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2021.05.19

「コミック乱ツインズ」2021年6月号(その二)

 「コミック乱ツインズ」6月号の紹介の後半であります。

『殺っちゃえ!! 宇喜多さん』(重野なおき)
 困窮に喘ぐ宇喜多家の人々に声をかけてきたいかにも腹に一物ありげな(キャラデザの)男・阿部善定。備前の豪商であり、亡き祖父・能家と懇意にしていたという彼は、援助を申し出るのですが――意外にも父・興家が嫌がったものの、背に腹は変えられず、一家三人善定の屋敷に世話になることになります。
 しかし、興家が嫌がったのは、善定の娘を通い側女にしていて子供までいたから、という展開が本当にヒドい話であります。(てっきり善定に世話になった後にその娘に手を付けたという順番かと思っていました)

 何はともあれ、ひとまず暮らしの心配はなくなった宇喜多家ですが、しかし直家は、善定が宇喜多家の当主に自分の孫を据えることを狙っているのではと考え――と、ここで頭のキレを見せる直家。栴檀は双葉より芳しというべきかもしれませんが、今回はそれ以上を考えていた善定の狙いが面白いところであります。(しかしさすがに「勝者・勝者」の関係という表現は無理があるのでは)
 そんなこんなで三話目にしてようやく浮上の目が見えてきたような気がする直家ですが――さて。

『仕掛人藤枝梅安』(武村勇治&池波正太郎)
 今回から、原作者の絶筆であり、未完に終わった最終章「梅安冬時雨」編がスタート。白子屋、そして山城屋と鵜の森の伊三蔵といった強敵を全て倒した梅安は仕掛人としてのしがらみを精算、さらにおもんとの仲も精算し、江戸を離れる準備を着々と進めることになりますが――白子屋亡き後、荒れる大阪の状況が、暗い影を落とします。
 白子屋の後釜に座りながらも配下を統率しきれない切畑の駒吉が、梅安、さらに音羽の半右衛門への刺客として白羽の矢を立てたのは、あの好色剣客・北山彦七の弟・要之介であります。

 強い強いと言われながら嫉妬心に囚われた挙げ句、出会い頭の事故的に殺された兄よりも強いと言われる剣客ですが――この要之助、原作では平尾要之助に当たるであろうキャラ。そして半オリジナルというべきこのキャラが江戸に出てきて組む相手が羽沢の嘉兵衛――『鬼平犯科帳』と『剣客商売』、『闇の狩人』など池波正太郎の暗黒街ものの常連脇キャラというのも面白いところです。
 なによりも嘉兵衛は梅安が妹を殺すこととなった仕掛けの蔓でもあり(この武村版でどうだったかは失念しましたが)、因縁の間柄として、納得のキャスティング。今後の展開がきになります。


『風雲ピヨもっこす』(森本サンゴ)
 幕末マニアの(本当に)ひよっ子勤王の志士・ピヨもっこすを主人公としたシリーズ連載第3話に登場するのは、その志士たちの宿敵である新選組! 龍馬や以蔵が猫なのに対して、新選組は全員犬というのが、何というかシャレがキツいのですが、しかし土方、沖田、そして近藤が、犬なのにそれっぽいデザイン(特にブルドッグ近藤の説得力)なのが楽しいところであります。

 さて、今回は町で土方と沖田と出会ってしまったピヨもっこすが、持ち前のマニア根性からサインをねだったことがきっかけで、とんでもない事態になるという展開。新選組は新選組でそれでいいのか、という感じですが――この先が確かに大変なことになるのは間違いないわけで、気が抜けないというか気が抜けるというか、愉快な作品です。


『凛九郎』(玉彦)
 特別描き下ろしの本作は、とある宿場町を舞台に、数ヶ月前に妻を病で失い静かに暮らす男・空閑凛九郎を描く物語。妻が残した舶来の愛馬・黒鹿毛を友に、静かに――というより気が抜けたように暮らす凛九郎が、ある日宿場を支配する代官のバカ息子に黒鹿毛を奪われた上に殺され、怒りに燃えて立ち上がることに……

 と、「舐めていたおっさんが殺人マシンだった」系の物語――というより、どう見てもあの映画がモチーフになっているとしか思えない内容の本作。それであればもっともっと派手に、そして説得力ある殺陣を見せて欲しかったところですが、その辺りは未だしと感じます。
 しかし最後の最後、ある人物が見せた表情(の変化)は強烈で、何とも言えない後味が残るのが印象的でありました。


 次号は『雑兵物語 明日はどっちへ』(やまさき拓味)、『はんなり半次郎』(叶精作&篁千夏)が掲載とのこと。『暁の犬』と『カムヤライド』は休載のようで残念であります。


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