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2021.08.09

士貴智志『爆宴』第4巻 梁山泊への道! 「水滸伝」の自分を超えていけ!

 全ての世界を取り戻すべく、水滸伝の英傑たちが戦いを繰り広げる異世界ファンタジー水滸伝『爆宴』は、この巻から新展開に突入であります。梁山泊に向かう晶たちの前に現れた新たな仲間たちと、強大な敵。梁山泊奪還のための戦いの行方は……

 徽宗皇帝と高キュウに支配された都市の地下迷宮で、伏魔殿に封じられていた洪大尉と対面した晶と仲間たち。その封印を解き、百八人の英傑の再転生を可能とした晶は、解放した都市を後に次の目的地に向かうことになります。
 その目的地とは――そう、梁山泊。全てを取り戻すための戦い、晶=宋江を中心とする百八人の戦いの起点にするに相応しいというより、そうしなければならない地であります。

 が、新たに仲間に加わった公孫勝の術によって梁山泊に転移したはずが、結界に弾かれてしまった一行。そのおかげで外側の転移ゲートを辿って行くことになったのですが――その一つに向かった一行が目にしたのは、半面が痣のようになった獣人と、襤褸を着た少年の対峙でありました。
 その場に割って入った史進は、ゲートを守る獣人に打ち掛かるのですが――しかし力及ばずに完敗を喫することになります。

 それを観ていた謎の少年は、史進の刀を持ち出すと、同じ技を使いながらも獣人を圧倒! そしてそれを観ていた魯智深の口から出た言葉は――「義兄貴」!
 何とこの少年こそは、以前獣人姿――しかも死後に傀儡とされた姿で登場した林冲。伏魔殿を解放したことによって転生し、新たな姿で現れたのであります。

 そしてなおもやる気の獣人――青面獣楊志を止めたのは、新たに現れた長髪黒衣の美女。彼女が名乗ったその名こそは、托塔天王晁蓋……


 というわけで梁山泊到着前に、次々と大物新登場のこの第4巻。上に述べたとおり林冲は再登場ですが(まあ改めて登場扱いということで)、驚かされるのは晁蓋の登場であります。

 言うまでもなく晁蓋は「水滸伝」では宋江の先代の首領。晶が言うように、自身が英傑としての風貌を持つ、正直なところ宋江よりも梁山泊の首領に相応しいようにも感じられる人物です。
 そして晶が(もうどう考えても原典マニアじゃないかというくらいに)「水滸伝」をよく知るからこそ、その実感は強いといえるかもしれません。本作の晁蓋が屈強な男性ではなく、自分と同じ女性、しかもより大人の女性だからからこそ一層……

 そして、自分より優れた相手の出現に不安や焦りに似た想いを抱くのは、晶だけではありません。もう一人、史進もまた同様の想いを、林冲に対して感じることになるのです。
 上で述べたように、楊志に一騎打ちで完敗し、その直後にその楊志を林冲が圧倒するのを目の当たりにした史進。それは、直接戦ったわけではないからこそ、より一層強く、重く感じられる実力差でしょう。

 原典同様、最初に登場した英傑である史進。これまでずっと晶の傍らで、彼女を守って戦ってきた史進ですが、ここで初めて壁にぶち当たったといえます。
 そしてその壁となったのが林冲というのはこれは原典同様。原典の史進は、正直なところ冒頭以外の活躍はいまいちのキャラクターなのですが――はたして彼は「水滸伝」での運命を脱することができるのか? 晶と晁蓋の関係以上に気になるところであります。


 そしてこの巻の後半で展開されるのは、晁蓋と晶たちによる梁山泊奪還のための戦いであります。いま梁山泊を占領しているのはこれまた原典通りに王倫。だとすればそれほど恐るに足らぬ相手と思えますが――しかし彼とは比べものにならぬ意外な強敵が、この段階で登場することになります。
 そしてこの強敵の代名詞というべきあの攻撃により、追い詰められる晶たち。この窮地からの逆転の一手を担うのは、晶と史進――というところでこの巻は幕となります。

 はたして悩める若者二人がここで何を見せてくれるのか、「水滸伝」の自分たちを超えていくことができるか――次の巻も期待であります。


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