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2021.09.07

『長安二十四時』 第10話「未の刻 重なる面影」

 王ウン秀(実は聞染)を人質にされて曹破延らを逃した事実を伏せて、狼衛を壊滅させたと報告する崔器。その報に沸き返る靖安司だが、確認のために李必に送り込まれた檀棋は、死体の中に曹破延がいないことを見破る。そこで意識を取り戻した張小敬は、自分のせいにしろと崔器に告げる……

 アバンタイトルは、狼衛壊滅の報が入る中、相変わらず何事か鍛冶仕事的な作業に勤しむ龍破と魚腸のやりとり。何故狼衛のアジトがバレたのか、自分が女を連れ込んだためと気付きつつも、魚腸が妓楼の札を隠れ家にわざと残したせいではと言う龍破は(確かにその通りなのですが)、いつか彼女に刺されると思います。
 それはさておき、狼衛が壊滅したと聞いてもあまり驚かず、龍破はチェラホトが降臨すると語るのですが、これは一体……

 さて、その(元)狼衛のアジトで、前回ラストに王ウン秀(のふりをした聞染)を人質にされて、曹破延とマガルを逃してしまった崔器。腹心の部下を派遣して周囲を探させましが、既に三人は仮面の芸人に化けて(聞染の巧みすぎる演技もあって)その場を脱出済みであります。追い詰められた末、とりあえず後で捕まえればいいだろ! という感じで靖安司本部には狼衛壊滅(そして小敬は失踪)と報告、靖安司は歓喜に沸き返るのですが――そこで油断せず、きっちりと確認のために檀棋を送るのが李必らしいところであります。
 そしてアジトにやってきた檀棋は、狼衛一人ひとりの死体の身長を、曹破延のそれと照合し始めるのですが、さすがにこれは崔器も予想外だった様子。そして狼衛たちと一緒に転がされていた小敬も檀棋に見つけられ、一瞬意識を取り戻して軽口を叩くのですが、やはり無理を重ねたのが祟ったか、再び意識を失います。

 そして小敬が思い出すのは、聞無忌と最後に会った日のこと――不良帥の仕事での長旅(このあと小敬に殺される上役に押し付けられたようですが)から帰って聞無忌の店を訪れてみれば、何だか隊長(と無忌のことを呼び続ける小敬が微笑ましい)の様子がおかしい。そこで彼が外出した間に聞染を半ば叱りつけて聞き出したのは、この店が熊火幇の地上げのために様々な嫌がらせを受けており、無忌はその交渉に出かけたという事実。しかしほどなくして帰ってきた無忌は深い傷を負っており、聞染のことを小敬に託してそのまま帰らぬ人に……
 と、この辺りの事情は正直なところ予想通りでしたが、印象に残ったのは、無忌に不良帥として奔走する理由を問われての小敬の言葉でしょう。長安に来るのは仲間たちの夢だった。仲間に変わり俺たちが夢の中にいるが、夢は美しくないとな――と。当然この仲間とは、あの戦場で死んでいった者たちのことでしょう。そしてそんな小敬の想いが、今でも彼を突き動かしているのか――?

 そんなこんなで時間は過ぎ、名もない靖安司の役人が「もう三日も帰ってないんですが、狼衛も滅んだし今日は早上がりして良いですか……」と勤め人には身につまされるようなことを言い出したり、靖安司を閉めて太子のところに行こうと姚汝能が呼びに来たりという状況の中、それでも状況確認は止めない李必。そしてその心配は当たり、檀棋は、死体の中に曹破延がいないことを確認するのでした。
 強がってもバツの悪い表情は隠せない崔器ですが、そこに割って入ったのは意識を取り戻した小敬。俺が手柄のためにやったと言えばいいと崔器に提案した小敬は、崔器の話を聞いて、彼が王ウン秀だと思いこんでいた女性は聞染だと気付くのでした。(一方、本物の王ウン秀の方は、聞染と間違えられて熊火幇に捕らえられることに……)

 何はともあれ、靖安司に急ぎ戻ろうとする檀棋に対し、小敬は「張小敬の縁者を離せ」と永王に伝えろというのですが――しかし永王の配下である熊火幇に捕らわれているのが、聞染ではなく王ウン秀なのは、崔器とのやり取りで既に気付いているはず。一方、檀棋は逆に小敬に対して、聞染に靖安司が一番安全と伝えてと告げて去るのでした。


 前話で起きた出来事のフォローとおさらいという印象もある今回ですが、やはり気になるのは聞無忌の死と、現在の小敬を動かす動機との関係でしょう。明らかに命を捨ててかかっている小敬には真の目的が別にあるのか? それはまだまだわかりません。

 一方、面白かったのは小敬と檀棋のやり取りで、以前から何かと艶っぽい方向に持っていこうとする小敬と全く取り合わない檀棋という関係性が、今回はほんのわずかばかり変わっていたようにも感じられます。小敬が本気で檀棋に粉をかけているのか、これまたわかりませんが、ある意味非常にストイックな小敬だけに、やはり真意が気になるのです。

 そしてもう一つ、聞染が語った、私たちが右刹の主、という言葉の意味も……


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