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2021.02.28

『半妖の夜叉姫』 第21話「虹色真珠の秘密」

 かつて犬の大将の死を悲しんだ是露の願いによって、その涙から生まれた七つの虹色真珠。理玖はその真珠を是露のために集めていたのだった。一方、朔の夜、夢の胡蝶を見かけて追いかけたとわは、時代樹の傍らで理玖と再会するが、そこに饕餮が唐突に襲いかかる。とわを饕餮から守ろうとする理玖だが……

 既に後番組のCMも流れ始め、いよいよ結末も近いと感じさせる本作。今回は作中で大きな位置を占めるガジェットである虹色真珠の正体が語られることになります。

 二百年前の鎌倉時代、竜骨精らとの戦いで深手を負った犬の大将。渾沌や窮奇がこれを期にとどめをというのを不興げに退けた麒麟丸は、敵に塩を送るどころか薬草を送ると言い出し、理玖を送り出します。が、時既に遅く犬の大将は命を落とし、かつて袖にされたらしい是露は悲しみに暮れることになります。その時、四魂の玉を手にしていた是露は、こんなに悲しいのなら苦しいのなら愛などいらぬ? とばかりに自分の心も涙も妖力も捨てると玉に願い、彼女の涙は四魂の玉の力も取り込んで、七つの虹色真珠となったのであります。
 その一部始終を目にしていた理玖ですが――二百年後の飄々とした態度とは大きく異なり、人情(妖情?)の機微などはわからず、自身も感情というものがないような態度を見せます。その時も、是露の涙が美しいと無神経なことを言って、「粋ではない」と彼女に叱責されるのですが――なるほど、この時のことが、彼をして「粋」にこだわらせているのでしょう。
(恥ずかしながら彼の耳飾りはずっと虹色真珠だと思いこんでましたが、真珠が生まれる前からあったので明らかに別物ですね)

 さて時は現在(戦国時代)に戻り、妖怪退治に向かうせつなたちにおいてけぼりにされたとわ。というのもその晩は半妖が力を失う朔だったのですが――夢の胡蝶を見かけてその後を追った彼女は、いつしか時代樹のもとに辿り着きます。
 そしてそこに現れた理玖と、二人で冬の夜空を彩る星を見上げながら紅茶を飲むなど、なんかいい雰囲気になったとわ。しかしそこで七色真珠を元の持ち主に返すために集めていると語る理玖に、あんまり鋭くないとわも流石に、あれ自分たち狙われている? と気付くのですが……

 そこに空気を読まず饕餮が唐突に(という駄洒落を自分で口走りながら)とわを襲撃。これに対し、朔で常人と変わらぬ状態のとわを守るために、理玖がついに刀を抜きます。元は同じ麒麟丸の配下といえども、四凶とは別格の存在であり、それ故快く思われていなかったらしい理玖。しかし理玖の方も、これまでの展開を見ていれば察せられるように四凶を仲間とも思っていない様子で、二人は本気の殺し合いを始めることになります。
 饕餮お得意の吸引に対して大量の瘴気虫を放ち、吸いこませてダメージを与えたものの、逆にそれを吹き出してきた饕餮に対し、とわを庇って深手を負う理玖。自分(の中の真珠)を狙ったり、自分を庇ったりと矛盾した行動を取る理玖に戸惑うとわですが、彼の行動は彼女の心を確実に動かした様子です。

 遅れてせつなともろはが駆けつけ、朔が開けてとわも力を取り戻したのに尻尾を巻いて逃げ出す饕餮ですが、あっさりとその首を落として見せる理玖。とわはその理玖に、自分の真珠を惜しげもなく与えます。自分の敵かもしれない相手に真珠を差し出したとわに驚き感心しつつ去っていく理玖と、後になって理玖は麒麟丸の配下だったと思いだして慌てるとわと――対象的な二人の姿を描いて今回は終わります。


 今までその正体や目的が今ひとつ掴めなかった理玖。今回は七色真珠だけでなく、彼自身のこともかなり判明したように思います。二百年前から変わらぬ姿でいること、周囲が、そして自身でも「紛い物」「木偶人形」と呼んでいること、饕餮が麒麟丸と同じ味がするのではと言っていること――これらのことから、おそらく理玖は、麒麟丸に命を吹き込まれた分身的な存在なのでしょう。
 そう考えると、やたらと粋に拘ったり、愛という感情に興味を持つのも、また違った風に見えてくるように思えます。そしてそんな彼は、必ずしも今の麒麟丸や是露とは同じ方向を向いているとは思えないのですが――この辺りが今後に影響するのでしょう。

 その理玖とは微妙な関係のとわですが、惚れた腫れたというようなナマっぽいものでなく、まだまだピュアな感じで理玖に対して「好き」という言葉をぶつけているのが、彼女らしくて実に可愛らしい。このあたりのとわの感情もまた、終盤に大きな意味を持つと思われますが、残すところはわずか3話であります。
 はたしてこれで全ての決着をつけることができるのか――気になるところです。


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