« 『長安二十四時』 第11話「未の刻 忠誠を誓いし者」 | トップページ | 「コミック乱ツインズ」2021年10月号(その二) »

2021.09.14

「コミック乱ツインズ」2021年10月号(その一)

 「コミック乱ツインズ」誌2021年10月号は、表紙が一月おいて再開の『勘定吟味役異聞』、巻頭カラーは『ビジャの女王』。また、『カムヤライド』が久々の掲載です。今回も印象に残った作品を一つずつ紹介しましょう。

『ビジャの女王』(森秀樹)
 インド墨家の使者ダルマダ・ブブを迎えたことにより、ほんのわずか光が見えてきたビジャ。しかし追い詰められた中で商人は値を釣り上げ、怒った市民が暴れ――と爆発寸前であります。(ここでビジャの豊かさの理由としてビジャロマなる乳香の存在に触れられるのですが――何やら意味有りげな説明です)

 さて、そんなイヤな状況で、いきなり雨戸みたいなデカい板を持って、その下から足だけ出したというシュールな絵面で突っ込んでくる蒙古軍。射掛けてくる矢をすべてこれで受け止め、城壁に取り付いたと思ったらバッと板を捨て、その下から現れたのは――これはちょっと現物を見てほしいのですが、冷静に考えるとかなり微妙な姿(『血だるま剣法』を思い出した、と書くと怒られるかしら……)を画力で押し切るという名人芸には脱帽であります。

 そして真上から射てくる矢をこの珍装備で受け止め、城壁を登ってくる蒙古兵。その間、指揮官たるラジンは、ゲッスいエロ親爺感満載でここでは記せないような言葉を連呼――いやこれは士気下がるでしょう。味方の。
 ブブの妙技で一瞬ラジンを黙らせたものの、ついに敵兵は城壁を乗り越え――という絶体絶命のピンチで次回に続きますが、冷静に考えると、これまで思ったほどインド墨家が役に立っていない印象があります。次回、逆転の秘策はあるのか?


『暁の犬』(高瀬理恵&鳥羽亮)
 ついに二胴の刺客の前に益子屋側でも犬使いの瓢三が犠牲となり、いよいよ風雲急を告げる情勢となってきた物語。そんな中、道場で日常を過ごしていた佐内ですが、門弟の岡田は、佐内の裏稼業にはとっくに気づいている様子であります。しかし本作を読んでいると非常にに疑り深くなる(いまだに満枝さんのこと疑ってます)ので、この岡田の存在も怪しく見えて仕方がありません。

 それはさておき、そんな佐内を訪ねてきたのは、同じ益子屋子飼いの体術の達人、立木野伝蔵。以前佐内の父とは組んで仕事をしたことがあるという立木野は、瓢三が斬られた場を目撃したことを語り、佐内に助言しにきたというではありませんか。
 まずは手合わせを、しかも真剣で、といういきなりすぎる申し出に戸惑いつつ道場で対峙した佐内ですが、立木野の凄まじい技に一蹴されようやく本気に。が、それでも立木野の凄まじい寄り身の迅さに屈することになります。そして立木野は語ります。自分以上の寄り身の迅さこそが、二胴の刺客の恐ろしさだと……

 佐内の居合であれば勝てる、しかしそれには捨て身にならなければならない――そのためになるべきものとして立木野が挙げたものとは? ……いや立木野さん、変なところで生真面目な佐内を焚き付けないでください! 最近ようやくちょっと人間っぽくなってきたのに、なんだかさっそく据わった目になってしまって!
 という読者の悲鳴はさておき、いよいよ二胴の刺客の正体も明らかになりそうなところで、次回は再来月というのが残念です。


『仕掛人藤枝梅安』(武村勇治&池波正太郎)
 江戸の暗黒街を巡る抗争もいよいよ終盤。白子屋の後釜を狙う切畑の駒吉と江戸の羽沢の嘉兵衛が結び、音羽の半右衛門邸を急襲、そこに北山要之助も参戦しての大乱戦――その末に襲撃は失敗、半右衛門は難を逃れましたが、この抗争がそれで終わるはずはありません。
 ここから半右衛門の逆襲、と思いきや、その前に悪党同士の醜い仲間割れが発生。そしてその機に乗じて梅安が……

 と、ここのところ完全に脇に退いていた感のある梅安がついに動いた今回。いよいよ決着は間近といったところですが、それ以上に印象に残ったのは要之助の言葉であります。きまぐれな殺人鬼ながら、実に池波感溢れるセリフで、なかなかに存在感のあるキャラクターとなってきたと感じます。

 そして職と新しい名を得られることとなり、ようやく裏稼業から抜け出す機会を手にした小杉さんですが、そ、その名はマズすぎる――!


 以下、次回に続きます。


「コミック乱ツインズ」2021年10月号(リイド社) Amazon

関連記事
「コミック乱ツインズ」2021年1月号
「コミック乱ツインズ」2021年2月号(その一)
「コミック乱ツインズ」2021年2月号(その二)
「コミック乱ツインズ」2021年3月号
「コミック乱ツインズ」2021年4月号(その一)
「コミック乱ツインズ」2021年4月号(その二)
「コミック乱ツインズ」2021年5月号(その一)
「コミック乱ツインズ」2021年5月号(その二)
「コミック乱ツインズ」2021年6月号(その一)
「コミック乱ツインズ」2021年6月号(その二)
「コミック乱ツインズ」2021年7月号
「コミック乱ツインズ」2021年8月号(その一)
「コミック乱ツインズ」2021年8月号(その二)
「コミック乱ツインズ」2021年9月号(その一)
「コミック乱ツインズ」2021年9月号(その二)

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

|

« 『長安二十四時』 第11話「未の刻 忠誠を誓いし者」 | トップページ | 「コミック乱ツインズ」2021年10月号(その二) »