『長安二十四時』 第3話「午の正刻 遺された暗号」
狼衛のトゥガルを追跡する張小敬だが、トゥガルは民を人質に取った末、逆上した民衆に殺されてしまう。そのまま靖安司の秘書監・何執正の突然の命で身分を剥奪され、牢に収監された小敬。そこで先の騒動に関わった書生・程参と出会った小敬は、二人でトゥガルが遺した言葉の謎解きにかかるが……
前回ラストに意味ありげに登場した温室の花に水をやる老人――いかにも大物ムーブを見せる彼こそは、李必や太子たちの政敵である右相・林九郎でありました。アバンで側近たちを前に語る林九郎は、どう見ても本作の黒幕候補ですが……(何しろモデルが李林甫であるだけに)
さて、地図商人を殺して逃げたトゥガルを追いかけた小敬ですが、相手が逃げ込んだのは異教徒(おそらくゾロアスター教徒)が住む懐遠坊。そこで懐遠坊の住人を人質にとったトゥガルですが、前回彼に馬を奪われた上に乗り潰された書生・程参が逆上して襲いかかった末に大混乱となり、トゥガルと人質にされた里正が死亡――さらにトゥガルの懐にあった地図は、そのどさくさで何者かに持ち去られることになります。
それでもトゥガルから何か情報を聞き出そうとする小敬ですが、「黒い骨で転生の道を敷き、チェラホトが長安に降臨する」という譫言めいた言葉を聞き出せたのみ。そしてさらにそこで小敬に思わぬ横やりが入ることになります。
それは突然の官職剥奪――すなわち、罪人の身分に彼を戻すという命令。小敬嫌いの軍人・崔器が嬉しそうに小敬を捕らえ、牢に連行するのですが――しかしここで崔器に味方せず、反抗的な目を向ける姚汝能は、前回行動を共にして、少しは小敬のことを認めたのかもしれません。
そして李必の頭越しにその命を下したのは、靖安司の秘書監・何執正であります。「己の上司を殺し、熊火幇(流れ者集団と字幕には出ましたが、まあならず者集団なのでしょう)34人を殺した」という何執正、小敬が有名人なのか何執正が下々の事情に通じているのか、いずれにせよ死刑囚が狼衛捜索に加わっていることが、太子の不利になることを怖れたようですが――もう一つ、激昂した群衆から小敬を守るためにも見えるのが面白いところです。
何はともあれ牢にブチ込まれた小敬が出会ったのは、先ほどの程参。口から先に生まれたようによく喋る程参に、食いつきそうな視線を向ける小敬ですが――程参が色々と知識を持っていそうなのを知り、先ほどのドゥガルの末期の言葉、特に「チェラホト」の謎解きを持ちかけます。
前回も曹破延らが口にしていた「チェラホト」。小敬が知る異民族の言葉には出てこない言葉だというのですが――何ととんでもない博識だった程参は、「カリユガ」(末世)+「パハダラ」(火の難)=末世の火の難ではないかという推測を語るではありませんか。正直なところ、どうすればこの二つの言葉が出てくるのかわからないのですが、火の難というのは、何とも厭な予感がします。
一方、靖安司では何執正と李必が何やら禅問答のような会話を悠長に続けていたのですが――そこに入ってきたのは、焦遂なる人物が狼衛に殺害されたという報。焦遂? あ、第1話で親切に曹破延を助けたお年寄りかぁと思えば、これが何と何執正の親友――どうやら第1話で何執正がベロベロに酔っていたのは、前夜彼と一緒に呑んでいたためのようですが、思わぬ悲劇に、何執正もガックリであります。
しかし悪いことは重なるもので、その時靖安司に乗り込んできたのは懐遠坊の大司儀。懐遠坊で人死にが出たのは張小敬のせいだから引き渡せ、自分たちが裁くとねじ込んできた大司儀に応対する李必ですが、交渉は決裂――出るところに出てもいいんだぞと凄む大司儀に対し、靖安司は兵を出して身柄拘束とあわや一触即発のところに、威儀を正して現れたのは何執正であります。
そもそもは長安に潜入した狼衛を追っての捜査であったこと、そして証拠品の地図が失われたのは懐遠坊の民が狼衛と結託したと言われても仕方ないこと――その事実を冷静に突きつけ、大司儀を黙らせる何執正。さすがの貫目ですが、その間も小敬は牢に入ったまま。彼の発見ははたして外に伝わるのか……
というわけで、始動したと思ったら(それなりに理由はあるとはいえ)いきなり身内から足を引っ張られることとなった小敬。その分、靖安司と林九郎サイドの政治ドラマが描かれることとなりましたが、前回に比べると、溜めの回という印象は否めません。
にしても単なる犠牲者かと思いきや、思わぬ素性があった焦遂。この辺りの繋がりの意外さには感心させられますが、焦遂とは、やはり飲中八仙の焦遂でしょうか。何執正のモデルらしい賀知章が飲中八仙の筆頭であることを考えれば、まず間違いないと思いますが――まさかこういう役割で使われるとは!
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