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2021.04.22

『セスタス The Roman Fighter』 第2話「異種格闘」

 ルスカとともに招かれ、ネロに拝謁したセスタス。しかしそこでアグリッピーナに命じられ、ルスカと戦ったセスタスは、完璧に技を封じられ敗れ去るのだった。それから時は流れ、ドリスコ拳闘団の一員としてポンペイを訪れたセスタスは、狷介な拳奴エムデンと、その主人の美女・サビーナと出会うが……

 前回、苦い初勝利を飾った後、ネロに招かれて宮殿を訪れたセスタス(そこで生まれて初めて音楽を聴いて涙を流す姿が何とも切ない)。一介の拳奴に過ぎない彼が、こともあろうに皇帝への拝謁を許されたのは、同年代の少年ながら命がけで戦っている理由にネロが興味を持ったためだったのですが――セスタスの答えに対して、己の境遇を嘆くかのようなネロの言葉は、本作のキーワードの一つというべき「自由」の在り方を浮き彫りにするものでしょうか。

 しかし、そんなところに現れたアグリッピーナの命で、急遽御前試合を行うことになったセスタスとルスカですが――拳闘しか知らぬセスタスと、パンクラティオンの達人である天才・ルスカではあまりに分が悪い。拳を完封された末に蹴り・投げ・絞め技と未知の技のフルコースを受けたセスタスは、周囲の人間たちが試合そっちのけで異常に高いテンションで自分たちの主張をぶつけ合う中、ひっそりと締め落とされるのでした。
(このくだり、ネロの妃のオクタヴィアがいないことを除けばほぼ原作通りなのですが、声が付くと異常に狂騒的に感じられる……)
 惨敗とも言うべき結果に一度は落ち込むセスタスですが、しかし師・ザファルの励ましを受けて再起を誓うことに……


 ――と、冒頭10分程度で単行本第1巻の内容は終わり、なるほど、いわばここまでがプロローグという扱いかと思いきや、それはその通りながら、まったく予想だにしなかった、驚愕の展開を迎えることになります。
 そう、なんと以降9巻分の内容をすっ飛ばして、物語は第11巻に直結。その間のヴァレンス拳闘士養成所崩壊のくだりはナレーションで飛ばされ、セスタスが一度ネロに買われてそこを飛び出したこともスルーされ、ザファルとともにドリスコ拳闘団の一員として、ポンペイを訪れる場面が描かれることになるのであります。

 いやはや、第1話冒頭でエムデン戦の途中から、いきなり10巻分時間が戻ったのにも驚きましたが、この後にその間のエピソードを描いていくのかと思いきや、まさか全て飛ばして、いきなりエムデン戦に繋がるポンペイ編スタートとは!

 確かにアニメでエピソードを圧縮するとすれば、ドリスコ拳闘団に加わってからポンペイに至るまでのセスタスの戦いは省略しても話は繋がるかな、という気はするのですが、しかしセスタスのみならず、いやそれ以上にルスカにとって超重要エピソードであるヴァレンス拳闘士養成所崩壊を飛ばすとは、さすがに思いもしませんでした。
 それだけに、今回冒頭のエピソードを受けた形となるセスタスとルスカの再戦、そしてルスカの過去とデミトリアスとの対決も飛ばされ、ほとんどルスカ周りのエピソードが省略されてしまった(もしかするとこの先また回想の形で描かれるのかもしれませんが)のには、さすがにアレンジ大歓迎の私も愕然とさせられました。そりゃあOPにルスカがいないわけだ……

 何はともあれ、ポンペイ編はそつなく冒頭のエピソードをこなし、個人的には好きなキャラである鼻曲がりのナシカもしっかり登場(しかしナシカに命じられたセスタスのお給仕エピソードは省略――いや仕方ないですが)。それぞれの個性が伝わるエムデンの、そしてサビーナの登場シーンは描かれましたし、自分が仮に自由を得たとして、その先に悩むセスタスという大事な場面は描かれましたが――全てこの大省略に喰われた印象があります。
 そしてラストは、サビーナに命じられて、セスタスたちドリスコ拳闘団のメンバーが酒場の破落戸たちと喧嘩することに――という場面で次回に続きます。しかしほかのエピソードを削っておいてこのくだりが描かれるというのは――このエピソード要るのかなあ。確かにエムデンとセスタスの遺恨に繋がっていく話ではありますが。
(いやアニメでは突然登場した扱いのラドックとゾラの、ほとんど唯一の活躍シーンではあるのですが)

 エムデン戦はきちんと描かれるとして、果たしてその先をどのように、そしてどこまで描くのか――色々な意味で先が気になる作品になってきました。


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