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2021.10.18

「コミック乱ツインズ」2021年11月号(その一)

 いよいよ今年もあと数ヶ月。「コミック乱ツインズ」2021年11月号は表紙が『侠客』、巻頭カラーが『鬼役』、特別読切で『戦国夢屋』が掲載されています。今回も印象に残った作品を一つずつ紹介いたします。

『勘定吟味役異聞』(かどたひろし&上田秀人)
 前回、将軍後継争いのもう一人の候補として、綱吉の遺児・柳沢吉里の名を吉宗から聞かされた聡四郎。今回は主人公サイドは一回お休みして、この柳沢と紀伊国屋サイドが描かれることになります。

 病床にありながらもなお気迫は衰えず、禁を破って聡四郎と私闘を繰り広げた永渕を叱責する柳沢吉保。永渕を退けた吉保が紀伊国屋に命じたのは、南蛮渡りの新式鉄砲――火縄式ではなく火打ち石式、すなわち標的に察知されにくいその鉄砲を使って狙う相手は……
 と、そんな「父」の狂った野望を探っていたのは吉里。実の父からつけられた甲州忍・一衛――面頬をつけて妙にキャラ立ちした彼の探ってきた計画に対し、吉里は紀伊国屋たちの排除を命じるのでした。
 一方、そんなこととは知らずに、木場で妙にゴツい配下・甚助と待ち合わせ、鉄砲名人の手配を命じる紀伊国屋。この甚助、そう言われるなり「的は止まっておりやすか それとも動いておりやしょうか」と訊ねる辺り、あからさまにカタギではありません。しかしそんな二人の会話を気付かれずに立ち聞きしている一衛も只者ではありませんが……

 というわけで、いよいよ最後の、そして愚かな手段に走ろうとする吉保の野望と、思わぬところから登場した新たな勢力が描かれる今回。しかしそれ以上に印象的なのは、紀伊国屋の姿でしょう。吉保の命に応じて陰謀を繰り広げる一方で、長年連れ添った妻と食卓を囲み、老後の暮らしを語る。店の者に店の運営を指示する――ある意味日常の姿なのですが、こういうところに(その後の甚助との会話を含めて)これまで彼の人生というものが窺われて、なかなかに味わいがあるのです。


『ビジャの女王』(森秀樹)
 蒙古軍驚異の面白装備と人海戦術で、ついに城壁を乗り越えられてしまったビジャ。一度乗り越えられてしまえば次々と犠牲が出るわけですが、これはきっとインド墨家の新たな策があるに違いない! と思いきや、ブブ(とバッタ)がその巨躯を活かして普通に敵をぶちのめすのにはちょっと驚きました。

 結局戦いは水入りというか砂入りによって蒙古軍が撤退、ビジャは辛くも救われたのですが――むしろここからがブブの真骨頂が感じられることになります。
 蒙古軍の猛攻に意気消沈する人々を集めて、インド墨家のライブラリにある、過去のある戦のことを語るブブ。それはローマ軍に攻められたユダヤ人が山上の城に立て籠もったマサダの戦い――物量に物を言わせたローマ軍に対して、思わぬ形で対抗した人々の在り方を語ることで、ブブはビジャの人々に人としての誇りを持ち続けることの大切さを教えたのであります。(いささか不吉すぎる例ではありますが……)

 さらにオッド姫に人心鼓舞のため、自分の巨体を活かしてみせるブブ。彼の下でまだまだ戦い抜けそうなビジャですが、その陰では思わぬ陰謀が――というところで続きます。


『戦国夢屋』(三代目仙之助)
 タイトルどおり舞台は戦国時代、運に見放されてうだつの上がらぬ日々を送る鉄砲足軽の青年・宗十郎が、ある日出会ったのは「夢屋」を名乗る奇妙な商人とその従者(?)。彼らから、狙えば必ず命中するという鉄砲・命中筒を出世払いで買う宗十郎ですが、問題はその弾がわずか三発しかないことであります。
 最初の一発で重臣に目をかけられ、二発目でその評判を確実なものとした宗十郎。彼は次の戦で鉄砲名人と称される敵軍の遣い手と対決することを命じられるのですが、しかし残る弾は一発のみで……

 と、奇妙な商人ものというべき本作。鉄砲名人との対決を前にした宗十郎の行動とその結末はある意味定番ではあるのですが、最後の弾の行方は、これは漫画ならではのビジュアルで印象に残りました。


 次回に続きます。
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