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2021.06.03

『セスタス The Roman Fighter』 第8話「開眼」

 予選を勝ち進んでも、鍛錬の成果がストレートに実感できず、苛立つセスタス。しかしザファルの言葉を胸に鍛錬を続け、準々決勝に臨んだセスタスは、試合の中でついに自分の求めていた答えを手にするのだった。喜ぶセスタスたちだが、その前に、不敵な職業拳闘士・フェリックスが現れる……

 原作の3話分の内容を、時折オリジナルの描写を交えながら丹念に描いた今回。派手さはありませんが、格闘技もの・スポーツものとして欠かせない、特訓とその成果を描くエピソードであります。

 開始早々、圧倒的な試合運びで文字通り大戦相手を叩き潰したセスタス。前回同様、これまでの繊細さとは打って変わった荒々しい態度を見せるセスタスは、試合後のザファルのコメントを声を荒げて遮り、周囲の拳奴トリオも困惑するほどの荒れ様であります。
 その後も、特訓の成果について、トリオの一人でひねくれ者のペドロと口論気味にやりあったりしてしまうセスタスですが、そんなセスタスの心境を、「期待外れ」「手応えが乏しい」「実感が湧かない」と、ザファルは心を読んだかのように当ててみせます。何かを掴みかけているはずなのに、形にできない――そんなもどかしい思いを抱えるセスタスに、ザファルはツルハシを地面に打ち込む時の筋肉の使い方を思い出せ、とのみ言葉をかけるのでした。

 そして予選準々決勝――雨が降り続く中で行われた試合で、相手の動きを冷静に読み、感覚を研ぎ澄ませたセスタスは、ヒットの瞬間に腕の全筋肉を締める打法に開眼! 拳に運動エネルギーを集中させる圧縮打法をクロスカウンターで叩き込み、対戦相手を一瞬で失神KOするのでした。そう、ツルハシ特訓は、この締めの感覚とタイミングを体に叩き込むためのものだったのです。

 師の教えが、自らの努力が無駄でなかったことに喜ぶセスタスは、素直に仲間たちに詫び、仲間たちも笑顔でそれを受け容れ――と、八方丸く収まったところにやってきたのが、前回から顔を出している「幸運な男」を自称する職業拳闘士・フェリックスであります。
 体格もセスタスと同程度ながら、同様にほとんど無傷で予選を勝ち進んできたフェリックスの底知れぬ実力を感じ取るセスタスと、セスタスから強力な運気を感じ取るフェリックス。互いを強烈に意識し合う二人ですが……


 というわけで、格闘技ものにはお馴染みの、何が役に立つのかよくわからない特訓が意外な成果を生み出すという展開の今回。その成果もさることながら――原作とは違い、KOシーンが結構あっさりめの描写なのは意外であると同時に、リアルとも感じます――これまで繊細なわりに外に爆発することが少なかった、セスタスのメンタル面が描かれたのが注目すべき点でしょうか。

 ちなみに冒頭に触れたように、今回原作にない描写がいくつかあり、セスタスが夜中までツルハシを振るっているのをエルナンドが目撃する場面、食事の最中にペドロとセスタスが特訓の件で口論になりかける場面などがそれで、今回どの辺りに力点を置いていたかが察せられると思います。(細かいところでは、試合開始前の待機時間に、落ちてくる雨だれをセスタスがジャブで打つシーンもオリジナルですが、これは動きのあるアニメならではの「心情描写」だったと思います)
 もう一つオリジナルといえば、街でサイコロ賭博に興じていたフェリックスがセスタスの噂を聞く(ついでにイカサマを見抜く)場面もそうで、今回のラストシーンに繋ぐと同時に、フェリックスの陽性で不敵なキャラを補強する描写として、なかなかよかったと思います。

 しかし――逆に原作にあってアニメになくなってしまったのは、セスタスの「モノマネ」シーンであります。このシーン、セスタスと仲間たちの和解の象徴である上に、何よりもあれこそ声がついた状態で見たかった(聞きたかった)のですが……楽しみにしていたのに!
 そしても一つ、「開眼」についてのナレーションも大塚明夫声で聞きたかったのですが、これもカットされてしまったのが残念であります。こちらはサブタイトルでもあったので、カットはちょっと不可解という気もいたします。


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