『長安二十四時』第1話 「巳の正刻 戦いの始まり」
上元節の祝いで長安城内が賑わう中、靖安司の司丞・李必に呼び出された元役人の死刑囚・張小敬。李必は張小敬に対し、自由と引き換えに、長安に潜入した突厥のテロ集団・狼衛の首領を24時間以内に捕えるよう命じる。惨殺された前任者の足取りを追う張小敬は、大きな陰謀の存在を察知する……
中国版『24』は唐代を舞台とした時代劇と聞き、その手があったか!? と大いに驚かされた『長安二十四時』。ソフト化や配信によってアクセスしやすくなり、遅ればせながらようやく見始めました。24時間を全48話で描くという本作、第1話の今回はキャラクターや状況説明の部分が大きく情報量の多さだけで圧倒されるのですが、それだけに引き込まれるものがあります。
舞台は天保3年、陰暦1月15日の上元節の祝いで街が解放され、夜間外出禁止令も解かれたという、いかにも何か起きそうな状況の長安。その喧騒とは、しかし無縁の状況に置かれていた囚人・張小敬が、本作の主人公の一人であります。
不良帥(日本でいえば岡っ引き的な存在)という役人の身でありながら、上官殺しという大罪を犯して処刑を待つ身の張小敬。しかし突然彼が呼び出された先は、朝廷の高官の屋敷らしき場所――その地理的状況から相手の身分をたちどころに割り出してみせるところでさっそく彼の腕利きぶりが描かれるのがいい――の主人とは、隋の皇族の血筋を引き、高官はおろか太子とも交流があるという超エリートの青年・李必でありました。
実はわずか4ヶ月前に設置されたばかりの秘密機関・靖安司の司丞だという李必。各官庁からトップクラスの人員が集められ、各種機密文書はおろか、当時でいえば最高機密に属する長安の地図まで存在する、いわゆるインテリジェンス機関であります。
そのデータ分析担当官・徐賓が白羽の矢を立てたのが張小敬ともう一人、闇商人の崔六郎。その崔六郎が物言わぬ死体となって帰ったことから、張小敬が呼び出されたのでした。
崔六郎が追っていたのは、突厥のテロ集団・狼衛の首領・曹破延以下十六名。密かに長安に潜入した曹破延に首尾よく接触した崔六郎でしたが、その本拠としていた倉庫への弟の崔器率いる軍の突入が失敗し、狼衛のうち十五名は討ったものの、崔六郎と軍人一名が殺害され、曹破延は無届けの地下水路を通じて脱出したのでした。
曹破延を逃がすわけにはいかず、さりとて上元節で昼夜を問わず人が溢れる長安で大規模に軍を動かすわけにはいかない――かくて都の裏表を知り尽くし、そして処刑を目前とした張小敬に、赦免と引き換えに、曹破延捕縛の命が下ったのであります。
もちろん靖安司も独自に調査を進めて倉庫の持ち主を特定したものの、既に何者かに――曹破延が長安に入る前に一家皆殺しにされていたことが判明。
一方張小敬は、崔六郎の経歴から、彼がなにか手がかりを飲み込んでいると推測し、彼の亡骸を解剖するのですが――そこから現れたのは、詳細な長安の地図の一部だったのであります。ここから考えられることは一つ――長安で、何か巨大な陰謀が進行している……
というわけで、冒頭に述べたとおり固有名詞と登場人物の多さに、筋を追っていくのがやっとの状態(しかも年号の天宝が天保になっていたり、李泌が李必になっていたりと、史実にもじりが加えられているので余計にややこしい)の今回。
しかしセールスポイントの一つだという長安のセットは確かに見事で、その猥雑な空気やそこに集った群衆の姿など、舞台となる長安が魅力的に、そしてリアルに描かれている時点で、作品への気合の入りようがうかがえます。
その一方で靖安司の設定や描写、軍の突入シーンなどは現代のドラマの影響をかなり受けている印象はあるのですが、その辺りはなかなか巧みに換骨奪胎できているのではないかと感じます。
そして何よりもキャラクターの多彩さが魅力で、やさぐれ切れ者オヤジというみんな大好きキャラの張小敬、彼からは「神童」と呼ばれる超エリートの李必という主人公二人をはじめとするメインどころ(であろう)キャラが皆、一癖も二癖もありげなのは楽しいところであります。
物語はまだ序章も序章ですが、この先も期待通りの物語になりそうだ――と楽しみにしているところです。
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