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2021.09.23

『長安二十四時』 第12話「未の刻 裏切りの予兆」

 聞染の香を頼りに彼女の跡を追う張小敬と崔器。その頃、新たに二人の狼衛を仲間に引き入れた龍波たちは、いよいよアジトを発とうとしていた。曹破延らが時間稼ぎのために残ったアジトに近づく小敬だが、その頃嫉妬に燃える魚腸は聞染を殺そうとしていた……

 冒頭で描かれるのは記録坊の史書で狼衛のことを調べていた李必が、探していた部分が破られていたことから徐賓の仕業と疑い、彼を拘束、記録坊の鍵を没収する一幕。さすがに過剰反応では? という気もしますが……

 一方、犬を利用して聞染(の香)を追っていた張小敬と崔器は、犬の鼻が回復するのを待ちながら、しばしダベることになります(「ミントよこせよ」「しょうがねえなあ」的な男臭いやりとりが実にいい)。そこで明らかになるのは、崔器の人となり――長安を初めて訪れた時、兄に三日三晩、街を案内されて様々な人間と出会った。俺は王族や貴族ではなく、そんな市井の人々を守りたい……
 そのために出世しなくては、という目標はともかく、地方軍に参加していたという経歴を含めて、この男、実は小敬とあまり変わらない志を持っているのでは!? と驚かされたこのくだり。これまでニヤニヤクチャクチャしてばかりの男と思っていましたが、わずかな時間でキャラの印象をガラリと変えてくる巧みな演出に感心です。

 そしてその頃、昌明坊の龍波のアジトにやってきたのは、右刹の使者だという二人の狼衛――マガル曰く戦神と恐れられるルーダーとルイゴ。つまり右刹の側近、最強の戦士ということか!? という期待は、しかし次の瞬間二人が魚腸に叩きのめされて土下座というギャグのような展開で、マガルたちの尊敬の念もろとも粉砕されます。さっそく殺しにかかる魚腸を止めて、二人を説得して仲間に加えた龍波は、いよいよ真・チェラホトに向けてアジトを出発しますが――足がつかないようにアジトを破壊するために後に残ったのは曹破延たち。当然というべきか、生還確率は極めて低いミッションですが……

 一方、檀棋が告げた小敬の言葉に対し、そのとおり聞染(実は王ウン秀)の解放を命じる永王。母の位牌の前で小敬の縁者には手を出さないと誓ったと、たぶん中国では最高レベルの約束をしたとのことですが(どれだけ小敬が怖かったの永王……)、それに不満顔の封大倫に対して、小敬本人については、大理寺の評事に命じて囚人の引き渡しを求める公文書を書かせろ永王は命じます。そして王ウン秀も、大理寺に引き渡されることに……

 大理寺といえばかのディー判事もいたところですが、ここで白羽の矢を立てられた男・元載は――何というか、とてもふくよかな女性たちを集めておしくらまんじゅう状態にして、その中で暖を取るというインパクト満面のビジュアルで登場。何かそういう特殊な趣味がある方なのかと思いきや、単純にボロ屋で寒いので暖房代わりの様子です。
 しかしその支払いをケチるというセコさ――というより貧乏ぶりのようですが、本人はその才能を自負しているらしく、いい屋敷に住みたいとか、お偉いさんの娘と結婚したいとかブツブツ言っております。この辺り、史実を知っていると大いに笑えるのですが――召使らしいこれまたコロコロした少女とのやりとりも愉快な元載。しかし立ち位置的には敵に回りそうなのが不安です。

 そんな動きも知らず、ようやく昌明坊に近づいた小敬と崔器ですが、この辺りに軍の望楼はなく、空き屋敷が多いと、如何にも潜伏には適した地域なのを知った小敬は、崔器に援軍を連れてくるように命じます。その報は李必にも伝わりますが、その時彼は姚汝能と靖安司に潜むらしい内通者の存在について話している最中。冒頭の徐賓への処置は、内通者のあぶり出しのためだそうですが、どう考えても目の前の人が怪しい……
 そして犬を連れてただ一人先に進む小敬の前に立ち塞がったのは、賈十七なる浮浪者をリーダーとした三人組――ですが言うまでもなく小敬はこれを瞬殺。曹破延に雇われたこいつらはどう考えても時間稼ぎにしか思えませんが、その頃大事件が発生します。

 龍波と距離が近い(ように見た)聞染に対して魚腸の殺意が爆発、辛うじてマガルがこれを止めたものの、今度はマガルに殺させようする魚腸。女子供は殺さないというマガルは、聞染に井戸に飛び込めと命じ、彼女はやむなく従うのですが――水落ちは生存フラグとはいえ、魚腸の暴走ぶりをどうすべきか。
 いずれ彼女についても、そのキャラが深掘りされると思いますが――最初は龍波に利用される哀れな女性かと思われたのが、今ではむしろ龍波のストーカー状態で、全く感情移入できないのが正直なところです。


 というわけで、全体の1/4に達したものの、まだまだ先は見えない状況の今回。冷静に考えると今回は大きな動きはなかったものの、様々な場所で並行して事態が進行するため、全く停滞している感はありません。しかし、そろそろ色々な意味で大爆発しそうですが……


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