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2021.07.08

和月伸宏『るろうに剣心 明治剣客浪漫譚・北海道編』第6巻 見よ、金の亡者の覚悟と矜持!

 小樽での劍客兵器との対決もいよいよ佳境、この巻では阿爛と雅桐倫倶こと武田観柳の師弟コンビが死闘(?)に挑むことになります。金が全ての観柳の秘めたる矜持とは、そして戦いの行方は……。そして札幌では元新選組コンビの戦いも始まり、いよいよ戦いは熾烈を極めることとなるのであります。

 小樽での劍客兵器の実検戦闘――刀剣や拳銃を大量に流通させて治安を悪化させるという企てを阻むため奔走する剣心・左之助と明日郎・阿爛・旭。その最中、謎の武器商人・雅桐倫倶を捕らえた剣心たちは、その正体が、かつて東京で対決した武田観柳であることを知ることになります。
 しかし観柳も劍客兵器に利用された身。自分の新たなブランドである「雅桐紋」を利用されたことを怒る観柳は、金儲けに興味を示す阿爛を弟子扱いし、独自の動きを見せることになります。

 その最中に襲撃してきた斧號・於野冨鷹相手に激闘を繰り広げ、旭の援護を受けつつも成長の度合いを見せつけて快勝した左之助。しかし観柳と阿爛は、記號・本多雨読と対峙し、窮地に陥ることに……

 というわけで、観柳&阿爛vs雨読という異次元対決が繰り広げられるこの巻。鋭く研ぎ澄まされた本のページを飛ばす戦型・書・裏・剣に苦戦を強いられる二人――というより、本作においては戦闘力ゼロに等しいこの二人に戦いようはあるのか!?
 ……と思いきや、やっぱり大苦戦するのですが、ここで救援にかけつけた剣心を前に、観柳が最高に格好悪い、そして最高に格好良い姿を見せることになります。

 前巻でも触れられましたが、「力」と呼べるものを何一つ持たずに生まれて来た人間でありながら――いやそれだからこそ、這い上がるために金という力を求めた観柳。
 結局はその果てに道を踏み外した観柳ではありますが、しかしそんな金の亡者の彼であっても、そんな彼だからこそ、劍客兵器のような悪党にも、剣心のようなヒーローにも、決して譲れないものがある――ここで描かれるのは、そんな観柳の覚悟であり矜持なのであります。

 そしてそんな観柳の凄まじい姿に触発された阿爛も覚悟を見せ、そこから始まる二人の大攻勢(唖然としている剣心がやけに可笑しい)は、痛快としか言いようがありません。

 前作では、正直なところ単なる悪党に過ぎなかった観柳を、その行動原理の根底まで問い直して再生させる。そしてそこに三人組の中で今ひとつ目立てていなかった阿爛の成長譚を絡めてみせる……(さらにいえば、体力的には問題のある剣心を違和感なく休ませる)
 そんな作者の名人芸にはただただ唸らされるのです。

 いや、観柳、偏愛が過ぎるだろうというツッコミはあるにしても……


 さて、大波乱の小樽編は終結し、函館に再び不穏な動きが見える中、この巻のラストでは、札幌で、齋藤一&永倉新八&三島栄次の新選組生き残り+1が、新たな実検戦闘に挑むことになります。
 「斬奸」を掲げて明治政府の役人たちを次々と暗殺していく敵。ある意味、幕末の維新志士的な行動を取る彼らに――そしてその元維新志士たちである役人の下で――元新選組の二人が戦うというのは皮肉ですが、それを大して気にしていないのもまた、実にこの二人らしいと感じます。

 そしてこのエピソードでは、どうやら新選組に強い憧れを抱く栄次の視点から新選組という存在が捉え直されるのではないかと予想できますが――「札幌新選組哀歌」とサブタイトルが付けられているところを見ると、あるいはこの二人以外にも新選組関係者が登場するのかもしれません。

 エピソードの冒頭で二人と対峙している二刀流の部隊将・雹辺双との対決の行方も含め、まだまだこの先も気になる物語なのであります。


『るろうに剣心 明治剣客浪漫譚・北海道編』第6巻(和月伸宏&黒碕薫 集英社ジャンプコミックス) Amazon


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