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2021.04.29

『セスタス The Roman Fighter』 第3話「拳闘の犬たち」

 ポンペイの有力者・サビーナに命じられ、酒場の破落戸と戦うセスタスだが、己の決定力不足を思い知らされる。そんなセスタスに対し、サビーナは買い上げて自分の下に置いてやると提案するが、セスタスは拒否。侮辱されたと立腹したサビーナは、エムデンに命じ、試合で制裁を加えようとするのだった。

 サビーナに命じられて、酒場を荒らす破落戸の一団と戦う羽目になったセスタスたち――という場面から始まる今回。この場面要る? と先週は思いましたが、ここで一番の巨漢を相手にする羽目になり、手数では圧倒するも仕留めきれず逃走を許してしまったセスタスは、拳闘における自分の決定力不足を痛感することとなります。そしてその嘆きに対し、ザファルが一撃必殺の決め技を伝授――という流れになるため、実はこの場面は場面で結構大事なのでした(しかしその流れに関係ないゾラの狂乱ファイトはバッサリカット。数少ない活躍シーンが……)。

 それはさておき、逃げた破落戸は、エムデンがあっさり半殺しにすることでセスタスとはパワーが違うことをアピール。しかし自分がいるのにセスタスたちを頼るとは、と嘆くエムデンに対して、滅茶苦茶冷たく接するサビーナの声音の変化が凄まじく印象的で、もしかして今回のアニメ化で最も得したのはこの人なのでは、と思わなくもありません。
 しかしそんなサビーナに対し、エムデンはなおも自分の忠臣ぶりと強さをアッピール。実は以前、サビーナの誕生日に前人未到の50連勝をプレゼントすると誓って(誓わされて)いたエムデンですが、それもあと残り2勝――と、セスタスがその執念にドン引きしている一方で、ラドックは、俺とセスタスでお前をブッ潰すと宣言、こうして着々と試合への道が築かれていくことに……

 その時はラドックが先に戦うということで、むしろセスタスの悩みは決定力不足――ということで先に触れた必殺技伝授(をしてやるとザファルが告げる)場面に繋がるわけですが、その後に本当の受難がセスタスを待ち受けています。
 拳奴の身には珍しい焼き肉というご馳走(何故このくだりに大塚明夫のナレーションが入らないのか――というか第1話以降、ナレーションの記憶がない)を食べようとしていた時、突然サビーナに呼び出されたセスタス。一体何事かと思えば、彼女は、自分がセスタスを買い上げて、侍従として手元に置いてやると言い出すではありませんか。

 なるほど、気品もあるし、アニメではカットされたけど宴席に侍ればセクハラを受けるくらいの容貌。そしてもちろん腕っぷしの方も――と、言われてみればサビーナ様お目が高いという気がしないでもありません。しかしセスタスにとっては青天の霹靂、腕っぷしならエムデンがいるのでは――と言えば、サビーナは再び塩どころではない氷点下対応。この人、ツンデレなんじゃなくて、本ッ当にエムデンのことが鬱陶しいんだなと思わせる遠藤綾の名演であります。
 それはともかく、この破格の申し出を、しかしセスタスは断ることになります。自分には師匠も仲間もいる、そしてそれ以上に、もう自分の身を売り買いされたくない――「その子の裸をみせてちょうだい?」おばさんのような連中の前で前で辱めを受けたトラウマもさることながら、彼の頭の中にあったのはネロのことであります。

 かつてネロによって買い取られたものの、対等の友人が欲しいのに互いの意を交わすことができず、首輪全裸監禁でしか自分の想いを示せなかった孤独なネロから逃げるしかなかった自分を思い出し、自分の身は自分で買い戻して自由になりたいと、熱く語るセスタスですが――いきなりそんな話を涙ながらに聞かされたサビーナの方はもちろん困惑。
 そしてこの困惑は、セスタスが語った内容が丸々カットされていたアニメ視聴者も同様でしょう。本当に、ポンペイ編をやるのであれば、何故こんなに大事な場面をカットしたのか?(いや、他をカットしてここを残されても妙にインパクトがありすぎるか……)

 とにかく、セスタスの(わけのわからない)拒絶は、これまで自分の意が通らなかったことのないサビーナにとっては屈辱以外の何ものでもありません。さっそくエムデンを呼び寄せた彼女は、次の試合の相手にセスタスを指定、試合の形で公開処刑を命じます。もちろんセスタスに対して嫉妬の炎をメラメラと燃やすエムデンに異存はなく、かくて必殺技の特訓も不十分なまま、セスタスは強敵との試合に臨む羽目に……


 格闘シーンは冒頭に少ししかなかった上に、上で述べたように大省略が思い切り影響を与えた今回。しかし単独で見れば声優陣の熱演もあって、なかなか楽しめる回でした。
 しかしセスタスもまだ登場して日が浅い段階で、もしかしてドラマを背負ったエムデンの方が人気が出てしまうのでは――と一瞬思いましたが、やっぱり普通に彼はアレすぎてこれは無理だろうなあ……


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