« たかぎ七彦『アンゴルモア 元寇合戦記 博多編』第4巻 ついに主人公参陣! そして二人の新顔 | トップページ | 平松伸二『大江戸ブラック・エンジェルズ』第1巻 黒い天使、江戸に現る! »

2021.03.28

川原正敏『陸奥圓明流外伝 修羅の刻』第1巻 史上最強決戦 陸奥vs武蔵!

 『陸奥圓明流外伝 修羅の刻』の記念すべき第1作――当然リアルタイムで読んでいたものの、当時は記事にしていなかった本作を、最近になって久々に読み返したのでご紹介します。陸奥が勝つか、武蔵が勝つか――ある意味黄金カードの行方や如何に!?

 徳川幕府が誕生してまだ間もない頃――とある小藩の若君が刺客に襲われていたところに居合わせた若者と武芸者。刺客は武芸者――宮本武蔵に一刀両断されたものの、彼は若君の警護をという依頼に背を向け、眼前の殺戮にも全く動じなかった若者――陸奥八雲を推薦して去っていくのでした。
 団子代わずか五文で警護役を引き受けた八雲ですが、しかし腕の立つ様子は全くなく、呑気に過ごすばかり。そんな八雲を軽蔑しながらも、若君――実は幼い頃から男装させられた姫君は、いつしか八雲に惹かれていくのでした。

 そんなある日、国を簒奪するのに邪魔となる「若君」を亡きものにせんと襲いかかる刺客の群れ。これに対し、飄然と歩み出た八雲は――


 千年不敗を誇る陸奥圓明流の伝承者・陸奥九十九が、現代において様々な格闘技との戦いを繰り広げる姿を描いた『修羅の門』。しかし千年不敗というのであれば、その間に、歴史上の様々な強者と対決しているのでは? そんな読者の疑問が、形となった作品が『修羅の刻』であります。
 『修羅の門』はあくまでも現代の格闘技、すなわち競技の世界が舞台であるだけに、陸奥は人を殺せる技は使えても使わないというのが、物語上の暗黙の了解だったわけですが――それでは人を殺す戦いが当たり前だった時代の陸奥は、というのは、興味をそそる題材でしょう。

 そしてその最初の物語の敵として選ばれたのが、個人の戦闘力――それも力のみでなく、技の体系に裏打ちされたものとして――において史上最強を考えた時、まず真っ先に名が挙がるであろう武蔵なのは、ある意味当然かもしれません。
 活人剣というわかったようなわからないようなものではなく、(半ば伝説とはいえ)実際に剣を振るって六十数回真剣勝負を繰り広げ、一度も負けなかったという武蔵こそ、陸奥と戦うのに相応しい実在の人物であるのは間違いありません。

 そんなわけで、上で述べた第1話の後、今度は安芸五十万石福島家を舞台に、兵法指南役の一門に狙われた八雲の活躍を描く第2話において、ついに八雲と武蔵は再び相まみえ、真剣勝負を繰り広げることとなります。
 しかし徒手で武器を持った相手を制するというのはロマンであることは間違いありませんが、しかし実際にはとてつもない難事であることは――ましてや相手が武蔵であればなおさら――言うまでもありません。

 それを描くに、本作は既に『修羅の門』において読者を熱狂させていた格闘描写を剣と素手の戦いにも適用し――それは相手が一撃必殺であるだけに、より一層の緊迫感と迫力を以て迫ることになります。
 そしてその中で繰り出される陸奥の技は、剣に負けず劣らずの、いやそれ以上の凶器として大暴れ。ある意味水を得た魚のように――という表現は不適切かもしれませんが、本領発揮というべき活躍ぶりであることは間違いありません。

 そして武蔵との決闘――さしもの八雲、さしもの陸奥圓明流でも苦戦は免れない相手との死闘の結末のシーケンスは、思わず膝を打ちたくなるような、どちらの格も下げない見事なもので、いま改めて読んでもテンションが上がるのです。


 正直なところ、『修羅の門』連載の初期に発表されたこともあり、今の絵柄に比べると、かなり違和感がある――八雲が妙にかわいく見えますし、何よりも武蔵の描写は今であれば大きく描写が変わるでしょう――部分はあります。そして何よりも、物語があまりに「時代劇」しすぎている点は否めません。
 その辺りを考えると、続く他のエピソードの方が物語の完成度としては軍配が挙がるのでしょう。しかし、歴史の中の陸奥ではなく、歴史上の強者と戦う陸奥を描いた物語としては、シリーズでも有数の作品であることは間違いありません。

 少なくとも、『修羅の刻』というもう一つの陸奥圓明流伝の始まりに相応しい物語であることは間違いないでしょう。


『陸奥圓明流外伝 修羅の刻』第1巻(川原正敏 月刊少年マガジンコミックス) Amazon

関連記事
「修羅の刻 陸奥天兵の章」(再録)
「修羅の刻 陸奥圓明流外伝」第15巻 戦いの中のその生き様
川原正敏『陸奥圓明流外伝 修羅の刻』第18巻 陸奥狛彦再び! 激突、本多忠勝!
川原正敏『不破圓明流外伝 修羅の刻』第19巻 二人の男と一人の女 不破圓明流始まりの刻

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

|

« たかぎ七彦『アンゴルモア 元寇合戦記 博多編』第4巻 ついに主人公参陣! そして二人の新顔 | トップページ | 平松伸二『大江戸ブラック・エンジェルズ』第1巻 黒い天使、江戸に現る! »