『セスタス The Roman Fighter』 第1話「拳奴セスタス」
ネロがローマ皇帝に即位した年――少年奴隷セスタスは、拳奴養成所での最終選考で親友・ロッコと対戦することになる。師・ザファルの教えで快勝するセスタスだが、ロッコは無残にも処刑されてしまう。敗北すれば死の過酷な環境の下、セスタスはネロも観戦するデビュー戦に臨むが……
ついにスタートしたアニメ版『拳闘暗黒伝/拳奴死闘伝セスタス』。原作は古代ローマを舞台に、負ければ死という文字通り死闘を繰り広げる少年拳奴・セスタスの姿を描く歴史格闘アクション漫画ですが――さて、それをどのようにアニメ化するのか、と思いきや、第一話冒頭から度肝を抜かれることになりました。
というのも、このアニメ版の冒頭で描かれたのは、原作『拳闘暗黒伝』11巻冒頭のシーン――実質第1シリーズ最後の試合である、ポンペイ最強の拳奴・エムデン戦から。
このエピソード、試合の中で強打を食らったセスタスは記憶を飛ばし、そこに至るまでの記憶を甦らせていく――という構成なのですが、原作ではポンペイに着いてからの記憶だったものが、どうやらこのアニメ版では、拳奴になるところからの記憶を甦らせることになるようです。(ずいぶん豪快に記憶を飛ばしたな……)
さてアニメ化の報を聞いた時、真っ先に気になったのは、一体原作のどこまでをアニメ化するのだろう――ということでしたが、これで少なくともエムデン戦までは描かれることがわかりました。
このアバンタイトルに続くオープニングでは、『拳奴死闘伝』冒頭で激突した強豪・フェリックスが顔を見せているので、そこまでいくのかもしれませんが……
(一方でルスカたちローマ組が全くOPに登場しないので、本編でどれだけ出番があるのか、些か心配ではあります)
前置きが長くなりましたが、ここから先は基本的に原作冒頭からほぼ忠実に(細かい描写などはかなり省いているようですが)アニメ化されています。
この第1話では、拳奴養成所での最終選考からロッコの無残な死、ローマでの養成所対抗戦におけるセスタスのデビュー戦と、奇妙な友情で結ばれるルスカそしてネロとの出会い、ルスカの鮮烈なファイトまで――原作第1巻のほぼ3/4が、一気に描かれています。
物語の掴み――すなわち物語全体の方向性を描くこの冒頭部分は、全編を振り返ってみても特にハードな展開が印象に残る部分。最終選考に勝てば親友が殺され、デビュー戦に勝てば相手が殺されるというので止めようとしたら自分も殺されかけ(昔同じことした師匠に怒られ)、そしてもし負けたら自分が殺され――書いていて嫌になるほどツラい設定であります。
もっとも本作の場合、この設定があるからこそ、セスタスが負けられない理由になり、そして肉体的には不利な彼が技を磨く理由にもなるという点が、最大の特徴であることは言うまでもありません。
もう一つ、これだけ容赦ない史実を描きながらも、徒手格闘において究極の万能性を備えるに至った「総合格闘術 パンクラティオン!!!」などと、実に格闘漫画らしいケレンを効かせてくれるのも楽しいところであります。
しかし触れるのが遅れましたが、冒頭のエムデン戦はCGで描かれていたため、フルCGもしくは試合シーンだけCGという趣向かと思いきや、本編は全て普通のアニメというのがすっきりしないところです。
特にCGアニメが好きというわけではないのですが(冒頭のシーンも、審判のおじさんまでCGなのが違和感)、しかし作品の間違いなくメインの部分だけに、そこは気合を入れて欲しかった、というのが正直な印象です。
特にセスタス以上にルスカの試合は……
(にしても初登場時のルスカのいい子っぷりたるや、「今」から見ると隔世の感が)
などと、とりとめもなく書いてしまいましたが、ザファルやデミトリアス、それにナレーターはベテランの渋い声がしっかり固め、正直なところ初主演ということで不安だったセスタス役も違和感なく、その点は一安心いたしました。
関連記事
技来静也『拳闘暗黒伝セスタス』第1巻 熱血格闘漫画と歴史物語の高度な融合!
![]() |
Tweet |
|
| 固定リンク