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2021.05.01

ユウキケイ『画鬼の爪』第1巻 妖怪と対峙する者――画鬼と建築家と火盗改と!?

 時は明治時代初頭――江戸から東京と呼び名を変えたばかりの町に跳梁する妖怪たちと、その姿を絵に残す「画鬼」と呼ばれる絵師、そして妖怪たちに抗する警視庁の退魔集団の姿を描く伝奇活劇の第1巻であります。謎めいた画鬼の素顔とは、そして彼の目的とは……

 幼い頃のある事件がきっかけで「画鬼」と知り合い、それ以来、常人の目には見えない妖怪変化たちの姿が見えるようになってしまった少年・仁。そんな彼をある日東京の町中で呼び止めたのは、イギリスからやって来た建築家を名乗る青年でありました。
 請われるまま青年を画鬼の住まいまで案内する仁ですが、画鬼と対面するや銃を突きつける青年。実は彼は妖怪事件を取り扱う警視庁火付盗賊改に招請されたゴーストバスター――そしてこの世のものならぬ者を見抜くはずの彼の目に映った画鬼は、正体不明の存在だったのであります。

 一触即発の状況の中、仁を狙って現れた巨大な妖怪を前に、手を組んで立ち向かうこととなった画鬼と青年。その筆の力で妖怪を封印した画鬼に興味を持った青年は、弟子入りの名目で彼の近くに身を置くこととなります。かくて画鬼――河鍋狂斎と、英国の青年――ジョサイア・コンデルの奇妙な師弟関係が始まることに……


 幕末から明治にかけて活躍し、その奇矯かつ奔放な言動と卓抜した画力で知られる自称「画鬼」、河鍋暁斎(狂斎)。幼い頃に川から流れてきた生首を拾って写生したという伝説や、数々のユーモラスな妖怪画を残したことから、フィクションの世界では、実際に妖怪変化と縁を持つことも少ない人物であります。

 しかし、そんな狂斎自身が、実は人ならざる者(らしい)として描いたのは、本作が初めてではないでしょうか。町外れの屋敷に座敷童と二人で暮らし、そして人の世に迷い出た妖怪たちを絵に描くことで封じ込める――そんな奇妙な狂斎の姿は、まさに画を描く鬼、「画鬼」に相応しいといえるでしょう。
 そして彼が妖怪たちを絵に封じる理由がまた、妖怪を退治するためなどではなく、むしろその逆――というのも、また実に「らしい」ところで、納得がいく設定であります。

 しかしそんな狂斎がいる一方で、妖怪たちを滅ぼすために力を行使するもの者たちも存。在します。それが警視庁の対妖怪部門・火付盗賊改――あの長谷川平蔵の孫・荘平が指揮する、いずれも曰く有りげな猛者たちが集まったチームであります。
 実は本作においては、維新後に妖怪たちが凶悪化し、活動が活発化しているという設定。その状況下での両者の立場の違いが、本作の最もユニークな点かもしれません。

 そしてまた、その両者の間に立つのがコンデル――その手の事件では本場(?)である英国から火付盗賊改によって招かれつつも、狂斎の絵と行動に惹かれて「弟子」(言うまでもなく史実の上でも彼らは師弟であります)というのも面白い。
 コンデルがゴーストバスターというのもさすがに初めて見る設定ですが、全くその目的が異なる両者の間に立つ者として、この先物語で大きな役割を果たすのではないか――そう感じられます。

 もっともその一方で、物語が狂斎サイドと火盗改サイドに分かれることによって、狂斎の存在感が現時点ではちょっと薄いように感じられるのも正直なところであります。特にこの巻のラストで、物語が大きく伝奇活劇サイドに舵を切っているため、いささかこの先が気になるところです。

 もちろん、本作においてそれは承知の上の展開でしょう。はたして人間たちと真っ向から対峙する妖怪たち――そもそも、明治を舞台とする妖怪ものでは、妖怪たちは日陰者になっているのが大半なので、本作の設定ちょっと珍しい趣向ではあります――を前にして、妖怪と共にあろうとする狂斎はいかに動くのか。この先の展開が気になる作品であることは間違いありません。


 ただ、やっぱり火付盗賊改というネーミングだけは気になるわけで――おまけ四コマでもツッコミが入っているところではありますが。


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