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2021.10.30

手代木史織&手代木正太郎『不死斬り夢一』前編 姉弟タッグ、時代伝奇に挑む!

 『聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話』の手代木史織と、『鋼鉄城アイアン・キャッスル』の手代木正太郎が姉弟であるのはよく知られた話ですが、その二人が初めてタッグを組んで挑んだ伝奇時代劇の前編であります。舞台は明治初頭、人の良さげな西洋絵師に隠された真の顔とは……

 時は明治5年、まだ西洋画が珍しい中で、ワーグマンに弟子入りして写実画を描く絵師・玉橋夢一。一見お人好しで世間知らずで西洋文化好きの青瓢箪――弟子の少女・琴音にそのように評されてしまう若者(?)であります。

 そんな二人の前に現れ、彼らの知人を襲った男――牙を生やし、人の血を啜る怪人を、夢一は不死者もしくは吸血鬼と呼び、不思議な術でもって一撃で焼き尽くすのでした。
 そう、夢一こそはかつて洋術同心・不死斬り玉橋と呼ばれた男――柳生剣術と西洋退魔術を習得した妖剣士だったのであります!

 一方、その不死者を生み出した者たち――新政府に不満を持ち、攘夷を行わんとする志士たちは、斬首された河上彦斎を西洋黒魔術で復活させ、不死斬り玉橋にぶつけようとするのですが……


 というわけで「週刊少年チャンピオン」第48号に前編が掲載された本作は、いきなり飛び出してくる伝奇度の高すぎるワードと展開に驚かされる物語であります。

 しかし考えてみれば、神話の時代から続くギリシャ神話の神々の戦いを描いた『聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話』は――その他の世界の神話の戦士たちとの戦いを描いたその外伝は特に――まごうことなき伝奇もの。
 そして手代木正太郎の作品も『王子降臨』『柳生浪句剣』といった直球ど真ん中だけでなく、一種のファンタジーものであっても伝奇もの(というより山風や荒山徹)的な空気を漂わせています。

 その二人が組めば、むしろ伝奇成分濃厚なものにならないはずがない――というよりまだまだおとなしい印象すらある――わけで、手代木正太郎のインパクト抜群のアイデアが、手代木史織の流麗な画で描かれることによって、本作は独自の伝奇世界を生み出しているといえます。

 ちなみにワーグマンの弟子の西洋画家、そしてその名前から、玉橋夢一のモデルは、おそらく実在の西洋画家・高橋由一でしょう。
 ちなみにこの高橋由一、実家が代々柳生新陰流の免許皆伝、佐野藩の剣術指南役だったとのことで(ただし由一本人は剣はからっきしの模様)、題材選びの巧みさにも感心させられます。


 さて、死から甦った河上彦斎(ちなみに彦斎が斬首されたのは、本作の前年の12月)の、ある意味非常に真っ当なリアクションによって、たちまちその場に現出することになった地獄絵図。
 この人外の凶剣士に対して、剣と魔を極めた妖剣士が如何に挑むのか――死闘の本番が描かれるであろう次号掲載の後編が、今から楽しみでなりません。


『不死斬り夢一』前編(手代木史織&手代木正太郎 「週刊少年チャンピオン」2021年48号掲載) Amazon

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