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2021.08.07

『長安二十四時』 第7話「未の初刻 信望の結末」

 ついに瞳児から龍波の手がかりを聞き出した張小敬。しかし結果として間者を売った小敬に、かつての配下たちは絶縁状を突きつける。一方、単身、右相・林九郎と対峙した李必は、靖安司から手を引かせることに成功するが、その代償は全ての責任を彼が被ることだった。それでも彼の決意は変わらず……

 息詰まる魂と魂のぶつかり合いだった前回、可愛がっていた配下の小乙を売る形で、龍波の情報を知る瞳児と対面した小敬ですが――彼女が前回ラストに唄った歌は別に手がかりではなかったらしく、改めて手がかりが欲しければ、自分と恋人を自由にしろと言い出します。しかし葛の旦那の返事は、どちらか一人だけという、またもやプチデスゲーム的な条件。これに対して、瞳児は恋人を助けてくれと言う一方で、恋人の方は自分を助けてくれ――とは言っていないものの、小敬が男を表に出してやれば、必ず助けてやると言いつつ、瞳児を残してそのまま去っていってしまったではありませんか。
 それを見た瞳児はさすがに眼が覚めて小敬に全面協力。龍波が刺客に興味を持っていたこと、そして一度、廃屋敷に連れ込まれたこと、そこには驚くようなものが隠され、60人の一月分の食料があったと語るのでした。

 ついに大きな手がかりを掴み、地上に出た小敬と姚汝能ですが、そこで待っていたのは不良人たち――すなわち、小敬のかつての配下たち。小乙が小敬の手によって売られたことを早くも聞きつけた彼らは、もはや不良人と間者は小敬に協力することはないと、絶縁状を叩きつけてきます。これに対してあれこれ言い訳をしない小敬は立派ですが、しかし彼の武器であったかつての伝手が使えなくなったのは、非常に手痛いものがあります。
 それでも歩みを止めることなく往く小敬は、修政坊にあるその廃屋敷について、望楼経由で靖安司に伝え、崔器の部隊を呼ぼうとするものの、システム的に望楼からの通信は機密が漏れる恐れがある(言われてみればごもっとも)ため、姚汝能は自分が早馬で伝えに行くと説明。小敬は、援軍が来るまで単身潜入することを決意するのでした。

 一方、前回丸々待ちぼうけを食わされた李必の方は、ようやく右相と対面。といっても、右相は自分の一派の面々に今日の警護の手はずを整えるよう、わざわざ見せつけるように指示している真っ最中。しかしようやく右相と話すことができた李必は、これだけ忙しい時に狼衛捜索に手を割くのはいかがなものか、面倒はこちらにやらせればいいとこれを逆利用。何執正の灯篭の宴への出席についても、老臣を宴席に招かないのは、皇帝が重んじる礼に背く行いであり、聞こえがよろしくないと、こちらも納得の理屈であります。
 が、李必の言葉を認めたように見えた右相も、これまで出した被害や、死刑囚である小敬を使っていることを詰問。これに対して李必は全ての責任は自分が負うと答え……

 その頃、理不尽にも時を計る線香を途中で押し消し、強引に靖安司の権限を奪うべく龍武軍の兵を動かす陳玄礼将軍。靖安司の文官たちが追い立てられ、崔器もふてぶてしい態度のわりには何もせず――というところに駆けつけたのは李必であります。これでどうだとばかりに右相からの命令書を提示し、靖安司から手を引かせる李必ですが、命令書に記されていたのは、狼衛追跡に失敗し長安に混乱を招けば、たとえそれが配下のしたことであっても李必を罪に問うというもの。死傷者が出れば懲役、皇帝に脅威が及べば斬首もあり得るという、実に過酷な内容であります。
 さしもの龍武軍も渋々引き上げた中で、ついてこれる者だけついてくれば良いと語る李必。もちろん配下の皆さんは、その覚悟の前にはただ涙であります。

 そして覚悟を決めたのは李必だけではありません。(どう見ても)彼を慕っている檀棋も、何かあった際に彼女を巻き添えにすることを恐れた李必が、奴婢の身分から解放する旨記した書類をビリビリに引き裂き、運命を共にすることを決然とアピール。そして右相の不正の商人が殺された一件と関係があると思しき聞染が、店を売って真夜中に長安を発とうとしていると檀棋は報告して……


 と、ラストは何だか中途半端ですが(しかしこれが実に中国ドラマっぽい)、前回と合わせて小敬と李必、二人の覚悟が大きく状況を動かし、靖安司閉鎖の危機は避けられることとなりました。しかしどちらもそのために支払った(支払うことになりかねない)代償はとてつもなく大きいのですが――李必はともかく、小敬が何故そこまでこの件に入れ込むのか、姚汝能ならずとも気になるところであります。

 しかし見るからに無能で横暴そうだった陳玄礼、右将の命令書を読んで、李必に年齢を問う――すなわち、その若さで将来を棒に振る気なのかと気にかけるあたり、もしかしたらそんなに悪い人間ではなかったのか、という気がしないでありません。(史実では後に結構重要な役割を果たす人物ですが……)


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