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2021.10.15

『MARS RED』 第12話「道化の王」

 数を増すヴァンパイアに対抗できる唯一の戦力である金剛鉄兵の指揮官として増長するルーファス。次はアメリカに向かおうとするルーファスだが、その前にデフロットが現れ、一転恐怖に震えるのだった。そしてタケウチたちが東京を脱出しようとする中、秀太郎はただ一人、前田を迎え撃つ……

 帝都に雪が降る中も活動を続けるヴァンパイアの群れと対峙する陸軍。しかし軍でもヴァンパイアの前には及ばず、ただこれを制する力を持つのは金剛鉄兵のみであります(しかし、ヴァンパイアとはいえ自国民に普通に銃を向ける軍隊……)。東京の中心部以上の意味を持つ丸の内防衛まで任され、隊長であるルーファスは得意絶頂。月島の地下に幽閉した中島元中将の前に現れ、老害呼ばわりして自決用の拳銃を置いていくくらいの調子に乗りっぷりであります。
 そして各地のヴァンパイアを始末したルーファスは、仕上げとばかりに千本鳥居の天満屋を襲撃。火炎放射器で豪快に焼き尽くすのですが――その手引きをしたのは、前回意味ありげな行動を取っていた彩芽であります。どうやら最初からルーファスの下にいたらしく、綺麗な衣装で彼に付き従っていますが、そのルーファスは、成り上がった後はさっさと日本を捨て、今度は新大陸で一旗揚げようと船の手配までしていたのでした。

 が、ルーファスの行動など、天満屋や零機関残党にとっては完全に予想の範囲内。千本鳥居は囮だったのさ! と言わんばかりに既に避難民は浅草に移動済み。スワによれば彩芽がスパイであることは完全にバレていたようですので、その辺りも織り込んでの作戦だったのは間違いありません。今回冒頭から、東京の地図上で、ヴァンパイアや金剛鉄兵が行動する地点にみかんが置かれる場面が描かれていたのですが――これは実は天満屋に避難してきた子供のヴァンパイアたちの行動。ちょっとわかりにくかったのですが、おそらくヴァンパイアとしては最低ランクに近い彼らならではの感覚で、ヴァンパイアを察知した地点をチェックしていたのでしょう。
 何はともあれ、いよいよ東京を離れて地方に避難しようというタケウチたちですが、スワはこれまで彩芽を泳がせておいた責任を取ると、ここで別れを告げることになります。さして名残惜しげな顔もせず、サバサバと見送るタケウチですが、これはこれで彼ららしい別れ方というべきでしょうか。

 そして前回ラスト、どうなることかと思いきや無事に助かっていた葵は、天満屋での手伝いに充実感を感じている様子。やはり助かっていた秀太郎と、ようやく幼馴染らしい――しかし内容は血を飲む飲まないだったり、吸血鬼らしいところを見せてほしいだったりなのですが――会話を見せます。しかしそんな微笑ましい会話もつかの間、彼女の前からフッと消える秀太郎。若旦那から、秀太郎たちが去ってしまうことを聞いた葵は、必死に秀太郎を追いかけることに……

 そしておそらくは米国大使主催のパーティーに参加して、そこでも調子に乗っていたルーファスですが、その会場でサロメを演じる影が。演じる声は岬のものながら、その姿は――デフロット。前回完全に殺したと思い込んでいたルーファスは、ビビりまくった挙げ句、相手の影に怯えてほとんど浮浪者のような状態で町中を転がりまくるはめに……
 もはやあまりの醜態に笑うしかないのですが、東京駅前に逃げてきた彼の前に現れたのは秀太郎。「やっと見つけましたよ」の言葉に、ついに年貢の納め時かと思いきや、続く秀太郎の言葉は「そこの民間人の方、逃げてください」――そう、秀太郎が戦おうとしていたのはルーファスなどではなく、そこに現れた前田だったのであります。

 もはや誰にも相手にされずプライドもズタボロなルーファスは、何とかアメリカに向かう船に乗り込みますが、そこで彼を応対した客室係はデフロットの変身。かくて彼が案内されたのは客室ではなく船の乗船口――そのまま海に転落したルーファスは、そのまま浮かび上がってくることはなかったのでした。
 一方、船室の彩芽の前に現れたのはスワ。投げやりに殺せという言葉を放ちつつも、自らの手を日光に当ててみせるスワに驚いて止める彩芽ですが――スワはそんな彼女にまだ生きたいという気持ちがあることを指摘するのでした。ルーファスに作られた自分には汚れた血が流れているという彩芽に対して、スワは自分も同様だが、オレたちは血で生きてるんじゃねえ、心で生きてるんだと殺し文句。彩芽が一人で生きられないのであれば自分がついていてやると語るのでした。


 ラスト前ということで、作画も演出もかなり向上していた今回。ルーファスのあまりの調子に乗りっぷりから転落は容易に予想できたものの、まさかデフロットをあれで葬った気になっていたとは――天満屋放火の時ともども、確認しようという気が待ったくないのに驚かされます。ある意味、中島とは似たもの同士だったというべきでしょうか。
 そしてスワまさかの女の子と旅立ちエンドにも仰天でありました。


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