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2021.07.14

藤田かくじ『徳川の猿』第4巻 総登場大天狗 猿、最後の戦い!

 将軍家斉の時代、徳川の世を揺るがさんとする太郎坊率いるテロ集団・天狗に挑む特殊部隊・猿の死闘を描くバイオレンス格闘アクションの完結巻であります。ついに明らかになった天狗の本拠とその真の目的。これを阻むために突入した猿の精鋭たちと、大天狗たちとの最後の戦いが繰り広げられます。

 江戸城大奥での死闘の末、自らの仇の一人にして大天狗の一人・相模坊こと日啓を討った月。一方、鈴の前には、かつて姉弟同然に育った許婚・不動が、次郎坊を名乗り現れることになります。
 その事実に大きな衝撃を受けながらも、月の助言で立ち上がり、自分の本当の実力を発揮した鈴。一方、天狗の後ろ盾となっていた大物の正体を知った黄金は、事の大きさから、猿のみにて対処することを命じられるのでした。

 数で勝る天狗たちに勝つには、少数精鋭しかないと覚悟を決めて集う猿のメンバーたと。折しも天狗たちは、法印坊ことモリアーティが開発した「飛ぶ船」による江戸襲撃目前、かくてここに江戸の命運を賭け、猿と天狗、最終決戦が繰り広げられることに……


 というわけで、ほとんど丸々一冊かけて、最終決戦が描かれるこの第4巻。天狗の後ろ盾であった豊前坊の正体は時代設定を考えれば予想がつきましたが、確かに大物中の大物であって、そうそう簡単に幕府が兵力を動かすわけにはいかないという設定も納得であります。

 そして始まる猿と大天狗の大決戦ですが――これまで半数ほどが未登場だった十二大天狗もなんと一気に総登場、それぞれが因縁の相手、あるいは似合いの相手と激突することになります。
(特に何故か「風雲・獅子丸」と改名した獅子丸は、隻眼の虎っぽい衣装の男・『霞返し』の僧正坊と激突することに……)

 因縁といえばもちろん鈴の相手は次郎坊こと不動――そして月の相手は、ラッフルズが送り込んだ最強の戦士「うつろ舟の女」。特にうつろ舟の女は、以前江戸城で三人の猿をあっさりと倒した実力の持ち主ですが、それ以前に、かつて月を完膚なきまでに叩き潰し、無惨な境遇に堕ちるきっかけとなった最強最大の敵であります。
 この強敵たちを向こうに回し、鈴は、月は勝利を収めることができるのか。そして天狗の頂点に座する太郎坊との対決の行方は――決戦に相応しい盛り上がりであります。


 もっとも、上で触れたとおり、大天狗の半数は初登場、その他の天狗も顔見せレベルの者が多く、ほぼ納得のいく顔合わせではあったものの、初対面同士の戦いも少なくなかったのは(獅子丸のような前世(?)からの因縁を除けば)残念ではあります。
 特に大天狗の大半が、本作の特徴の一つであった一種のクロスオーバーや、「実在」の(それも海の向こうからの)人物を思わせるものであっただけに、決戦に至るまでのシークエンスをじっくり見たかった、という気持ちは強くあります。

 とはいえ、月とうつろ舟の女との決戦は、ある意味実に本作らしい壮絶かつ――正直なところ、本作の女性同士の容赦ないバイオレンスが苦手だった自分のような人間にとっても――一種の痛快さすら感じさせるものであり、ページ数は多くないものの、納得の決着でありました。
 そしてまた、そのうつろ舟の女の正体、そして何よりもラストに明かされるある人物の正体は、一ひねりあるとともに、様々な理由で戦ってきた(戦いを選んだ、あるいは戦わされてきた)女性を描いてきた本作らしいものがあったと感じます。
(大天狗の登場確認のために最初から通しで読み返したのですが、早期から伏線が描かれていたのですね)


 もちろん、そうはいってもこの第4巻の展開・キャラクター描写が駆け足だったのは否めません(また、個人的には、描かれる技が基本的に現代の格闘技のそれに見えてしまうのも、最後まで気になったところでした)。
 その辺り、大いに惜しいところではありますが、最低限描くべきものは描いた結末であることは間違いないかと思います。


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