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2021.07.19

『しゃばけ』20周年記念スペシャルアニメ化!?

 今年20周年を迎えた畠中恵の『しゃばけ』シリーズがアニメ化され、本日から配信開始されました。といっても3分強のスペシャルアニメという形ですが、これがシリーズファンにとってはたまらない、必見の内容となっております。

 妖の存在を見聞きし、言葉を交わすことができる薬種問屋兼廻船問屋・長崎屋の若だんな・一太郎と、実はそれぞれ妖の手代・仁吉と佐助をはじめとする妖たちが、様々な謎や騒動に挑む妖怪時代小説『しゃばけ』シリーズ。
 このサイトでもこれまでほぼ全作品を紹介してきましたが、その第一作『しゃばけ』が2001年に第13回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞し、シリーズがスタートしてから、今年で20周年となります。

 今年はそのメモリアルイヤーとして様々な企画が用意されているようですが(歌舞伎役者の朗読によるオーディオブックなども!)、その最大の目玉は、この20周年記念スペシャルアニメなのではないかと思います。

 このアニメ、監督は伊藤秀樹、キャストは若だんなを榎木淳弥、仁吉を内山昂輝、佐助は阿座上洋平という顔ぶれ。これだけでもなかなか期待できそうな布陣ですが――しかしわずか3分とはどのような内容なのだろうと思いきや、これがファンにとっては実に楽しい名場面集なのです。

 このアニメ、ちょうど前半部分はシリーズ第一作『しゃばけ』からシーンが選ばれていますが、後半は第二作から第六作――初期の作品集からの名場面で構成されています。
 以下、野暮を承知で採り上げられた作品タイトルを挙げれば――
 第二作『ぬしさまへ』から、「ぬしさまへ」と「空のビードロ」
 第三作『ねこのばば』から、「産土」と「たまやたまや」
 第四作『おまけのこ』から、「おまけのこ」
 第五作『うそうそ』(長編)
 第六作『ちんぷんかん』から、「鬼と小鬼」と「はるがいくよ」
といったところがチョイスされています。

 もちろんさすがに作品名を見ただけではすぐに内容が浮かばないかもしれませんが、例えば松之助の切なく辛い心情を描いた「空のビードロ」、佐吉が追い詰められていく様を描くシリーズ一のトラウマ作「産土」、そして若だんなと桜の精・小紅の儚い交流を描く「はるがいくよ」――と説明すれば、あれか! と思う方も多い初期の名作揃い。
 特に実質ラストを、セリフだけで泣かされる「はるがいくよ」で締めるというのは、これは心憎いチョイスと言うほかありません。

 そしてキャストの方もさすがに違和感なし(ただ、個人的には屏風のぞきはもう少しお調子者な感じでよかったようにも思いますが)。特に若だんな役の榎木淳弥氏は、実は先にアニメ化された『つくもがみ貸します』の清次に続く二度目の畠山作品の主役ですが、穏やかで若々しい声がはまり役といえるでしょう。
 また、ドラマ版や漫画版では妙に可愛らしくなってしまった鳴家が、この映像ではギリギリおっさん顔なのにきちんと可愛いという、デザインアレンジの妙も、印象に残るところであります。


 ……もちろん、どれほどのクオリティ、どれほどのチョイスの妙であってもあくまでも3分強の名場面集であります。
 これだけ見ても未読の方には何が何やらかもしれませんが――しかし、どれか一つの場面でも、心そそられるものがあればこれは成功でしょう。そしてファンにとっては、何より嬉しいプレゼントであることは、先に述べた通りであります。

 それこそ、もう二クールのアニメをそのまま作っていただいてもいい、いや是非作ってほしい――そんな気持ちになる映像であります。


関連サイト
 畠中恵「しゃばけ」新潮社公式サイト

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