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2021.10.01

『MARS RED』 第10話「通り過ぎし、夏の夜の夢」

 デフロットに対し、帝国ホテルのロビーを使って劇をやってほしいと持ちかける葵。その頃、秀太郎たちは濠の中からタケウチが隠した荷物を引き上げていた。劇は無事に上演されたものの、デフロットを誘い出すためにルーファスに攫われてしまった葵。月島の施設を訪れたルーファスを待つものは……

 今日も今日とてヴァンパイアが徘徊し、金剛鉄兵たちがそれを叩き潰していく帝都の夜。そんな地獄絵図を目の当たりにして、もはや「生きる」気力を失ったデフロットですが――そこに現れたのは葵。あの岬が残した衣装を手にして、デフロットに帝国ホテルのロビーを使って、「オルフェウス」を演じて欲しいともちかけるのでした。
 もしかして自分が岬の代わりを――? と一瞬思いましたが、さすがにそんなことはなく、あくまでもチャリティー公演をプロデュースするつもりの葵(そしてそれに巻き込まれる人の良い編集長)。そんな彼女を前にデフロットは、ヒロインのエウリディーチェとの結末を変えていいなら、と応諾するのでした。

 その頃、特務隊近くの濠の中から、大きな荷物を引き上げた秀太郎とスワ(潜らされたスワが一応文句は言っていたものの、本作のヴァンパイアは水はそこまで弱点ではない模様)。その中から出てきたのは――大量のスカンクボール、はともかく、タケウチがかつて研究していたヴァンパイアの血液や数々の発明品、そして空を飛ぶ機械の図面等々、タケウチ以外には役に立ちそうにないアイテムの数々であります。
 この血液を使ってヴァンパイアに太陽光線がもたらす影響を研究し、ヴァンパイアも年を取るようにできるかもしれないというタケウチ。子供のヴァンパイアたちは喜んでいますが、完成まであまり時間がかからないといいつつ、それが百年二百年というヴァンパイア時間でケロッと言う辺り、やはりタケウチは危険過ぎます。

 そして秀太郎とスワが今度は隠しておいた食用血液を確保していた間、無事上演されるオルフェウス。舞台上で死を疑似体験してスッキリとした表情のデフロットですが、楽屋に残されていたのは、ルーファスの手紙――中島から葵の情報を得ていたルーファスは、彼女を攫ってデフロットを月島に誘き出したのであります。
(といっても葵の情報は秀太郎の関係者としてだったはずですが、あくまでもデフロットを相手にしたかったらしいルーファス)

 初めて訪れた月島で、岬のサロメのレコードが流れていることに眉を顰めつつ、基地の奧に進むデフロット。ようやく葵を見つけて近寄ったものの、そこは屋根が開閉可能の格納庫のような空間――まんまとデフロットを誘き出したルーファスは、全ての屋根を開放して、デフロットをまさに白日の下に晒そうとしていたのでした。
 が、そこに現れた何者かの影。「岬――バヴァンパイアを排除する」と呟くその声は前田ですが、その目は赤く輝き……


 と、ヴァンパイア前田がようやく動き出し、前門の虎後門の狼という状況のデフロット――という展開ですが、その間秀太郎たちはといえば、皆でタケウチ発明の飛行装置の製作に夢中と、全くデフロット側の話に絡まないのもすごい。というより本作の場合、今の所、秀太郎サイドとデフロットサイドを結ぶ葵の立ち位置が後者に偏りすぎていて、両者の物語が全く繋がっていないという大きな欠点が、今回特にはっきりした印象があります。
(しかし両翼がそれぞれ20mというのは、ジェットスクランダーどころではない巨大さでは……)

 それはさておき、デフロットが舞台に拘るわけがはっきりと描かれた今回。おそらくデフロットが演じたのはグルックのオペラなのかなと思いますが、オリジナルではエウリディーチェが甦ってハッピーエンドなのに対し、デフロットはわざわざ結末を変えて心中エンド――と、舞台の上なら好きなだけ死ぬことができる! というのは、確かに屈折はしているものの、それなりに納得のいくものではありました。

 しかしデフロットも足を止める日光が降り注ぐ場に現れた前田、このシチュエーションで活躍できるのか、ちょっと心配ではあります。


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