして九尾の狐との死闘の末、多宝丸が自分の弟であること、そして自分の体と弟の半身を死霊に捧げたのが実の父・醍醐景光であることを知った百鬼丸。しかし衝撃を受ける間もなく、鉄砲水によって彼はどろろ、そして育ての親であり病身の寿海と共に何処かへ流されることになります。
 そして気付いてみれば寿海とははぐれ、孤児を育てる少女・みおに拾われた百鬼丸とどろろ。そこでみおたちの元にしばらく滞在することとなった二人ですが……


 原作では序盤(そして時系列的にも過去の物語)に登場しながらも、そのあまりに辛い境遇と悲劇的な最期によって、読者に強烈な印象を残したみお。
 百鬼丸の精神性にも大きく影響を与えた少女ですが――こういう表現が許されるかはわかりませんが、初めから悲劇が約束された彼女を、本作は意外なアレンジで以て描くことになります。

 たった一人で数多くの孤児たちの食料を集め、育ててきたみお。しかし彼女には、周囲には決して見せないもう一つの「顔」がありました。
 近くの滝に潜む巨大な顔のない不動像の姿をした死霊。彼女はその死霊に憑かれ、周囲の村の男たちを誘惑して滝の洞窟に誘い込んでは、死霊に顔を与えていたのであります。そして彼女はどろろに目を付けた死霊に命じられ、滝に誘き寄せるのですが……

 と、これは「白面不動の巻」!
 まさかまさか、原作では名もない死霊の女の役回りを、ここでみおに割り当てるとは――さすがに予想だにしませんでした。

 なるほど、孤児たちの母親代わりをしているみおに、どろろが母性を感じるのは、納得のいくところではあります。そもそも、本作においてどろろの身体のことに(それも今までのバージョンにはなかった。ある意味非常に納得のいく形で)気付いたのは、みおなのですから。
 そもそも原作では出会ってすらいないこの二人に、このような関係性を設定したのは(以前のエピソードでのどろろと多宝丸同様)本作ならではのオリジナリティと言うべきでしょう。

 とはいえ、そのために今度は百鬼丸とみおの関係性がいささか薄れた印象は否めないところで、その辺りは評価が分かれるかもしれません(もっとも、この章のタイトルは「どろろとみおの伝」なのですが)。何よりも、彼女の物語の結末も含めて……
 しかし、人間の懸命な生き様を嘲笑う死霊に対するどろろの怒りは大いに共感できるところで、やはり本作のアレンジも悪くないと感じます。

(ちなみに、読者を重い気分にさせてきたみおの仕事については、原作とは異なるものの、また別のベクトルで厭な展開が――大人がいてくれて救われましたが)


 さて、この巻には、新章のプロローグまでが掲載されています。本作ではまだどろろと百鬼丸とはニアミス状態だったあの妖刀が、そして生きていたあの男が再登場する様子で、これはまた大変な展開になりそうですが――さて。
 過去のエピソードとの有機的な結び付きが他のバージョン以上に強い本作だけに、この先の展開も期待してしまうのであります。


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