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2021.06.11

『セスタス The Roman Fighter』 第9話「幸運な男」

 互いの予感どおり予選決勝戦に出場したセスタスとフェリックス。フェリックスに速攻をかけるセスタスだが、いなしたフェリックスは独特の構えから左右の大振りを放ち、セスタスは一撃を食らってしまう。「赤き暴風」の異名通りの猛攻を仕掛けるフェリックスに、手傷を追ったセスタスは圧倒される……

 いよいよ予選決勝戦が始まった今回。試合が始まって以降は原作に忠実ですが、そこまでの随所に、前回同様にオリジナルの描写が挿入されています。

 妙に長くてだんだん不安になってくるアバンの前回のあらすじの後、描かれるのはセスタスの準決勝の戦いの模様と、それを偵察するフェリックスの姿。原作ではフェリックスが自身の口から偵察したことを語るのみで、実際に偵察する場面は省略されていたのですが――ここで重要なのは、フェリックスがセスタスのコーチがザファルであることを知るくだりでしょう。
 今のザファルの姿を見て、かつて「ヌミディアの拳狼」と呼ばれた男だと思い出し、その弟子を倒せば自分がザファルを超えたことになると闘志を燃やすフェリックス。今のようにメディアが発達していない時代にこれだけ知られているザファルの凄さを感じる――というか、アニメ版では好敵手であったデミトリアスがほとんど登場しないため、この辺りでザファルの凄さを描いているのかも、という気がしないでもありません。
(この先原作通りだったら、フェリックスは特にザファルのことを警戒せずに戦ってますし……)

 さて、決勝前夜になり、寝床に横たわって自分の過去――親友であったロッコの死から非情なヴァレンスの振る舞いといった拳闘士養成所のことを思い出すセスタス。ここもオリジナルですが、自分の自由がかかった――最初は100勝、今は10万セルティウスの借金を返さないといけないという状況で、大会に優勝すれば自由になれるというのは早道でしょう――戦いを目前にして、自分の拳奴としての原点を思い返すのは、理解できるところであります。
 さて、決勝戦当日ですが――あれ、何か観客の声多すぎませんか? 小屋みたいな闘技場なのに――音声流用したのかな、と失礼なことを考えていたら、きっちりと説明が。何とこれまでの予選で敗れて、出場費や掛け金やらをふいにした連中が、せめて決勝戦の賭けで損失を取り戻そうと押しかけてきたというではありませんか。これもオリジナルですが、これはこれでいかにもありそうで、かつ本作らしい殺伐としたシチュエーションであります。

 そして試合開始――冒頭に述べたように内容そのものは原作に忠実なのですが、やはり動きがつくと、また見え方が変わってきます。特に序盤の攻防、セスタスの速攻をフェリックスが完全に防御してみせる辺りは、同様の速攻で一発食らってストンといったしまったエムデンより強いのでは? と感じさせるのが巧みです。
 そしてフェリックスのターン、正対の前傾姿勢の腕ブラブラからの大振りパンチ連打の迫力もまた、動きがついてみるとまた違って見えるものがあります。(パンチを生み出す柔軟な肩関節の説明のところで、試合前の柔軟体操の画が挿入されるのも親切でイイ)

 そんなフェリックスの「赤い暴風」そのままのラッシュに追い詰められたセスタスが、反撃に出るかと思えば、不運にも足を挫いていて――という場面で、次回に続きます。しかしここでフェリックスは俺って恐ろしいほどの強運と勝ち誇ってますが、エムデン戦の時もセスタスが不運にも目の上を切ったことを思えば、単にセスタスが不運なだけの気も……


 というわけでスタートしたフェリックス戦。こうして見ると色々と丁寧に作られているのですが、それだけにこのクオリティでローマサイドをやって欲しかった――と感じてしまうのはファンの正直な気分ではあります。何度も何度も書いて申し訳ありませんが、これはたぶん最終回まで同じ感想を抱くことになるかと……


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