『MARS RED』 第5話「ペルソナ・ノン・グラータ」
前田を欠いた状態で横浜に潜む英国のヴァンパイアを襲撃する零機関の四人。しかし突入した時には、ヴァンパイアたちは同士討ちで滅んでいた。そんな中、大量のランク外のヴァンパイアたちが解き放たれ、阿鼻叫喚となる街。そこに現れたのは装甲服のヴァンパイアの部隊・真の金剛鉄兵だった……
冒頭で描かれるのは、横浜の赤レンガ倉庫に潜む英国のヴァンパイアたちの姿。リーダー格の無駄に扇情的な美女二人は、欲望の赴くままに気に入った美少年をとっかえひっかえ喰らっているようですが――そんな彼女たちに仕えるのは、前回登場した謎の男ルーファス。女性ヴァンパイアたちからは「酒樽から生まれた」と露骨に蔑まれ、使用人扱いの彼もヴァンパイア――そして彼があのアスクラを開発した様子であります。慇懃に彼女たちに仕えるルーファスですが、どうやら腹に一物あるらしく、高純度のアスクラを意味ありげに主たちに勧めるのですが……
と、そのルーファスと前回何やら取引していた政府高官の沖村は、中島中将に対していきなり十六特務隊解散、金剛鉄兵計画の抹消を通告。それもほとんど即時にという急な扱いであります。前回の言葉は何だったのだ、というくらいのほとんど豹変ぶりに、中島中将も「ブレおって」と不快な顔を見せます。
一方、中将の腹心の前田大佐は、前回倒れた後そのまま病院に運ばれたようですが、病室に葵が入り込むは枕元の書類を漁られるわと病院のセキュリティはガバガバ。それはともかく、なおも人体発火事件の真相を聞き出そうとする葵を追い払う前田ですが、葵が持ち出した岬の手紙を見たことで、病院を抜け出し、帝国劇場に一人向かうことになります。そしてそこに現れたデフロットから、彼が岬に血を与えたこと、岬の最後の言葉を聞いた前田はそのまま姿を消すことに……
そんなわけで、組織解体目前ということも知らず、そして指揮官の前田を欠いた状態で、前回判明したアスクラの搬入先――赤レンガ倉庫に海上から小舟で潜入しようとする零機関のヴァンパイア四人組。敵側にはSクラスが予測されるにもかかわらず、いつもと違うのは重機関銃を用意していることと、クサヤと納豆の匂いを詰めたガス弾のみ――ガス弾で敵を怯ませて、そこに秀太郎とスワが突入、逃げた相手はタケウチと山上が銃撃という、敵の本拠を襲撃するには何とも心もとない作戦であります。
しかし秀太郎とスワが突入してみれば、あの美女ヴァンパイアを始めとする面々は、同士討ちでもしたのか、中毒したか、既に無惨な姿で事切れた状態。以前、町に出回っていたアスクラを口にしたヴァンパイアはやたらと好戦的になっていたことを考えれば、やはり暴走して殺し合ったのでしょうか。
拍子抜けの零機関ですが、しかしその時、英国のヴァンパイアたちが食料にした後に地下に閉じ込めていた無数のランク外のヴァンパイアが街に溢れ出ることに。このゾンビ映画のような惨状を前に、四人組がほとんど手をこまねいているの中、突如突入してきたのは装甲列車――そしてその中から数十人という部隊規模で出現したのは、装甲服に身を包んだ重武装の兵士たちであります。
ほとんど蹂躙というのが相応しいような有様で、ヴァンパイアたちを叩き潰していく装甲兵たちを目の当たりにして、山上は彼らこそが金剛鉄兵だと告げるのでした。
そして横浜での大混乱――何よりも英国からのSクラスのヴァンパイアが全滅したことに怒り心頭の沖村。どうやら英国からヴァンパイアを金剛鉄兵計画の代わりに呼んだのは彼(ら)のようなのでその心中もわからなくもありませんが――中島中将は金剛鉄兵計画の完成を告げると、冷徹に沖村を射殺。さて、中島中将の向かう先は……
まだ5話の時点にして、何となく敵地での決戦、組織解体というクライマックスに突入したと思いきや、それ以上に大変なことになってしまった今回。そもそも組織解体は、もう少しキャラや背景設定に馴染みが出てからするものでは(四人組は登場してからまだ4話ですし)という印象は否めませんが……
しかしそれ以上に謎なのは、真の金剛鉄兵計画――ヴァンパイアによる不死の部隊を作るというのであれば、今まで隠していたのは何故か。四人組はカムフラージュだったのか。そもそも金剛鉄兵たちは本当にヴァンパイアなのか(出陣の際に赤い液体を呷っていましたが)、だとすれば四人組と何が違うのか(そして存在を知っていたなら教えろ山上)。
まだ登場したばかりなので謎だらけなのはしかたありませんが――少なくともわかるのは、これだけのものを作っていれば、そりゃ予算は食うよなあ、ということであります。
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