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2021.12.01

椎橋寛『岩元先輩ノ推薦』第2巻 始まる戦い、その相手は……

 一種のゴーストハンターもの+能力バトル+学園もの+軍の特殊部隊ものという非常に贅沢な取り合わせの異色作の第2巻であります。陸軍のエリート養成機関・栖鳳中学校に各地から能力者を「推薦」する岩元先輩と自後輩たち。彼らの冒険は、新たなステージに突入することに……

 栖鳳中学校で、3年生にして書記長を務める少年・岩元胡堂――学園長から寵愛を受ける彼の主たる任務は、日本各地で起きる超常現象の調査、そしてその現象の原因たる能力者の「推薦」。
 実は栖鳳中学校で岩元が率いる分隊「隔離施設」こそは、彼が推薦してきた能力者の集う場であり、世間に居る場のない能力者を保護することが彼の目的なのであります。

 そしてこの巻の冒頭で岩元が調査に赴くのは浅草六区――一見、軍務にも超常現象にも無関係に思える地での彼の調査対象は、そこで「宝石ノ女優」と呼ばれる天空橋須磨子。
 狂的ファンに顔を深く切り裂かれながらも、わずか二日後には傷一つない顔で舞台に立っていた彼女が、何らかの能力者と考えた岩元と後輩の原町と天羽は、彼女のもとに向かいます。

 しかし舞台の終わった後の彼女と会おうとしても、劇場から出た形跡は全く無いにもかかわらず彼女はいない。そして朝から晩まで楽屋に張り込んだ岩元たちの前に意外な人物が現れ……

 と、学校の設定的に能力者は男のみと勝手に思い込んでいた――というのはさておき、須磨子の顔の謎と、劇場からの消失の謎の絡み方がなかなか面白いこのエピソード。
 いささか不気味な真相が明かされる際のインパクトがなかなか強烈なのですが、その真相を受けての岩元の判断も面白く、能力者を絡めた怪奇ものという、本作らしさを感じさせる一編でした。


 そして冒頭のエピソードを除いた残り八割あまりで描かれるのは、一大能力バトル編であります。

 料亭・竜宮城にて、八十人以上もの死傷者が出たという、能力者によると思われる事件が発生。緊急指令により現場に急行した岩元と原町・天羽が見たものは、訓練された軍人たちまでもが折り重なって斃れた凄惨な状況と、体中から薔薇の花を咲かせた奇妙な犠牲者たちでした。
 と、そこで三人に襲いかかってきたのは、その薔薇の花を咲かせた犠牲者たち。中には明らかに死んでいるにもかかわらず動き、襲いかかる者たちの背後には、ある能力者の存在があったのです。しかし、その能力者も実は前座。その背後に潜む真の敵の正体は、そしてその目的と能力は……

 というわけで、いつかはこの展開になるだろうと思われた(能力)バトル編に突入したこの竜宮城編。
 もちろんこれまでも能力者の能力の前に岩元が危機に陥り、相手の能力に対して岩元が自らの能力で対抗する場面はありましたが――バトルが主体、それもそもそも岩元たちと戦うことを目的としている相手というのは、これが初めてでしょう。

 もちろんここで登場する敵の能力は(少なくとも一人目は)、怪奇色が強い、いかにも本作らしいもの。そしてその能力を用いる敵とのバトルもまた本作らしいものであることは間違いありません。
 ただ本作のこれまでのパターンである、超常現象の種明かしがそのまま能力者との対峙に繋がっていくという展開が魅力的であっただけに、いささか勿体なく感じたのは事実であります。

 また、能力バトルという言葉のイメージに比べると、結構力押しに近い直球勝負が多いバトル内容も、個人的にはちょっと苦手な展開ではありました。
(直球といえば、真の敵の名もちょっとさすがに……)


 とはいえ、先に述べたように、能力バトル自体主体の展開は、いつかは必ず突入するだろうと思われたものではあります。

 そしてこの新たな「敵」(この巻のラストで明かされたその正体には、なるほど学園で一種の能力者だ、と大受けしました)と、これまで作中に登場した、あるいは登場するであろう岩元の仲間たちとのトーナメントバトルが展開するのだとしたら――それはそれで、もちろん大歓迎であります。

 X-MENかと思いきや、まさか○○○・○○○○だったとは――と、驚きつつ、この先の展開に期待が膨らむのです。


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