『MARS RED』 第9話「疑念」
零機関の仲間を求めて帝都を彷徨う秀太郎は、月島近辺に子供のヴァンパイアを殺しているマスクの男がいるという噂を聞く。向かった先の地下基地で、前田からスワたちへの自分を討てという司令レコードを聞いた秀太郎。そこに現れたスワと激しくぶつかり合う秀太郎だが……
前回に引き続き、荒廃した帝都を仲間を求めて彷徨う秀太郎。昼は人々が少しずつ町の復興に勤しみ、夜は徘徊するヴァンパイアたちを紅い――じゃなく赤眼鏡の金剛鉄兵たちが狩る、そんな自分には身の置きどころのない世界を、秀太郎は目の当たりにするのでした。
しかし収穫もなく千本鳥居の天満屋に帰った秀太郎は、前回保護した少女のヴァンパイア・彩芽から、月島近辺で子供のヴァンパイアたちを狩る者がいると聞かされます。マスク姿でナイフを得物に使うというその姿はどう考えてもスワですが、そういえば第6話でスワたちは月島に潜入して以来行方不明……
かくて月島地下の、かつての第十六特務隊基地に向かった秀太郎が耳にしたのは、地下から響いてくる何者かの声。急いでそこに向かった秀太郎は、前田の声で吹き込まれたレコードが回っているを目の当たりにすることになます。そしてその声は、ヴァンパイアの抹殺を――幼生(つまり子供)だけでなく秀太郎までも対象に命じていたのであります。
あまりに理不尽なその命に愕然としながらなおも進む秀太郎が見たものは、事切れた子供のヴァンパイアと、その傍らに立つスワの姿――やはり噂は、そして先程の命令は真実だったかと愕然とする秀太郎に刃を向けるスワ。激しくぶつかり合う二人のヴァンパイアを分けたのは、転がってきたクサヤ爆弾――そう、タケウチであります。
これが用済みの自分たちを同士討ちさせようとする罠だと見抜いたタケウチの言葉で和解する秀太郎とスワ。震災以来、タケウチの私的な隠れ家に潜んでいたという二人を、秀太郎は千本鳥居の天満屋に誘います。
そこで改めて情報交換する三人と天満屋。ヴァンパイアワクチンの正体は、自分が研究していたものにアスクラを赤羽辺り――戦前の赤羽は軍都と言われるほど陸軍の施設が多く、そこに造兵廠などもあったわけで――とタケウチが語る(ここで「中島のガキが!」と忌々しげにいうスワ300歳がちょっと可笑しい)一方、若旦那は増えてきたヴァンパイアたちを北関東の某所にあるらしいヴァンパイアの隠れ里に連れていくことを考えていると語ります。しかしそれまでの食料(血液)が保つかどうかという若旦那に、タケウチは悪い笑顔で当てはあると語るのですが……
そしてスワ曰く中島のガキはといえば、金剛鉄兵によるヴァンパイア狩りの実績をいつぞやの陸軍上層部にアピールするも、例によって軍縮が求められる昨今ではすぐに採用は難しい、東京が復興してから――と躱されるばかり。さすがに沖村のように暗殺はしないようですが、しかし中島は極めて不快な表情を見せます。
一方、おそらく日比谷の帝国ホテルでは、すっかり生きる気力を失ったかのようなデフロットが、葵に対して「自分は舞台を降りた」と語り、そしてさらに何処かかでは、赤い瞳をした前田が……
と、実をいえばラストの姿も前田なのか今ひとつ自信を持てないほど作画的には結構苦しい印象の強かった今回。メインとなる秀太郎とスワの激突も、ルーファスの声真似で吹き込んだレコードによるものだった、というのはちょっと気が抜けます。
もっともそのルーファスは相変わらず何を考えているのかわからない態度(子供のヴァンパイアの血で汚れた床に自分でモップがけする等)。以前から金剛鉄兵をダニーボーイと呼んでいるのも、奇妙な印象を残します。(元々が子供を戦地に送る親の歌と言われているので、自分と金剛鉄兵の関係を皮肉っているのだとは思いますが)
一方、スワの方も、子供のヴァンパイアばかり殺すというのはフェイクだったにせよ、子供でも容赦はしないのは間違いないと感じさせるのが彼らしいところ。。
そして子供のヴァンパイアが飢えに耐えかねて日向のネズミを捕まえようとして焼け死ぬ姿を見て言葉を失う秀太郎に対して、子供のヴァンパイアの「生き辛さ」を冷徹に告げるのは、自分が決して大人という年ではない頃にヴァンパイアにされて生き続けてきた彼ならではの言葉として重みがあります。
それにしても、いまだ各勢力の思惑が絡み合わない状態ですが、今回天満屋が語った企てが、クライマックスに繋がっていくということでしょうか……
『MARS RED』Blu-ray BOX II(バップ Blu-rayソフト) Amazon
関連記事
『MARS RED』 第1話「陽のあたる場所」
『MARS RED』 第2話「死が二人を分かつまで」
『MARS RED』 第3話「夢枕」
『MARS RED』 第4話「歌知らずの歌」
『MARS RED』 第5話「ペルソナ・ノン・グラータ」
『MARS RED』 第6話「さいごの青空」
『MARS RED』 第7話「手紙」
『MARS RED』 第8話「煉獄」
唐々煙『MARS RED』第1巻 人間の中のヴァンパイア、ヴァンパイアの中の人間
唐々煙『MARS RED』第2巻 人間と「人間的な」ヴァンパイアの狭間で
唐々煙『MARS RED』第3巻 決戦、そしてヴァンパイアたちの最後の任務
![]() |
Tweet |
|
| 固定リンク