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2021.05.22

『セスタス The Roman Fighter』 第6話「女神との決別」

 絶体絶命の状況の中から、一瞬の好機を掴んで放った必殺の拳「断頭」をエムデンに決め、奇跡の逆転勝利を収めたセスタス。サビーナに別れを宣告され、ポンペイを去るエムデンに対し、ザファルは二人の決め技の類似性を挙げ、ある人物の存在を尋ねる。はたしてその答えは……

 エムデンの必殺技「断頭」を延髄に喰らい、記憶を失うほどのダメージを受けながらも、辛うじて立ち上がり、ほぼ互角の状況にまで持ち込んだセスタス。しかし激しい拳の応酬の末に左目の上を切り、出血で視界を失うという窮地に陥ってしまいます。最後の手段として、セスタスはザファルに教えられた殺し技に全てを賭ける――という引きを受けて始まる今回。

 そして冒頭、最大の長所であるスピードにものを言わせ、ほとんど飛び違いざまにエムデンの裏側に回ったセスタスは、全体重を乗せた一撃をエムデンの延髄に――これぞセスタス流の「断頭」!
 まだ余力を残していたはずのエムデンが、サビーナの叱咤というある意味最高の声援(ここでのサビーナの言葉が「悔しくはないのッ!? おまえの意地も誇りもその程度と認めるつもり!?」と、ある意味素直に応援しているような内容なのが印象的)を受ながら、結局ダウンするしかなかったのですから、その威力は推して図るべしでしょう。
(これは同じ延髄打ちでも、拳の振り下ろしだったエムデンのそれに比べ、ストレートを撃ち抜いているセスタスの方が威力に勝るということでしょうか)

 激闘が完全決着し、セスタスとエムデンの間に、一瞬の交感が生まれたものの――ここで水を差すのは、観客の「殺せ」コール。大番狂わせに怒った(という名目の「金返せ」)観客たちに対して、セスタスの答えは親指を突き上げてみせるというもの――そう、本来であれば敗者が行う「殺すな」のサインであります。
 これは思い返せば第1話、デビュー戦に勝利したセスタスが同じことを行い、アグリッピーナの怒りを買っていきなり人生終了しかけた(そしてザファルに滅茶苦茶怒られた)行為。しかしかつてのそれが、自分の立場を理解せぬ故の、そして自らの甘さ故のものであったのに対し、今回のそれは――「たとえ皇帝でも」という実際に皇帝を知る彼ならではの強い強い覚悟の上で――エムデンの強さを、自分達の勝負の価値を誇りに思うが故の行動であり、だからこそ重く、そして価値あるものということができるでしょう

 このエムデン戦は、原作第1シリーズである『拳闘暗黒伝』において、セスタスのラストマッチであります。そしてその試合は、内容はもちろんのこと、最初の試合と見事に対照的なその結末において、セスタスの成長を示したものといえるでしょう。
 試合を終え、次の目的地に向かう途中、セスタスを惜しみなく讃え、その名を呼ぶポンペイ市民――ほとんど第一部完、と言いたくなる盛り上がりでありました。

 が、盛り上がったのは勝者たるセスタスの方。敗者たるエムデンは、試合後にサビーナから「お疲れ様 お別れね」という「優しい言葉」をかけられることに……。フラられた相手に優しくされるというのは、実にキツいものですが、エムデンはさらに他所に売られることになったのですから、なんと言うべきでしょうか。
 そしてここで、一つの事実が明かされることになります。エムデンとセスタスが、形こそ違え、奇しくも同じ断頭という名の延髄打ちを必殺技としていた理由――それはザファルとエムデンが同じ人物に師事していた、いわば兄弟弟子であったためだったのです。その人物の名は、カディスのデモクリトス――素質ある、そして悩める拳闘士のもとに現れ、弁舌巧みに相手を指導し、そして自らの望む成果が出れば去っていく人物。一度は師と仰いだザファルが「怪物」と呼び、嫌悪感を見せる人物であります。

 はたしてこの先、デモクリトスがセスタスの前に現れることはあるのか、そしてエムデンの再起があるのか……


 というわけで、上で述べたとおり、ここまでで『拳闘暗黒伝』の内容は終わり、次回からは第2シリーズ『拳奴死闘伝』に突入するこのアニメ版。やはりルスカとネロ側のエピソードは全カットのようですが、1クールで「セスタス」を描くのに、これはこれで一つの選択かもしれません(決して両手を挙げて賛同はいたしませんが……)。

 しかし今回デモクリトスのことが語られたということは、このアニメ版のラストはトーナメント第1試合になるのかも――という予想は、これはまだ色々な意味で早計かもしれませんが。


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