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2021.04.27

さいとうちほ『輝夜伝』第7巻 最後の謎!? 天女が地上に残るためには

 謎が謎呼ぶかぐや姫と天女も、巻を重ねて第7巻。ようやく月詠の過去は明らかになったものの、新たなる謎がその前に立ち塞がることになります。そして再び命を落とした竹速の運命は――比叡山を舞台に、新たな展開が繰り広げられることになります。

 死んだはずの兄・竹速であった梟と共に内裏から出奔し、葛城の里で、天女であった母が遺した安産祈願の数珠を手に入れた月詠。その数珠が作られたとおぼしき比叡山に向かう二人ですが、その途中、竹速は治天の君の配下となった大神の毒矢を受けることになります。
 月詠は、愛する兄と引き離された悲しみに暮れながらも、かぐやの随身となることに……

 と、物語当初からの謎であった血の十五夜の真相と、月詠自身の出自、そして梟の正体が既に明らかになった本作。しかしその先にあるのは、月から来た天女の血を引く月詠が、そしてかぐやが、どうすれば月に帰らずに済むのか――すなわち、この地上で愛する人と添い遂げることができるのかという、大きな難題であります。
 そして形見の数珠を残して消えた母=天女の行方がその答えになるのではないかと考え、その数珠が作られた比叡山に再び向かおうとする月詠ですが、その機会は、意外な形で訪れることになります。

 いつ月に帰るかわからないかぐやの似姿を仏像に残そうという帝の使者として、比叡山に住む磐座の大仏師なる名人のもとに向かうことになった月詠と凄王。そこで二人を待っていたのは、月里なる地に住み、土地の者から月兎と呼ばれる美形の双子・伯龍と琵琶でありました。
 そして月詠と彼女を追いかけてきたかぐやの前に現れた磐座の大仏師の正体は、二人が曾祖母さまと呼ぶ女性・月輪であり――初めは美女の姿で現れた彼女は、しかしかぐやの姿を見るや驚きで一瞬のうちに老女に姿を変えてしまったではありませんか。

 月輪が天女であると一目で見抜くかぐやですが――しかし老女の天女というものが、いや何よりも月に帰らぬ天女というものがありえるのか。もしそうだとすれば、月詠もかぐやも、月に帰らないですむかもしれません。そう考える二人に月輪が語った、彼女が月に帰れなかった理由とは?
 そして、ついに二人は天女の昇天を目の当たりにすることに……


 この巻でついにはっきりと描かれることとなった天女の昇天。それは、これまで作中で断片的に語られてきたものを裏付けるかのような、不気味で恐ろしく、かつ荘厳で美しいものであります。
 本来であれば天女の物語の結末に描かれるべきこの昇天ですが、しかし本作における二人の天女にとっては、それは避けられるべきもの。そしてそのための術は、本作において残された最後の謎といえるかもしれません。

 そしてその謎の答えは、第三の、しかも老女の天女の登場により、ついに明かされることになります。そしてその答えとは――言われてみればなるほど、というしかないものであり、そして、ここでもう一つの天女伝説が絡むとは! と大いに感心させられます。
 しかしその答えが明らかになったとしても、それはそれで、月詠とかぐやにとってははそうそう簡単には実行し難い――実行するための覚悟が必要なものであります。いや、かぐやはともかく、月詠の場合はなおさら……

 そしてこの展開に関わってくる(かもしれない)竹速は、大神の毒矢を受けて再び死に、そして月詠の力で再び復活したものの、文字通り半死半生の状態。
 そしてその一方で、そんな血の繋がらぬ兄に想いを寄せる月詠と、彼女を愛するあまり道を違え、今では竹速と入れ替わるように治天の君の僕となった大神の気持ちも、互いにすれ違ったままの状態であります。
(そんな大神に対し、時に敵に対するように、時に友に対するように振る舞う凄王の姿は一服の清涼剤といえるでしょうか)

 誰かが笑顔になれば誰かが泣かなければならないこの状態を抜け出す答えはあるのか。天女と聞いては黙ってはいられない治天の君がまた暗躍を始める中、はたして物語はどこに向かうのか――まだ光の差さない暗闇は続きそうです。


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