出口真人『前田慶次かぶき旅』第6巻 仰天!? 黄金百万石のゆくえ
肥後・島原での慶次たちの大暴れもいよいよクライマックス。ガルシア神父といくさ人・兵法者連合軍の決戦の行方は、そして海底の黄金の行方は……
孤島を舞台に繰り広げられるガルシア神父との決戦。弟の仇討と称しつつ、その実は海底に眠る黄金百万石を軍資金に、キリシタン勢力による武装蜂起を目論むガルシアの挑戦を、慶次・清正・宗茂・左近は受けて立つことになります。
あの柳生兵庫助がおまけ扱いのこのいくさ人軍団に対して、ガルシアが用意したのは初代佐々木小次郎・丸目蔵人・新免無二斎・弁之助(武蔵)という、これまた超人兵法者軍団。
この二つのドリームチームの決戦の行方は――と思いきや、自分たちを単なる囮として使った上、卑怯な手段で慶次たちを討とうとするガルシアに激怒した兵法者軍団は、いくさ人軍団と合流することになります。
かくて絶対敵に回してはいけない最強軍団の無双っぷりに粉砕されたガルシアの配下たちですが、しかし西洋甲冑に身を包んだガルシアは、ただ一人絶対の自信を持って立ちふさがり……
と、知らないというのは怖いことだなあ、というほかないガルシアの行動ですが、しかしそれだけの強さであるのもまた事実。防御は甲冑に任せ、その剛力で攻撃のみに専念する姿は、これはこれで超実戦流、一個のいくさ人と言うべきかもしれません。
しかしいくさ人を相手にしたら絶対負けないいくさ人が本作の主人公なわけで――散々小悪党ムーブを重ねたことも考えれば、これはまあ、やはり当然の結果と言うほかないでしょう。
かくて戦いは終わりましたが、しかしある意味それ以上の問題として残ったのは、黄金百万石であります。肥後の石高の倍はあるこの黄金に、如何に始末をつけるのか――さらにそこに割って入るのが、九州+キリシタン+関ヶ原といえばこの人がいた! のドン・シメオンこと黒田如水、すなわち黒田官兵衛。
若い頃は美形の疾風の軍師だった官兵衛(それは別の作品)ですが、今は嫌味っぽく、さすがの清正も子供扱いの何だかエラそうな老人として描かれることになります。
さて、官兵衛も加わって、この黄金の扱いがどうなるか――詳細は伏せますが、ここでひっくり返ったのは、本書の発売日と同日に新装版の最終巻が発売された、あの名作のラストを彷彿とさせるものとなっていることであります。
本作とはちょっとややこしい関係にあるあの作品ですが、ここでまさか、そのラストのリプライズともいうべき展開をやってのけるとは――と驚いてしまったのですが、しかしこれはこれで最高に痛快であることは間違いありません。
何だかんだでやっぱり豪傑だった官兵衛も加わって、いくさ人たちが実に楽しそうに傾く姿は、一つの物語の終わりに実に相応しく、まことに気持ちの良いフィナーレであることは間違いありません。
しかし、もちろん慶次のかぶき旅はこれで終わりではありません。彼の次なる目的地は、九州のさらに奥――あの最強のいくさ人、いや最強のいくさ人集団が拠る地であります。なるほど、この組み合わせがあったか! と大いにテンションが上がりますが、しかしその前に慶次を狙う男が現れます。
その名は横手五郎――常人を遥かに上回る、剛力という点では慶次をも上回るであろう巨漢にして清正とはある因縁を持ち、そして以前からその清正打倒を目論む天草衆に身を置く男であります。
熊本の歴史――というより伝説に伝わるこの横手五郎ですが、その姿を本作でどのように描くのか。いや何よりも、慶次はこの男に如何に胸を貸すのか、楽しみにしたいと思います。
(しかし今回登場した南蛮人力士、最初からオチは読めているとはいえ、いくさ人連中の異常さも相まって、あまりに可哀想で笑ってしまいました)
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