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2021.08.17

「コミック乱ツインズ」2021年9月号(その一)

 今月の「コミック乱ツインズ」は、表紙が『鬼役』、巻頭カラーが『侠客』。『そば屋幻庵』が久々の登場のほか、特別読み切り『懊悩寺おつとめ日鑑』が掲載されています。今回も印象に残った作品を一つずつ紹介いたします。

『暁の犬』(高瀬理恵/原作:鳥羽亮)
 佐内と満枝の関係が進展(?)したり、新たな刺客・立木野さんの登場によりついに最後の標的が倒されたりと様々な展開がありつつも、ラストに登場した二胴の遣い手が全てを持っていった感のある前回。

 事態がいよいよ最終局面に入ったことを悟った佐内と根岸はそれぞれに覚悟を決めますが、そこでもう一人気合を入れたのは、蔓鳶の亀吉――益子屋の使う密偵の若者です。
 以前の佐内と根岸による襲撃の際、敵に偽情報を掴まされた亀吉。その屈辱を胸に、水野家を探った彼は、ついに二胴の剣士要請場を発見することに成功したのであります。……実は襲撃失敗の際、敵と繋がっているのではと疑っていたのですが、悪いことをしました。(しかしこの時代、あの土地は田舎の代名詞ですね……)

 一方、三日ぶりに家に帰ってきた佐内ですが、帰ってみれば満枝さんが食事の支度をして――という、ある意味ちょっとヒッとくる展開。ちょっと流連しちゃってさぁと悪ぶってみたものの速攻で見破られた上に、襟足にクラクラきている佐内、もはや陥落間近であります。
 そしてラストには、二胴の剣士を目撃して安否が気遣われていた立木野さんが佐内の道場に登場。どうやら佐内の父のことを知っているようですが……


『はんなり半次郎』(叶精作&篁千夏)
 久々登場の講釈師・川良堂の依頼で、人偏師(偽物作り)の原濃能胤と組んで新たな怪談噺の仕込みにかかる半次郎。ヒバゴンの腕やらカッパの腕、天狗の爪といった胡散臭くも楽しい品物を出してきた上で、半次郎が用意したものは……

 と、妖怪好きにはお馴染みのアレが登場する今回。それを中村半次郎に売りつけるべく薩摩藩邸に向かうところに襲いかかってしまった連中こそいい面の皮ですが、川良堂の新作も無事に成功して――というお話であります。
 例によって今回も脱ぐ半次郎ですが、題材が題材だけに(そして演出が演出だけに)それなりの必然性があったのが面白いところであります。しかし中村半次郎の登場は、ちょっと疑問符なのですが……


『ビジャの女王』(森秀樹)
 蒙古の猛攻によって風前の灯火のビジャに、ようやく駆けつけたインド墨家。墨家の使者にして常人の倍はありそうな巨漢ダルマダ・ブブの指揮の下、ついに反撃が始まるのですが、ブブが示した策は、兵士たちを困惑させるような意外なもので……

 と、墨家定番の(?)展開となった今回ですが、一見無意味な策でもって、ブブは蒙古軍に対し地味に精神的ダメージを与えることに成功。蒙古軍はこの策の背後にあるものを探るために間者を送り込むも、これもまた――というわけで、ついに入った反撃のターンは、まだ結果自体は地味ながら、連載開始以来ビジャが追い込まれる一方だっただけに、なかなかに気分の良いものがあります。
 策だけでなく、その巨体を活かして戦闘もイケるブブも、よく見ると結構イケメンで、前作(だから前作とは)とは好対照なのも、面白いところです。

 そんなブブの存在を、ベルゼブブに重ねて見るのは、腹に一物ある宰相のジファル。ブブ自身が語る、その名の由来はある意味正反対のものであるだけに、皮肉が効いているといえるでしょうか。


 次回に続きます。


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