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2021.10.31

『半妖の夜叉姫』 第29話「りおんという名の少女」

 結界を抜けた三人に、父を倒して欲しいと語るりおん。実は彼女は600年前に命を落とし、魂が産霊山に封じ込められていたのだ。しかしせつなが父との悪縁を斬ったことから、自分の力で歩くことを誓うりおん。そこに山を守る妖霊獣が出現、りおんはとわに吸妖魂の根が変化した星斬りの笛を託すが……

 前回ラストでとわ・せつな・もろはの前に姿を現し、自分が麒麟丸の娘だと語ったりおん。しかし彼女は吸妖魂の根を差し出し、父を倒して欲しいと語ります。何だかいきなりのちょっと都合の良い展開に、これは何かの罠なのか、もしくは彼女は第三勢力にでもなるつもりか――と一瞬深読みしてしまいましたが、すぐにその理由がわかります。

 実は600年前に命を落としていたというりおん。しかし麒麟丸は彼女の魂をこの産霊山に封じて成仏(?)させず、夢の胡蝶を使っては彼女に会いに来ていたというのです。さらにりおんの繭から、彼女の魂が封じられているという遺灰と土で拵えた人形が出てきたりして、麒麟丸のちょっと洒落にならない毒親ムーブに三人もドン引きの三人です。
 父の身勝手にはずっと我慢がならなかった――ともっともだけれども身も蓋もないことを語るりおんは、さらに重要なことを告げます。強敵を求めて世界中を巡った(その末に犬の大将にボロ負けしたわけですが)麒麟丸は、まだ行ったことのない時空の彼方へ行くことを望み、そのために阿久留という精霊を殺生丸に捕まえさせ、時の風車を動かそうとしているというではありませんか。しかしそうすればこの現世は消失する――それが麒麟丸がもたらすという、この世を末法末世に変え、全てを打ち消そうとしているということだと、りおんは語ったのであります。

 と、そこで所縁の断ち切りの力で、りおんと麒麟丸を結ぶ悪縁の糸を目にすることとなったせつな。りおんの願いでせつながその糸を断ったことでりおんは解放され、ようやく成仏――と思いきや、彼女は自分を封じていた人形から自分の仮初めの体を作り出し、自分も三人に行くと宣言。ついさっき、あの世に送ってほしいと言っていたような気もしますが、もちろん三人にそれを拒むつもりはありません。
 が――りおんが麒麟丸の呪縛を断ち切り、結界がなくなったことで、麒麟丸がりおんをこの山に封じておくために施した最後の仕掛けである妖霊獣が出現。四本首の骨の龍というべき怪物のとんでもないパワーに手を焼く三人ですが、そこでりおんが吸妖魂の根から作られた横笛「星斬りの笛」を渡し、吹くように促します。

 その言葉を信じて笛を吹けば、そこから現れたのは新たな武器――斬星剣であります。それこそはかつて天津甕星が天から下した二振りの剣の一つ(ん? 吸妖魂の根との関係は――根は柄になっているということかしら)、妖力を無尽蔵に吸い込み、吐き出せるというその力はすさまじく、あっさりと妖霊獣を粉砕するのでした。
 そして山から下りてきた四人の前に現れたのは、何と殺生丸(と邪見)。彼はせつなに覚悟を問うと、自らせつなの夢の胡蝶を斬り、りんの呪いの進行と引き換えに、せつなに夢を返すのでした。

 何はともあれ、色々とすっきりした四人の前に次に現れたのは理玖――実は三人が産霊山の中に入っている間、山に寄ってくる雑魚妖怪を始末していたという縁の下の力持ちぶりの彼も、さすがにりおんとの再会(しかも何故か肉体まで持っている)にはびっくり。しかも、彼が見聞きしたものは麒麟丸に繋がっていると知ったとわには麒麟丸への宣戦布告の挑戦状代わりに使われ、なかなか不憫であります。
 が、彼は彼で思うところがあるのか、りおんは一旦預かりますと、彼女をお姫様抱っこして爽やかに退場するのでした。


 というわけで、前2回に続き謎の解明回だった今回ですが、それ以上に強烈に印象に残ってしまったのは、これまでの堂々とした強敵ぶりがガラガラと音を立てて崩れるような麒麟丸のキモチワルイ毒親ぶり。殺生丸の放置っぷりとはある意味対極ですが、やはり600年間の束縛はどうかと思います(しかし、前回は元気に父と犬の大将との対決を見ていた彼女の身に一体何があったのか……)。
 夜叉姫三人が親からの宿命を背負いながらも、それなりに自分自身の意思で生きてきたのに対し、りおんは自分の意思を奪われていたわけで、その意味でも対照的というべきでしょうか。

 そしてすっかり忘れかけていましたが、麒麟丸が末法末世をもたらすというその真実は、思った以上にマズげなもの。まだ何か裏がありそうな気がしますが、確か最初にそれを言い出したのは時代樹の精霊であったことを思えば、それなりに信憑性はあるというべきでしょうか。あるいはそれが前回ラストに描かれた微妙な歴史改変なのか――まだまだ全ての謎が解けるには間がありそうです。


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