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2021.10.09

音中さわき『明治浪漫綺話』第3巻・第4巻 交錯する二つの物語 そしてヴァンパイアの王の力

 明治の女学生もの+ヴァンパイアものというユニークなロマンスもいよいよ佳境。紆余曲折を経てようやく鹿鳴館の夜会に出席することになった十和。しかしそこでルイスの存在を巡り、思わぬ惨劇が引き起こされることになります。絶体絶命の危機に、ルイスは、十和は……

 東京の華族・日与守家に迎えられ、思わぬことから美しい異国のヴァンパイア・ルイス先生に指導を受けることになった十和。しかしルイスを王と崇めるヴァンパイアの襲撃によって、十和は傷を追うことになります。
 しかしその傷も癒え、険悪だった華族女学院の麗子と女高師のちよも、十和の見舞いをきっかけとして関係は改善。三人は人気作家・戀加波トメの作品の話題で盛り上がるようになるのでした。(ちなみに絶対この作者の正体は、作中に既に登場していると思う……)

 そして一致団結して鹿鳴館での舞踏会に臨むことになった女学院と女高師の生徒たちですが――何とそこに十和の婚約者(候補)も姿を見せるというではありませんか。
 実は事業に失敗し、埋め合わせに諸外国からの資金を入れようとしているほど追い詰められていた、日与守の本家。その状態から家を救うためには、十和が商家に嫁入りするしかない、という状況だったのです

 ルイスに対する離れ難さを感じつつも、家のために覚悟を決めた十和。そして当日、色々な出来事はあったものの、舞踏会は無事に終わるかと思われたのですが――一瞬の耜を突いて、国粋派が仕掛けたと思しい爆弾が爆発することになります(というかこれ、東の文字通り自爆では……)。
 そしてその混乱の最中、ヴァンパイアに恨みを抱く者の銀の銃弾がルイスの心臓を貫き……


 と、第3巻では鹿鳴館に至るまでの比較的静かな――ヴァンパイアものの要素はあまり全面に出てこない――展開であった本作ですが、第4巻では1/3まで来て、一気にヴァンパイアものとして盛り上がることになります。

 ヴァンパイアの王として生み出されながらも人間に親しみ、人間と共に生きてきたルイス――普段は女学院の教師としてにこやかな顔を崩さないで来た彼は、ある意味破格の存在といえます。
 しかしそんな彼のヴァンパイアとしての真の力と、そのある意味業というべき姿が、ここに至り、ついに描かれることになるのであります。

 第2巻でも触れたように、クラシックなヴァンパイアもののようでいて、かなり本作オリジナルの設定が展開するのがユニークな本作。そしてここで描かれるルイス――そしてその眷属たる東の設定も、なかなかに意外なものといえるでしょう(そしてその設定自体、以前にサラリと東自身が語っていたのも面白い)。

 そして以前から疑問に感じていた、ヴァンパイアの王であるルイスが、人間社会の中である意味自由に暮らしているという事実ですが――その理由についても、第4巻において明かされることになります。
 第2巻の回想シーンでは幼いヴィクトリア女王に仕える姿も描かれたルイスですが、彼と人間の関わりはそれだけ古く、深いもの。そして同時に、決して友好的なだけのものではなかったことが、ここにおいて判明することになるのであります。

 そして同時に、その関わりが新たな争いの火種になることもまた……

 ヴァンパイアを、人間と敵対する単なる吸血の怪物として描くのではなく、そして同時に人間を超えた一種の超越者として描くのでもない――そんな関係性を、一人の少女の目を通じて描いてみせる本作。
 第2巻でルイスを(ある意味)狙うヴァンパイアが倒され、この先どうなるのだろう――と思いましたが、なるほどこう来たか、と感心いたしました。


 そして第4巻まで至り、十和の側の物語とルイスの側の物語も大きく交わることとなって、物語も一つのクライマックスを迎えたように思えますが……

 十和の婚約者が(裏があるのではと心配になるほど)ストレートに好人物すぎて、人間として(?)ごく普通に幸せになってほしいと思いつつ、なかなかそう簡単には収まらないだろうな――などと、この先の展開が素直に気になってしまうのであります。


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