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2021.04.14

響ワタル『琉球のユウナ』第6巻 衝撃のルーツ! 引き裂かれたふたり

 15世紀の古琉球時代、後世にその名を残す尚真王・真加戸と、強い神力を持つ朱色の髪の少女・ユウナの物語もいよいよ佳境であります。第二尚氏に対して各地で不穏の動きが高まる中、何とか真加戸の力になろうとするユウナですが、あまりにも意外な真実が彼女を打ちのめすことに……

 王府の祝女として、世の安寧を祈願して作られたという「太陽の依り代の勾玉」を集めようとするユウナ。しかし七つの勾玉探しは思うように進まず、逆に第一尚氏の生き残りであり、真加戸とユウナを執拗に狙う男・ティダによってその一つを奪われてしまうのでした。
 そんな中、五穀豊穣を祈るために東方の聖地を訪れた真加戸が、何者かに襲撃される事件が発生し……

 と、この巻の前半で描かれるのは、いまだ不安定な琉球王国の国内情勢、それも群雄割拠の先島諸島の状況を踏まえた、真加戸暗殺計画の行方。
 よせばいいのに(いや公務がメインなのですが)ユウナと一緒だとほいほい外出してしまう真加戸がまたも危機に――と思いきや、伊達に子供の頃から陰謀に揉まれて育っていない彼の用心深さ、果断さが描かれているのは、ユウナの前での甘々な顔と(そしてユウナ自身の甘さと)好対照で印象に残ります。

 しかしそれ以上に印象に残るのは、第一尚氏一党に唆されて真加戸を狙った宮古島側の動きであります。
 このエピソードで陰の主役ともいうべき青年「玄雅」の一癖も二癖もあるキャラクターと思わぬ真加戸との因縁、そしてそれが物語を大きく動かしていく展開がなかなか面白いと思っていたら――彼の後の姿を知って感心。琉球史に詳しい方であれば一発でわかったのだと思いますが、こういう仕掛けはやはり史実を背景にした本作ならではでしょう。


 しかし、こうした真加戸の側のドラマが動く一方で、ユウナの側にも、それに負けぬ激しい動きが生まれることになります。
 暗殺騒動の最中、久々に再登場した赤犬子が真加戸に語った「あの小娘は手放せ。いずれお前に大きな禍をもたらすだろう」という予言めいた言葉。その言葉に誘発されたように、ユウナは前巻登場した幸地里之子――第一尚氏側に立つ謎めいた男に拐われてしまうのです。

 初登場時から、「真鍋樽」という名の朱い髪の娘を探しているという設定であったことから、あるいはユウナのルーツと関わりがあるのでは、と思われた幸地里之子。その予感は的中し、ここで彼女のルーツが描かれることになるのであります。

 幼い頃から山原で二頭のシーサーと孤独に暮らしてきたユウナ。これまでその境遇にほとんど疑問を抱かず読んできましたが、はたして彼女の両親は、何よりも彼女自身は何者なのか――それは確かに本作において、大きな謎であったと言えるでしょう。
 そしてこの巻の後半で描かれたそれは――さすがにここで明かすことは憚られるほどの特大級の爆弾。なるほど、これは確かに赤犬子の言葉も真実というほかない――そしてこれまで物語の中で描かれてきた数々の描写に頷ける、思わぬそして納得の展開であります。

 好き合っている男女が、本人たちの責任ではない過去からの因縁で引き裂かれる(あるいは身を引くことを余儀なくされる)というのは、歴史ラブロマンスの基本中の基本ではあります。
 しかし本作でそれが――今までもそうした要素はあったものの、それらとは比べ物にならないほど高い壁でもって――描かれると、これまでのユウナと真加戸の甘々な姿が目に残るだけに、思い切り胸に突き刺さるものがあります。

 はたして二人はこの最大最悪の障害を乗り越えることができるのか――クライマックスは遠くない日に訪れることでしょう。


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