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2021.02.22

山口貴由『衛府の七忍』第10巻(その一) 集結 衛府の鬼、対決 浦島太郎!

 まつろわぬ者たちを代表する七人の怨身忍者たちの戦いを描いてきた『衛府の七忍』もついにこの第10巻で完結。徳川家康亡き後、ついに集結した鬼たちが戦う相手は何者なのか。そしてその先にあるものは……

 支配者たちの圧政に抗する、化外の民・まつろわぬ者たちを象徴する鬼=怨身忍者。これまでそれぞれの立場から、支配者たちと彼らが生み出す理不尽と戦い続けてきた彼ら七人の怨身忍者ですが――この巻の冒頭で、最大の敵ともいうべき覇府=徳川幕府の頂点である家康は、あっさりとこの世を去ることになります。
 それも、化外の民の棲む領域を侵すこと、そして乱捕りによる人身売買の二つの禁止という、事実上の鬼との停戦宣言を遺言として。天下大君たる家康も、鬼たちが家光を襲うことを怖れていたのであります。

 そして最大の敵をあっさりと失ってしまった末に、大昔から言い伝えに残された化外の民の安らぎの地・トコヨノクニを求めて与謝半島を訪れたカクゴと伊織。そこで二人を待っていたのは、まるで西部劇の無法の町のような悴者の町でありました。
 そこで同じく海の向こうの楽園・ニライカナイを求めてやってきたタケルと出会い、拳を交えるカクゴ。しかし二人が意気投合したのも束の間、その直後に伊織は漁師姿の男に捕らわれてしまったのであります。漁師姿の男、すなわち瑞江浦嶋子――神州三大太郎の一人・浦島太郎に。

 伊織の行方を求めて殴り込んだ悴者の町で、用心棒として現れたレンと出会い、浦島太郎の海底娼館・竜宮城の存在を知るカクゴとタケル。
 一方、浦島太郎によってその竜宮城に連れ去られた伊織は、同様にここに囚われていた髑髏を手にした蝦夷の少女――リッカ、そしてある目的で潜入していた顔見知りの雷忍・京馬に助けられることになります。

 浦島太郎と乙姫を瑞江浦に誘き出し、浦島太郎に戦いを挑むカクゴ・タケル・レン。さらにそこに加わったリッカが乙姫を襲い、戦いがさらに激化した時、テヤンを伴って瑞江浦を訪れたツムグの舞六剣が割って入り……


 零鬼カクゴ
 震鬼レン
 雪鬼リッカ
 霹鬼タケル
 霧鬼ツムグ
 雷鬼キョウマ
 そして霞鬼ハララ――
 これまで銘々伝的にそれぞれの物語が描かれてきた七人の鬼たちのうち、散以外の六人がついに対面することとなるこの竜宮編(ちなみに散は冒頭、江戸城に現れた姿が描かれます)。
 はたして個性の塊のような面々がどのように出会い、そして共に手を携えて戦うことになるのか――というのが、ここまで読んできた我々読者の最大の興味であり、楽しみであったことは言うまでもないでしょう。そしてこれはもう期待通りというべき姿と行動を描いてくれた、というほかありません。

 カクゴを除けば全員初お目見え以来の登場となるわけで、ずいぶん久しぶりの再会となる面子もいるわけですが――しかしいずれもそんなブランクを感じさせない存在感で、実に「らしい」暴れっぷりを見せてくれるのがたまりません。
 そして鬼たちだけでなく、彼らと旅を共にしてきた者たちもきちんと顔を出してくれるのも、また嬉しいところであります。
(特に、もうこのままフェードアウトするのではないかと思われた銀狐に再会できたのは感動!)

 そしてついに集結し、浦島太郎というビッグネームに挑むこととなった鬼たちの戦いの行方は――というところで、しかし物語は、全く意外な結末を迎えることとなります。

 それは――少し長くなりましたので、次回に続きます。


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