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2021.11.28

『半妖の夜叉姫』 第33話「魔夜中の訪問者」

 鬼神・魔夜中が操る炎牛から五穀村を守るため奮闘する退治屋たち。しかし退治屋の一人・五郎の裏切りにより結界が破れ、魔夜中は村の中に入り込む。神宝「五穀の恵み」を求める魔夜中は、かつて自分が土地神・真昼間だった時の出来事をせつなに語る。それを聞いた所縁の断ち切りが反応し……

 前回のラスト、満月狸に景気よく紅の爆流破を放ったものの、狸穴将監の天地返しの術で返され、夜空に場外ホームランを食らったもろは。そのまま眠りについてしまったもろはは今回このままお休み――竹千代が毒づくのも、もっともとしか言いようがありません。そしてとわと理玖(あとりおん)も、二人でなんかいいムード(?)になっただけで特に進展はなし。完全にせつな主役回であります。

 というわけで、北の退治屋の依頼で助っ人に向かい、そこで神宝「五穀の恵み」に守られて繁栄する五穀村を襲う炎牛たちから村を守ることになった退治屋組。しかし炎牛を操っているのは土地神であった魔夜中なる鬼神、そして魔夜中はかつて自分のものであった「五穀の恵み」を差し出せと言っているのですから、これはどう考えても裏が大アリであります。

 それはそれとして、仕事は果たさねば――というわけで、竹で作った壁で無数の炎牛たちを誘導し、貯めておいた雪を人工雪崩的に落として炎牛たちを埋めてしまうという(冷静に考えると無茶苦茶大仕掛けな)罠で炎牛を一網打尽にせんとする退治屋たち。その策はうまくいったかに見えたのですが、前回せつなが倒し、北の退治屋の一人・五郎が村の中に墓を作って弔っていた炎牛が復活――中から暴れまわったことで村を守っていた結界が破れ、魔夜中が村の中に入り込むことになります。そしてせつなも、五郎の不意打ちで意識を失うことに……

 そしてせつなが意識を取り戻した時、そこは五穀の恵みが安置された村の広場――その力で村長をはじめとする人々を泥(?)で固めて封じてしまった魔夜中は、せつなに対して自分の過去を――かつては村の土地神であった真昼間が、鬼神・魔夜中に変じた理由を語ることになります。

 かつては真昼間と五穀の恵みに守られ、幸せに暮らしていた五穀村。しかしそこに外からやって来た役人が村長に収まると、自分の娘のお華を使って真昼間を騙し、まんまと五穀の恵みを奪ってしまったのでした。人の姿を借りてお華の前に現れ、五穀の恵みを取り返すように命じた真昼間ですが、なかなかうまくいかず、そうしている間に二人は恋仲となったのであります。
 そして村を捨てようというお華の言葉を信じたものの、約束の日にお華は現れず、傷心のままこの地を去った真昼間。そして諸国をさすらった末に五穀村に帰ってきた真昼間は、村が神宝の力で空前の繁栄を遂げたことを知ると怒りと虚しさのあまりに、鬼神・魔夜中へと変貌したのであります。そして今、自分とお華の間の子である五郎を使ってついに五穀の恵みを眼前にした魔夜中ですが、その心中は虚しいばかり……

 と、魔夜中の過去を聞き終えた時、所縁の断ち切りが何かに反応したことを察知したせつな。それは魔夜中と五穀の恵みの――いや何かの間を結ぶ縁でありました。そして己の精神を研ぎ澄ましたせつなが見たものは、真昼間とお華の間の愛の姿――そしてその末に魔夜中を縛る縁をせつなが断ち切った時、五穀の恵みの社から現れたのは、お華の姿だったのです。
 五郎を産んで数年後に亡くなったお華。五穀の恵みは、その彼女を依代としていたのであります。時を経てようやく巡り合った魔夜中――いや真昼間とお華は天に召され、五穀の恵みは光となって消え去るのでした。


 冒頭に述べたとおり、せつなが主役となった今回。物語的には脇筋といえるかもしれませんが、今回、ついに彼女が所縁の断ち切りの力を自覚的に用いたのは大きな意味があります。

 そしてそうしたイベント的な要素以上に、炎牛を罠に誘き寄せる際のせつなのアクションや、所縁の断ち切りとともに真昼間とお華の過去をせつなが垣間見る際の美しくも物悲しい演出など、映像的にも見るべきものが多くあった今回。ちょっと説明不足の部分もありましたが、なかなか印象に残るエピソードであったかと思います。


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