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2021.02.06

輪渡颯介『攫い鬼 怪談飯屋古狸』 これでラスト!? 子供の拐かしと怪盗の謎

 怪談を聞かせるか、その怪談の舞台に行ってくると飯代がタダになる飯屋・古狸を舞台にした時代ホラーの第3弾にして完結編であります。毎度の如く古狸のおかげで酷い目に遭う虎太が今回巻き込まれるのは、子供の拐かしと謎の怪盗にまつわる事件の数々。果たしてその先にあるものは……

 看板娘のお悌と好物の茄子のために飯屋・古狸に通いつめている職人見習いの虎太。そこでは九ヶ月前に行方不明になった怪談好きの主・亀八を探すため、怪談を話すか、その現場を調べに行けば飯代がタダというルールがありました。
 お人好しで威勢の良さだけが取り柄の虎太は、お悌に惚れた弱みから、幾度も怪談の現場に足を運ぶのですが、実は大の怖がり。それなのに毎回洒落にならない凶悪な幽霊や祟りに遭遇して――というのが本シリーズの基本展開であります。

 そして今回、虎太が調べる羽目になった最初の怪談は、日暮里の小さな木立に現れては、子供を捜してほしいと頼んでくるという女の幽霊。その場所に泊まり込んだ虎太は、ものの見事に怪談で聞いたとおりの幽霊に遭遇、一晩中幽霊に追いかけられる羽目になるのでした。
 調べてみれば、その場所では子供が神隠しにあった上に離縁された女性が首を吊っていたとか。あまりにひどい話に憤った虎太は子供捜しを決意するものの、もちろんそうそう簡単に見つかるはずもありません。

 そしてそんなことをしている間にも虎太の前に現れる(というか古狸の面々から聞かされる)怪談・奇談の数々。二十年前に助けられた男の孫が拐かされかけたのを助けた犬、何故か外から見えないように隠された料亭の庭の松、見物に行った四人の男たちがみな変死した幽霊屋敷――いつものことながら不思議な目、恐ろしい目に遭わされる虎太ですが、しかし彼は行く先々で、何故か数十年前に姿を消した大盗賊・鎌鼬の七の噂を聞かされることに……


 というわけで、毎度のことながらの虎太の受難劇が描かれる本作ですが、彼は今回特に酷い目に遭っている印象があります。

 正直なところ、描かれる怪異は前2作に比べると小粒なのですが――といっても命の危険に晒されるのは今回も同様なのですが――何といっても辛いのは、お悌ちゃんの塩、というより激辛対応。自分の好物の唐茄子を虎太に思い切り貶された彼女は、それを根に持って、虎太の料理に唐茄子を出しまくるのであります。
 お悌に冷たくされるだけでなく、もともと古狸に通う理由の一つが好物の茄子を食べるためだったのに、それが食べられなくなった上、嫌いな唐茄子を延々と食わされるとは――これはもうほとんどイジメであります(というか、普通にお悌ちゃんは性格悪いと思う)。

 しかもそれに加えて、古狸の常連であり、実は定町廻り同心の千村の旦那まで騒動に絡んでくることになります。千村が古狸では隠している身分を自分だけが知っているために、彼からの頼み(というか無茶振り)を周囲に明かすわけにもいかず、自分だけ秘密を抱えて、いよいよ虎太は追い詰められることになるのです。

 そんなわけでちょっとスッキリしない展開も少なくない本作ですが、しかし一見バラバラに見えていた怪異/事件の数々がやがて一つに繋がって――という展開は、いつもながらお見事の一言であります。
 しかも本作は最終巻というわけで、虎太が怪談に振り回される原因である亀八の行方もついに――なのですが、この辺りの展開も、意外かつ納得の内容でありました。

 これでようやく虎太の受難の毎日も終わりに――なるかどうかは読んでのお楽しみですが、いかにも本作らしい結末を迎えることができたことだけは言えるでしょう。まだまだ読んでいたかった――という気持ちは実のところあるのですが、まずは大団円と言うべき結末であります。


(ちなみに、本シリーズに限らず猫の出番が多い作者の作品ですが、本作では犬が活躍。それがまたなかなかに可愛らしく何より有能で、犬派も納得(?)であります)


『攫い鬼 怪談飯屋古狸』(輪渡颯介 講談社) Amazon

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